八つ当たりで、聖女をクビになりました。失恋した王子の乱心によって、王国は危機的状況です。

木山楽斗

文字の大きさ
22 / 22

第22話 乗り越えるために

しおりを挟む
 私は、マルグから告白されていた。
 彼は、私と対等になりたいと思っている。聖女である私と自分が、対等ではないと感じているようだ。
 でも、そんなことはない。聖女だから対等ではないなどという考えは、間違っているだろう。少なくとも、私はそう思っている。

「マルグ、私はあなたのことを下に見たり、そんなことは思っていないよ」
「そうかもしれない……でも、実際にお前は高い所にいる。それは、紛れもない事実だ」
「確かに、聖女は高い所なのかもしれない。でも、それでマルグに距離を離されるなんて、私は嫌だよ」
「え?」

 私は、素直にそう思っていた。
 孤児院で一緒に育った彼との間に、距離ができる。そんなのは嫌だ。
 聖女だからとか、そういうことを理由にして離れて行かないで欲しい。私は、彼に傍にいて欲しいのだ。

「私は、マルグに傍にいて欲しい。隣に立っていて欲しい。だって、マルグが隣にいてくれると、とっても心強いから……」
「……」
「マルグは、私の傍にいてくれないの?」
「くっ……」
 
 私の言葉に、マルグは自身の額に拳を当てた。
 それは、まるで自分を罰しているかのような仕草だ。恐らく、わかってくれたのだろう。

「俺は馬鹿だな……変なことにこだわっていた。お前の気持ちも考えないで」
「わかってくれたならいいよ」
「……俺はお前の傍にいる。距離は離れているけど、心は一緒だ。何かあったら、すぐに駆け付けるから、俺に隠したりしないでくれよ」
「うん……何かあったら、頼らせてもらう」

 マルグの言葉が、私は嬉しかった。
 こういう風に真っ直ぐな方が、彼らしい。こういう彼だからこそ、私は一緒にいたいと思えるのだ。

「修行が終わって、一人前になったら、王都に来る。少し時間はかかるかもしれないけど……待っていてくれるか?」
「できれば、早くして欲しいかな」
「……意外と厳しいことを言ってくるな」
「そんなに長い時間待つのは嫌だよ。実際に傍にいてくれるなら、その方が絶対にいいし……」
「……そうだよな。わかった。できるだけ早く、お前の元に戻って来る。約束だ」

 マルグは、私に小指を差し出してきた。
 私は、それに自らの小指を絡ませる。
 これは、約束だ。この約束を、きっと彼は守ってくれる。

 これから、王国には色々なことが起こるだろう。
 だけど、私はきっと乗り越えていける。頼りになる人達と、頼りになる彼と一緒なのだから、それは間違いないのだ。
しおりを挟む
感想 6

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(6件)

セライア(seraia)

完結、お疲れ様でした🍻

穏やかで、ほんのり甘くて、未来に明るさを感じさせてくれる終わり方だなぁ と思いました☺

2021.06.17 木山楽斗

感想ありがとうございます。
楽しんでいただけたなら、幸いです。

解除
セライア(seraia)

悪魔と魔神のせいで、恋愛ジャンルというよりファンタジージャンしてましたね😅

2021.06.14 木山楽斗

感想ありがとうございます。
確かに、そうかもしれません。

解除
セライア(seraia)

魔神を斬る大義名分は “ 現時点では ” 無いですね😲 人間と魔神では諸々の基準が異なるでしょうから、今後はわかりませんけど🤔
断罪者という点では、魔神より天使っぽい😆

2021.06.12 木山楽斗

感想ありがとうございます。
今後の展開に、ご期待いただけると幸いです。

解除

あなたにおすすめの小説

聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~

白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。 王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。 彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。 #表紙絵は、もふ様に描いていただきました。 #エブリスタにて連載しました。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

