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81.もう一度
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「お前達、再会を喜ぶなとは言わないが、ここに我々が来た本分を忘れている訳ではないだろうな……」
「あ、そうでした……アルフィアさん、非常に申し訳ありませんが、一緒に来てもらえませんか?」
「え?」
そこで、メルティナは私の手を取って来た。
一緒に来て欲しい。その要求の意味を、私は考える。
もしかして、あの世界に来て欲しいということなのだろうか。もしそうだとするなら、そんな簡単に返事をすることはできない。
「メルティナ、ちょっと待ってくれないかな? 流石に、私も今から別の世界に行くというのは、中々に勇気がいることであって……」
「あなたの気持ちは理解しています。ただ、時間がないのです」
「時間がない?」
「実の所、私達は結構無理をしてこちらに来ているのです。時間をかけすぎると、もしかしたら大変なことになっているということも……」
「……何か、事情があるんだね?」
メルティナは、かなり焦っている様子だった。恐らく、何かとても大切な事情があるのだろう。
それなら、私も彼女に従うことはやぶさかではない。ただ、一つだけ確認しておきたいことはある。
「一つだけ聞かせて欲しい。私は、この世界に帰って来られるの?」
「ええ、それはもちろん、私達が全力を尽くすつもりです」
「なるほど……わかった。それなら、行くよ。あの世界へ」
「ありがとうございます。それでは、こちらに……」
私の了承を得ると、メルティナは片手を誰もいない方向に向けた。
それは恐らく、魔法を使おうとしているのだろう。経験上、それがなんとなくわかる。
「時空移動魔法……パラレルワールド・ゲート」
「こ、これは……」
メルティナの宣言とともに、私の目の前には大きな穴が開いた。
それは、空間に開いているとでも表現するべき穴だ。空中に大きな穴が、不自然に存在しているのだ。
「さて、それでは行きましょう」
「い、行くって、この穴の中に入るの?」
「ええ、あちらの世界に続いているので、安心してください」
「そ、そう言われても……わあっ!」
正直な話、その穴の中に入るのは、とても嫌だった。その歪な穴から、奇妙な気配を感じていたからだ。
しかし、私はメルティナに引っ張られてその穴の中に無理やりに入れられてしまった。
その直後、奇妙な感覚が私を襲ってくる。
「うっ……気持ち悪い」
「……少しの間ですから、どうか我慢してください」
「う、うん……」
穴の中に入った瞬間、私の視界は回転し始めた。右も左も上も下もわからない。それが、とてつもなく不快である。
どうやら、空間を越えるというのはかなり大変なことであるらしい。できることなら二度と体験したくはないが、少なくとももう一回は体験することになるという事実に、私は少し落ち込むのだった。
「あ、そうでした……アルフィアさん、非常に申し訳ありませんが、一緒に来てもらえませんか?」
「え?」
そこで、メルティナは私の手を取って来た。
一緒に来て欲しい。その要求の意味を、私は考える。
もしかして、あの世界に来て欲しいということなのだろうか。もしそうだとするなら、そんな簡単に返事をすることはできない。
「メルティナ、ちょっと待ってくれないかな? 流石に、私も今から別の世界に行くというのは、中々に勇気がいることであって……」
「あなたの気持ちは理解しています。ただ、時間がないのです」
「時間がない?」
「実の所、私達は結構無理をしてこちらに来ているのです。時間をかけすぎると、もしかしたら大変なことになっているということも……」
「……何か、事情があるんだね?」
メルティナは、かなり焦っている様子だった。恐らく、何かとても大切な事情があるのだろう。
それなら、私も彼女に従うことはやぶさかではない。ただ、一つだけ確認しておきたいことはある。
「一つだけ聞かせて欲しい。私は、この世界に帰って来られるの?」
「ええ、それはもちろん、私達が全力を尽くすつもりです」
「なるほど……わかった。それなら、行くよ。あの世界へ」
「ありがとうございます。それでは、こちらに……」
私の了承を得ると、メルティナは片手を誰もいない方向に向けた。
それは恐らく、魔法を使おうとしているのだろう。経験上、それがなんとなくわかる。
「時空移動魔法……パラレルワールド・ゲート」
「こ、これは……」
メルティナの宣言とともに、私の目の前には大きな穴が開いた。
それは、空間に開いているとでも表現するべき穴だ。空中に大きな穴が、不自然に存在しているのだ。
「さて、それでは行きましょう」
「い、行くって、この穴の中に入るの?」
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「そ、そう言われても……わあっ!」
正直な話、その穴の中に入るのは、とても嫌だった。その歪な穴から、奇妙な気配を感じていたからだ。
しかし、私はメルティナに引っ張られてその穴の中に無理やりに入れられてしまった。
その直後、奇妙な感覚が私を襲ってくる。
「うっ……気持ち悪い」
「……少しの間ですから、どうか我慢してください」
「う、うん……」
穴の中に入った瞬間、私の視界は回転し始めた。右も左も上も下もわからない。それが、とてつもなく不快である。
どうやら、空間を越えるというのはかなり大変なことであるらしい。できることなら二度と体験したくはないが、少なくとももう一回は体験することになるという事実に、私は少し落ち込むのだった。
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