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38.もう一つの疑問
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「皆さん、少しいいですか?」
「あら? メルティナ? どうかしたの?」
「授業中の様子から犯人を見つけ出すのは、難しいことだと思います。もちろん、考える必要はありますが、その前にもう一つ問題を提示しておきたいのです」
考えても結論が出ない中、メルティナがそう言ってきた。何か、事件に関する疑問を、私達に知らせておきたいようである。
「もう一つの問題? それは、何かしら?」
「アルフィア様やドルキンス様が事情聴取を受けている間、少し聞いてみたのですが、どうやらレフェイラ様は合計三回魔法を使ったそうです。一つは、皆さんを閉じ込めた迷宮魔法、状況から考えて、もう一つは魂奪取魔法でしょう。それなら、もう一つはなんなのでしょうか?」
「確かに、それは気になる所ね……」
メルティナの言う通り、魔法が三回使われたというのは、気になることだ。その魔法の内容がなんなのか、是非とも知りたい所である。
「どうやら、その魔法は魂奪取魔法の直前に使われたようです。当然、魂が抜けた後は、魔法を使うことはできないはずですから、魂奪取魔法が最後、時間的に迷宮魔法が最初、だからその間に魔法が使われたと考えられるそうです」
「なるほど……」
「そのため、先生方は逃げるための魔法、もしくは魂奪取魔法を躊躇った結果の魔力、そのどちらかだと考えたそうです。ただ、どちらにしても、それ程重要なことではないという結論を出したようですが……」
「まあ、それも仕方ないことかもしれないわね。別に、その魔法が重要なものであるなんて、普通は思わないだろうし……」
「ええ、でも、もしかしたら、それはとても重要なことかもしれません」
レフェイラが使った三つの魔法。その中の明確になっていない一つの魔法。それは、一体なんなのだろうか。
教師の推測通りという可能性も充分ある。そうだとしたら、それはそこまで気にする必要がないことだろう。
だが、メルティナの言っている通り、それはとても重要なことかもしれない。彼女の協力者、もしくは操っていた者を知る手がかりになるかもしれないのだ。
「気になることは、色々とあるわね……」
「ええ、そうですね……」
「……これを私達だけに留めておく訳にはいかないわね。先生達に言った方がいいかしら? でも、信じてもらえるかは、少し怪しい所だけど……」
気になることはたくさんあった。それを私達だけで全て調べることは、中々に難しい。
そもそも、この事件の真実が別にあるのだとしたら、それは私達だけに留めておくべきことではないだろう。そのため、教員達に知らせる方がいいはずだ。
しかし、教員達が私達の話を真剣に受け止めてくれるかは、少し怪しい所である。
事情聴取の際に思ったが、この魔法学園の教員達はそういったことへの意識が、少し低い気がする。なんとなく、ことを大きくしたくないといような雰囲気があるような気がするのだ。
「まあ、偏見を持ってはいけないわね。私の印象でしかないし、話してみたらわかってくれるかもしれないし……」
「アルフィア嬢、もし心配があるなら、兄上を頼るといい」
「え?」
「兄上なら、教員達からの信頼も厚いし、上手く話を伝えてくれる。きっと、教員達も聞く耳を持ってくれるだろう。まあ、兄上を納得させる必要はあるが、それは今の話をすれば、多分問題ないだろう」
そこで、ドルキンスがそのようなことを言ってきた。
ディゾール様を頼る。それは、とてもいい案だと思えた。
ドルキンスの言う通り、彼の方が教員達からの信頼は厚いはずだ。少なくとも、私達が言うよりも確実に効果はあるだろう。
「わかったわ。それなら、ディゾール様に掛け合ってみる」
「ああ、そうしてくれ」
私の言葉に、ドルキンスはゆっくりと頷いた。それは、とても明快な様子だった。
だが、私は一つのことを悟る。彼は、ディゾール様と話し合う気はないのだと。
