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63.仲が良いかは
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私は、キャロムとドルキンスとファルーシャとともに、シャザームの研究室に向かっていた。
彼女の研究室は、ファルーシャの部屋の下にある。つまり、彼女の実家に向かっているのだ。
「ファルーシャ、あなた本当に大丈夫なの?」
「あ、はい。問題ありません」
馬車の中で、私はファルーシャに話しかけた。
彼女は、昨日急いで病院に行って、検査を受けて、今日ここにいる。問題はないという結果だったものの少し心配なのだ。
ただ、彼女は同行することを決して譲らなかった。恐らく、責任を感じているのだろう。
そのあまりの熱意に、私達は勝てなかった。という訳で、彼女はここにいるのだ。
「ふう……」
「キャロム、緊張しているの?」
「あ、えっと……まあね」
キャロムは、少し不安そうにしていた。恐らく、レフェイラの魂を無事に移し替えられるかどうかを心配しているのだろう。
最初は、彼を自信に溢れる天才だと思っていた。だが、既にその印象は変わっている。
今までの彼は、虚勢によって自分を奮い立たせていたのだろう。それをしなくなったのは、私達に心を開いてくれているということなのかもしれない。
「キャロム君、心配することはない。君は間違いなく天才だ。絶対に成功するさ」
「ドルキンス……ありがとう」
そんなキャロムを、ドルキンスが励ました。なんというか、二人はとても仲良くなっているようだ。
そもそも、ドルキンスがこちらについて来たのは、キャロムが要請したからである。まさか、二人がそんな風になっているなんて、思ってもいなかったことだ。
「……キャロムさんとドルキンス様は、仲が良いのですね……」
「うん? え? いや、そんなことは……」
「そうとも、俺とキャロム君は親友さ」
ファルーシャの指摘に、キャロムとドルキンスはそれぞれ正反対の反応をした。
こういう時に、素直に気持ちを打ち明けることができるドルキンスは素晴らしい人だと思う。
キャロムの反応も、それはそれで可愛らしい反応である。こう言ったら失礼かもしれないが、年相応というか、そんな反応だ。
「一緒について来て欲しいと言ったのに、仲が良くないなんて、そんな理論が通るのかしら?」
「うっ……」
「ははっ! アルフィア嬢の言う通りだな! キャロム君、さあ俺との交友関係を認めるんだ!」
「はあ……まあ、そういうことでもいいけどさ」
私とドルキンスの言葉に、キャロムは目をそらした。恐らく、照れているのだろう。
こういう反応をされると、益々可愛いと思ってしまう。そう言ったら、キャロムは怒るかもしれないが。
「ふふ、アルフィア様も含めて、仲がよろしいのですね?」
「え? そ、そうかしら?」
「そうだろう。アルフィア嬢も含めて、俺達は親友だ。おっと……もちろん、ファルーシャ嬢だって、今日から親友になれるぞ。たくさん話して、交流を深めようじゃないか」
「……ありがとうございます、ドルキンス様」
ファルーシャの言葉に、私は困惑してしまった。なんというか、キャロムの気持ちが少しわかった。確かに、これを素直に認めるというのは、中々難しいことである。結構、恥ずかしいのだ。
だというのに、ドルキンスはすぐにそれを肯定した。さらには、ファルーシャまで親友にしようとしている。
やはり、彼は器が大きい。自己評価が低い彼だが、充分立派な人間である。私はキャロムと顔を見合わせながら、そんなことを思うのだった。
彼女の研究室は、ファルーシャの部屋の下にある。つまり、彼女の実家に向かっているのだ。
「ファルーシャ、あなた本当に大丈夫なの?」
「あ、はい。問題ありません」
馬車の中で、私はファルーシャに話しかけた。
彼女は、昨日急いで病院に行って、検査を受けて、今日ここにいる。問題はないという結果だったものの少し心配なのだ。
ただ、彼女は同行することを決して譲らなかった。恐らく、責任を感じているのだろう。
そのあまりの熱意に、私達は勝てなかった。という訳で、彼女はここにいるのだ。
「ふう……」
「キャロム、緊張しているの?」
「あ、えっと……まあね」
キャロムは、少し不安そうにしていた。恐らく、レフェイラの魂を無事に移し替えられるかどうかを心配しているのだろう。
最初は、彼を自信に溢れる天才だと思っていた。だが、既にその印象は変わっている。
今までの彼は、虚勢によって自分を奮い立たせていたのだろう。それをしなくなったのは、私達に心を開いてくれているということなのかもしれない。
「キャロム君、心配することはない。君は間違いなく天才だ。絶対に成功するさ」
「ドルキンス……ありがとう」
そんなキャロムを、ドルキンスが励ました。なんというか、二人はとても仲良くなっているようだ。
そもそも、ドルキンスがこちらについて来たのは、キャロムが要請したからである。まさか、二人がそんな風になっているなんて、思ってもいなかったことだ。
「……キャロムさんとドルキンス様は、仲が良いのですね……」
「うん? え? いや、そんなことは……」
「そうとも、俺とキャロム君は親友さ」
ファルーシャの指摘に、キャロムとドルキンスはそれぞれ正反対の反応をした。
こういう時に、素直に気持ちを打ち明けることができるドルキンスは素晴らしい人だと思う。
キャロムの反応も、それはそれで可愛らしい反応である。こう言ったら失礼かもしれないが、年相応というか、そんな反応だ。
「一緒について来て欲しいと言ったのに、仲が良くないなんて、そんな理論が通るのかしら?」
「うっ……」
「ははっ! アルフィア嬢の言う通りだな! キャロム君、さあ俺との交友関係を認めるんだ!」
「はあ……まあ、そういうことでもいいけどさ」
私とドルキンスの言葉に、キャロムは目をそらした。恐らく、照れているのだろう。
こういう反応をされると、益々可愛いと思ってしまう。そう言ったら、キャロムは怒るかもしれないが。
「ふふ、アルフィア様も含めて、仲がよろしいのですね?」
「え? そ、そうかしら?」
「そうだろう。アルフィア嬢も含めて、俺達は親友だ。おっと……もちろん、ファルーシャ嬢だって、今日から親友になれるぞ。たくさん話して、交流を深めようじゃないか」
「……ありがとうございます、ドルキンス様」
ファルーシャの言葉に、私は困惑してしまった。なんというか、キャロムの気持ちが少しわかった。確かに、これを素直に認めるというのは、中々難しいことである。結構、恥ずかしいのだ。
だというのに、ドルキンスはすぐにそれを肯定した。さらには、ファルーシャまで親友にしようとしている。
やはり、彼は器が大きい。自己評価が低い彼だが、充分立派な人間である。私はキャロムと顔を見合わせながら、そんなことを思うのだった。
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