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47.足りない魔力
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昼休み、私とメルティナはキャロムとともに屋上まで来ていた。私達が出した結論を、彼に相談してみようと思ったからだ。
ファルーシャが犯人。その結論には、色々と疑問点がある。それを相談する相手として最適だったのが、キャロムだったのだ。
「ファルーシャさんが犯人か……確かに、状況的にはあり得ない話ではないだろうね。特に、レフェイラの魂が抜けた時に近くにいたというのは、気になる所だ」
キャロムには、私達の事情は伏せてある。授業で四人組だったこと、レフェイラの魂が抜けた時に近くにいたこと。それらを根拠に彼女のことを伝えたのだ。
「でも、疑問は色々とあるの……彼女が犯人であろうとなかろうと、どうやってレフェイラを操ったのか、それがわからないの」
「精神操作魔法、魔力増強魔法、それらを使えば、人を操ることも可能だ。ただ、問題は今回の事件を起こすためには、かなりの魔力が必要だということだね」
「ファルーシャ様の魔力なんだけど、リオーブ様曰く、八十八だったそうよ。その魔力で、それだけの魔法が扱えるのかしら?」
「無理だね」
私の質問に、キャロムは即答してきた。どうやら、彼女が授業で見せた魔力の数値では、今回の事件は実行できないようだ。
しかし、それで彼女が黒幕であるということを否定できる訳ではない。なぜなら、それは偽りの数値かもしれないからだ。
「あの測定器の数値を操作することはできるのかしら?」
「できるだろうね……ただ、それはあの授業での話だ。魔力というものは、鍛えられる。だけど、高い魔力を持つ人は、大抵生まれつきそうだ。それなのに、彼女からそういう噂が出てこないのはおかしなことだと僕は思う」
「それも、そうね。キャロムがあそこまでしなければならない迷宮を作り上げられる程、レフェイラの魔力を強化できたということは……」
「僕と同等……いや、僕以上でなければならないだろう。まず間違いなく、天才ともてはやされたはずだ」
今回の事件は、膨大な魔力を持つ者が黒幕であるはずだった。しかし、ファルーシャの魔力は一般的なものだ。この事件を引き起こせるとは思えないのである。
それは、例えファルーシャが犯人でなかったとしても、いえることだ。まずその魔力の謎を解き明かさなければ、この事件の黒幕をはっきりと示すことはできないのである。
「……魔力の測定?」
「メルティナ? どうかしたの?」
「アルフィア様、あなたの魔力はいくつでしたか?」
「え? 確か、八十くらいだったと思うけど……」
「八十……?」
そこで、メルティナが突然悩みだした。一体、急にどうしたのだろうか。
私の魔力は、八十くらいだった。それは、奇しくもファルーシャと同じくらいである。もしかして、そこに何か引っかかりでも覚えたのだろうか。
ファルーシャが犯人。その結論には、色々と疑問点がある。それを相談する相手として最適だったのが、キャロムだったのだ。
「ファルーシャさんが犯人か……確かに、状況的にはあり得ない話ではないだろうね。特に、レフェイラの魂が抜けた時に近くにいたというのは、気になる所だ」
キャロムには、私達の事情は伏せてある。授業で四人組だったこと、レフェイラの魂が抜けた時に近くにいたこと。それらを根拠に彼女のことを伝えたのだ。
「でも、疑問は色々とあるの……彼女が犯人であろうとなかろうと、どうやってレフェイラを操ったのか、それがわからないの」
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しかし、それで彼女が黒幕であるということを否定できる訳ではない。なぜなら、それは偽りの数値かもしれないからだ。
「あの測定器の数値を操作することはできるのかしら?」
「できるだろうね……ただ、それはあの授業での話だ。魔力というものは、鍛えられる。だけど、高い魔力を持つ人は、大抵生まれつきそうだ。それなのに、彼女からそういう噂が出てこないのはおかしなことだと僕は思う」
「それも、そうね。キャロムがあそこまでしなければならない迷宮を作り上げられる程、レフェイラの魔力を強化できたということは……」
「僕と同等……いや、僕以上でなければならないだろう。まず間違いなく、天才ともてはやされたはずだ」
今回の事件は、膨大な魔力を持つ者が黒幕であるはずだった。しかし、ファルーシャの魔力は一般的なものだ。この事件を引き起こせるとは思えないのである。
それは、例えファルーシャが犯人でなかったとしても、いえることだ。まずその魔力の謎を解き明かさなければ、この事件の黒幕をはっきりと示すことはできないのである。
「……魔力の測定?」
「メルティナ? どうかしたの?」
「アルフィア様、あなたの魔力はいくつでしたか?」
「え? 確か、八十くらいだったと思うけど……」
「八十……?」
そこで、メルティナが突然悩みだした。一体、急にどうしたのだろうか。
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