妹のために犠牲になることを姉だから仕方ないで片付けないでください。

木山楽斗

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4.彼の視線は

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「クロード殿下……いらっしゃっていたのですか?」
「ええ、ラナシア嬢を助けたのは僕ですからね」

 デルガン侯爵は、クロード殿下に対してはその勢いを潜めていた。
 それは当然のことである。相手は第二王子だ。例え怒っていたとしても、冷静にならざるを得ないだろう。無礼があったら大問題だ。

「しかしデルガン侯爵、これはどういうことですかね?」
「な、何の話でしょうか?」
「病人――それも女性の部屋に突然押しかけて怒号を飛ばすとは、紳士としてあるまじき行為です。あなたが貴族として、誰と敵対しているのかなど知りませんが、僕としてはあなたの心証が悪くなります」
「そ、そんな……」

 クロード殿下の淡々とした言葉に、デルガン侯爵は震えていた。
 第二王子の来訪によって熱が冷めたからか、彼は何度かこちらを見て気まずそうな顔をしている。それは恐らく、自らがやったことが良くないことだと自覚したということだろう。
 しかしデルガン侯爵の表情は、すぐに強張る。その表情からして、過ちを認めるということを彼は放棄したらしい。

「クロード殿下、いくらあなたでもデルガン侯爵家とドルガン侯爵家の問題に口出しするのは、やめていただきたい。これは我々にとって、死活問題なのです。こちらが隙を見せたら、ドルガン侯爵に付け入られる。そうなれば、デルガン侯爵家は終わりです」
「その前に、僕があなたを終わらせて差し上げましょうか?」
「え?」
「言ったはずです。あなたが誰と敵対しているのかなど知ったことではないと。それが今ここで苦しんでいるラナシア嬢の傍で喚き散らす理由にはならないと言っているのです」
「う、くっ、それは……」

 クロード殿下は、デルガン侯爵を睨みつけた。
 彼のその視線からは、明確な怒りが読み取れる。デルガン侯爵は選択を誤ったようだ。
 恐らく、自分の息子程のクロード殿下なら言いくるめられるなどと思ったのだろう。しかし彼は甘くなかった。デルガン侯爵に、付け入る隙を見せていない。

「父上、クロード殿下の言う通りです。父上の行為はなんとも……醜いものです。我々の事情に、ラナシア嬢を巻き込むなど私は正しい行いではありません。そもそも彼女が疲弊したことの発端は、我々の対立が原因ではありませんか」
「お、お前まで何を言う?」
「……ディオラス侯爵令息は、ご立派な方だ。彼に免じて、ここは許して差し上げましょう。これ以上うだうだと言わなければの話ですが」
「うぬぬ……くっ!」

 息子にまで責められたことで、デルガン侯爵の心は折れたようだった。
 彼はそのまま、部屋から出て行く。それにディオラス様が、私達に一礼してからついていくのだった。
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