地味で無能な聖女だと婚約破棄されました。でも本当は【超過浄化】スキル持ちだったので、辺境で騎士団長様と幸せになります。ざまぁはこれからです。

黒崎隼人
ファンタジー
聖女なのに力が弱い「偽物」と蔑まれ、婚約者の王子と妹に裏切られ、死の土地である「瘴気の辺境」へ追放されたリナ。しかし、そこで彼女の【浄化】スキルが、あらゆる穢れを消し去る伝説級の【超過浄化】だったことが判明する! その奇跡を隣国の最強騎士団長カイルに見出されたリナは、彼の溺愛に戸惑いながらも、荒れ地を楽園へと変えていく。一方、リナを捨てた王国は瘴気に沈み崩壊寸前。今さら元婚約者が土下座しに来ても、もう遅い! 不遇だった少女が本当の愛と居場所を見つける、爽快な逆転ラブファンタジー!

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】濡れ衣聖女はもう戻らない 〜ホワイトな宮廷ギルドで努力の成果が実りました

冬月光輝
恋愛
代々魔術師の名家であるローエルシュタイン侯爵家は二人の聖女を輩出した。 一人は幼き頃より神童と呼ばれた天才で、史上最年少で聖女の称号を得たエキドナ。 もう一人はエキドナの姉で、妹に遅れをとること五年目にしてようやく聖女になれた努力家、ルシリア。 ルシリアは魔力の量も生まれつき、妹のエキドナの十分の一以下でローエルシュタインの落ちこぼれだと蔑まれていた。 しかし彼女は努力を惜しまず、魔力不足を補う方法をいくつも生み出し、教会から聖女だと認められるに至ったのである。 エキドナは目立ちたがりで、国に一人しかいなかった聖女に姉がなることを良しとしなかった。 そこで、自らの家宝の杖を壊し、その罪を姉になすりつけ、彼女を実家から追放させた。 「無駄な努力」だと勝ち誇った顔のエキドナに嘲り笑われたルシリアは失意のまま隣国へと足を運ぶ。 エキドナは知らなかった。魔物が増えた昨今、彼女の働きだけでは不足だと教会にみなされて、姉が聖女になったことを。 ルシリアは隣国で偶然再会した王太子、アークハルトにその力を認められ、宮廷ギルド入りを勧められ、宮仕えとしての第二の人生を送ることとなる。 ※旧タイトル『妹が神童だと呼ばれていた聖女、「無駄な努力」だと言われ追放される〜「努力は才能を凌駕する」と隣国の宮廷ギルドで証明したので、もう戻りません』

【完結】大聖女は無能と蔑まれて追放される〜殿下、1%まで力を封じよと命令したことをお忘れですか?隣国の王子と婚約しましたので、もう戻りません

冬月光輝
恋愛
「稀代の大聖女が聞いて呆れる。フィアナ・イースフィル、君はこの国の聖女に相応しくない。職務怠慢の罪は重い。無能者には国を出ていってもらう。当然、君との婚約は破棄する」 アウゼルム王国の第二王子ユリアンは聖女フィアナに婚約破棄と国家追放の刑を言い渡す。 フィアナは侯爵家の令嬢だったが、両親を亡くしてからは教会に預けられて類稀なる魔法の才能を開花させて、その力は大聖女級だと教皇からお墨付きを貰うほどだった。 そんな彼女は無能者だと追放されるのは不満だった。 なぜなら―― 「君が力を振るうと他国に狙われるし、それから守るための予算を割くのも勿体ない。明日からは能力を1%に抑えて出来るだけ働くな」 何を隠そう。フィアナに力を封印しろと命じたのはユリアンだったのだ。 彼はジェーンという国一番の美貌を持つ魔女に夢中になり、婚約者であるフィアナが邪魔になった。そして、自らが命じたことも忘れて彼女を糾弾したのである。 国家追放されてもフィアナは全く不自由しなかった。 「君の父親は命の恩人なんだ。私と婚約してその力を我が国の繁栄のために存分に振るってほしい」 隣国の王子、ローレンスは追放されたフィアナをすぐさま迎え入れ、彼女と婚約する。 一方、大聖女級の力を持つといわれる彼女を手放したことがバレてユリアンは国王陛下から大叱責を食らうことになっていた。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。