しかし、彼にも色々とあるのだろう。そこは、私達が介入するべきではない領域である。
「あら? メルティナ? どうかしたの?」
「授業中の様子から犯人を見つけ出すのは、難しいことだと思います。もちろん、考える必要はありますが、その前にもう一つ問題を提示しておきたいのです」
考えても結論が出ない中、メルティナがそう言ってきた。何か、事件に関する疑問を、私達に知らせておきたいようである。
「もう一つの問題? それは、何かしら?」
「アルフィア様やドルキンス様が事情聴取を受けている間、少し聞いてみたのですが、どうやらレフェイラ様は合計三回魔法を使ったそうです。一つは、皆さんを閉じ込めた迷宮魔法、状況から考えて、もう一つは魂奪取魔法でしょう。それなら、もう一つはなんなのでしょうか?」
「確かに、それは気になる所ね……」
メルティナの言う通り、魔法が三回使われたというのは、気になることだ。その魔法の内容がなんなのか、是非とも知りたい所である。
「どうやら、その魔法は魂奪取魔法の直前に使われたようです。当然、魂が抜けた後は、魔法を使うことはできないはずですから、魂奪取魔法が最後、時間的に迷宮魔法が最初、だからその間に魔法が使われたと考えられるそうです」
「なるほど……」
「そのため、先生方は逃げるための魔法、もしくは魂奪取魔法を躊躇った結果の魔力、そのどちらかだと考えたそうです。ただ、どちらにしても、それ程重要なことではないという結論を出したようですが……」
「まあ、それも仕方ないことかもしれないわね。別に、その魔法が重要なものであるなんて、普通は思わないだろうし……」
「ええ、でも、もしかしたら、それはとても重要なことかもしれません」
レフェイラが使った三つの魔法。その中の明確になっていない一つの魔法。それは、一体なんなのだろうか。
教師の推測通りという可能性も充分ある。そうだとしたら、それはそこまで気にする必要がないことだろう。
だが、メルティナの言っている通り、それはとても重要なことかもしれない。彼女の協力者、もしくは操っていた者を知る手がかりになるかもしれないのだ。
「気になることは、色々とあるわね……」
「ええ、そうですね……」
「……これを私達だけに留めておく訳にはいかないわね。先生達に言った方がいいかしら? でも、信じてもらえるかは、少し怪しい所だけど……」
気になることはたくさんあった。それを私達だけで全て調べることは、中々に難しい。
そもそも、この事件の真実が別にあるのだとしたら、それは私達だけに留めておくべきことではないだろう。そのため、教員達に知らせる方がいいはずだ。
しかし、教員達が私達の話を真剣に受け止めてくれるかは、少し怪しい所である。
事情聴取の際に思ったが、この魔法学園の教員達はそういったことへの意識が、少し低い気がする。なんとなく、ことを大きくしたくないといような雰囲気があるような気がするのだ。
「まあ、偏見を持ってはいけないわね。私の印象でしかないし、話してみたらわかってくれるかもしれないし……」
「アルフィア嬢、もし心配があるなら、兄上を頼るといい」
「え?」
「兄上なら、教員達からの信頼も厚いし、上手く話を伝えてくれる。きっと、教員達も聞く耳を持ってくれるだろう。まあ、兄上を納得させる必要はあるが、それは今の話をすれば、多分問題ないだろう」
そこで、ドルキンスがそのようなことを言ってきた。
ディゾール様を頼る。それは、とてもいい案だと思えた。
ドルキンスの言う通り、彼の方が教員達からの信頼は厚いはずだ。少なくとも、私達が言うよりも確実に効果はあるだろう。
「わかったわ。それなら、ディゾール様に掛け合ってみる」
「ああ、そうしてくれ」
私の言葉に、ドルキンスはゆっくりと頷いた。それは、とても明快な様子だった。
だが、私は一つのことを悟る。彼は、ディゾール様と話し合う気はないのだと。
しかし、彼にも色々とあるのだろう。そこは、私達が介入するべきではない領域である。
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