派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

木山楽斗

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45.魂の行方

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「この話で重要なのは、幼いアルフィアの状態です。彼女は、レフェイラと同じように虚ろな目をしていた。恐らく、魂が抜けていたのです」
「魂が抜けている? それはつまり、誰かが魂奪取魔法を使ったということですか?」
「ええ、そういうことになるわ。ただ、私は屋敷で私がそういう状況になったという話を聞いたことはない。だから、そこは少しおかしいのよね」
「それは……そうですね」

 アルフィアは、恐らく魂が抜けていた。それは、とても重要なことだ。
 リオーブの姉リリシア、レフェイラとアルフィア、私達の周りで、実に三人もの人物の魂が抜けている。
 それは、流石に偶然ではないだろう。ここには、何か繋がりがあるはずだ。

「……アルフィア様の魂が抜けたのだとしたら、それは時が巻き戻る前なのではないでしょうか?」
「え?」

 そこで、メルティナがそのようなことを言ってきた。どうやら、彼女は何かを導き出したようだ。

「何か、根拠があるの?」
「非常に単純な話ではあるのですが……時が巻き戻る前のアルフィア様は、レフェイラ様と同じような人間でした。それなら、彼女も同じ末路を辿ったのではないかと、そう思ったのです」
「ああ、確かに、それはそうかもしれないわね」

 メルティナの推測は、本人が言っている通り単純なものだった。だが、それには確かな説得力がある。
 なぜなら、事実としてレフェイラはアルフィアと同じような立場にあったからだ。メルティナを虐める令嬢達の中心。それは、私やメルティナが知っているアルフィアと同じ立場である。
 それなら、逆にアルフィアがレフェイラと同じような末路を辿っていてもおかしくはないだろう。

「待て。それなら、どうしてアルフィアの魂は戻らなかったんだ? 時が巻き戻ったなら、それも元に戻るんじゃないのか?」
「はい。それを確かめるためにも、リオーブ様に一つ質問をしたいのです。リリシア様の魂が抜けた時の詳しい状況をご存知ですか?」
「えっと……それは、確か、急なことだったはずだ。人から聞いたことだから、詳しいことはわからないが、突如使用人達の前で倒れたらしい」
「なるほど……それなら、やはりアルフィア様やリリシア様は、時が巻き戻る前に魂を抜かれたと考えるべきですね」

 リオーブの言葉に、メルティナは何かに納得するようかのように頷いた。よくわからないが、彼女の中で、何かが腑に落ちたようである。

「私は、ずっと疑問に思っていました。一体、時はどこまで巻き戻ったのか」
「え? それは……確かに、よくわからないわね」
「恐らく、時が巻き戻ったのは先程リオーブ様が言った時点だと思います。その状況で、魂奪取魔法を誰かが使うことは難しいでしょう。時が巻き戻る前に魂を奪われて、そのままの状態で巻き戻ったと考えるべきではないでしょうか?」
「……状況を考えるとそうなるか」

 メルティナの予想に、私とリオーブは納得した。確かに、色々な状況を考慮するとそう考えられそうだ。
 だが、そうすると新たな疑問が湧いて来る。時が巻き戻った時、魂は戻らないものなのだろうか。

「魂は、巻き戻らないのかしら?」
「魂を扱う魔法と時を扱う魔法、その二つが同時に行使されるという状況は、そもそも珍しい……どころか、今までなかったことでしょう。ですから、それはわかりません。ただ、色々な話を総合すると、そうだということになるのではないでしょうか?」
「だとしたら、姉貴は誰に……いや、まさか……」

 そこで、リオーブが表情を変えた。彼は、とても険しい顔をしている。
 言葉からして、彼は犯人のことを考えていた。つまり、その表情は犯人が誰であるかを理解したということだろうか。
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