派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

木山楽斗

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57.魂の在り処

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「彼女が自らの計画を進めるために最初に動いたのは、リリシア様の時です」
「姉貴……」
「シャザームは、リリシア様と話している私を乗っ取り、魂奪取魔法をかけました。そうして、彼女の魂を奪ったのです。それは、彼女が私に取り憑いてすぐのことです」
「つまり、姉貴は十歳くらいの時に魂を奪われたのか……」
「……まずは、そこですね」

 リリシアの魂の話が出て、メルティナはゆっくりと呟いた。
 私達が知りたいのは、その部分だ。奪われた魂の行方、それが重要なのである。

「ファルーシャ様、奪われた魂は、一体どこにあるのですか?」
「……彼女は、奪った魂を使って研究をしようとしていました。つまり、魂は彼女の研究室にあります」
「姉貴の魂も、そこにあるのか?」
「いえ、リリシア様の魂に関しては、別の場所にあります。あの時は、まだ精神干渉が完璧ではなかったのか、シャザームは私がリリシア様の魂を隠すことを見過ごしたのです」
「なるほど……」

 魂の行方を聞いて、私達は少し安心した。もうこの世に存在しないという可能性もあったので、まだこの世にあるというのは安心できる材料だったのだ。
 ただ、気になる点もある。研究室に魂があると言った時のファルーシャの顔が、あまり明るいものではなかったのだ。

「姉貴の魂は、どこにあるんだ?」
「……リオーブ様の中です」
「……何?」

 ファルーシャの言葉に、リオーブは驚いていた。それは、私達もそうだ。まさか、そんな所にリリシアの魂があるなんて、思ってもなかったことである。

「私は、リオーブ様の中にリリシア様の魂を押し込みました。その魂は、恐らくまだ残っているのではないでしょうか?」
「少し、待ってください」

 メルティナは、リオーブに手をかざした。彼の中にある魂を確かめているのだろう。
 すぐに、彼女は目を丸くする。リオーブの中に、魂が二つあるとわかったからだろう。

「確かに、リオーブ様の中には魂が二つあるみたいですね……」
「ええ、正直言って、彼女がその隠し場所に気づかないのは意外でした」
「……彼女は、人の中の魂を数えるという工程を魂奪取魔法に入れていなかったのかもしれないね。僕達は、ファルーシャさんの中に魂が二つあるかどうかを確かめるために、そこを磨いたけど、彼女にとっては必要なかったといった所だろうか」

 シャザームがどういう考えだったのか。それは、わからない。
 ただ、彼女は人の中の魂を数えるようなことはしていなかったようである。
 普通、魂は一人に一つしかない。それをわざわざ確かめる必要がないと判断した。そういうことなのだろうか。

「リリシア様の魂は、魔法で引き出せますから、彼女の体がある場所まで連れて行ってもらえば、魂を体に戻せると思います」
「そうか……メルティナ、頼めるか?」
「もちろんです」

 リオーブの言葉に、メルティナは力強く頷いた。
 これで、彼の姉リリシアは元に戻ることができる。それは、喜ぶべきことだろう。
 ただ、まだ私達が把握しているだけでも二人の人間が魂を奪われている。そのため、まだ完全に喜ぶことはできないだろう。
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