私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗

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1.突然の婚約破棄

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「君との婚約を破棄したいと思っている」
「え?」

 婚約者であるバルドン様は、私に対して驚くべきことを告げてきた。
 ベンゼル伯爵家の長子である彼は、アンデルト伯爵家の長女である私を嫁として迎え入れる。彼はその話を無下にしようとしているらしい。
 それは許されないことだ。彼はそれをわかっていないのだろうか。二家の間で取り決められたことを捻じ曲げたら、色々な人に迷惑がかかるというのに。

「バルドン様、正気ですか?」
「正気だとも」
「何故ですか?」
「何故? そんなことは決まっているだろう。君のせいだ」
「え?」

 バルドン様の言葉に、私は固まってしまった。
 婚約破棄が私のせいだと言われるなんて、思ってもいないことだったからだ。
 しかし、私が一体何をしたというのだろうか。理由がまったく持って思い浮かばない。

「どういうことですか?」
「自分の胸に聞いてみるといい。覚えくらいはあるはずだ」
「いいえ、ないから聞いているんです」
「……ちっ!」

 バルドン様は、舌打ちをしながら忌々しそうな表情を浮かべていた。
 私は無意識の内に、彼が傷つくような何かをしていたのだろうか。それは考えてもわからないことなので、彼から直接聞いてみるしかない。

「君という人間は、いつでも上から目線で物を話す。僕はそれが大いに気に食わない。自分が偉いとか、勘違いしているんじゃないのか?」
「……上から目線、ですか?」
「それでいてそのことを自覚していないというのも厄介だ。まったく、君はつくづく愚かだといえる」

 私が上から目線である。それは今までの人生の中で、一回も言われたことがないことだった。
 もちろん、気遣って言われなかったという可能性もあるが、本当にそうだろうか。私は思わず、疑問符を浮かべてしまう。

 大体、普段から上から目線のバルドン様にそのようなことを言われる筋合いもないと思うのだが、その辺りに関してはなんとか言葉を飲み込んだ。それが彼の神経を逆撫でるものでしかないと理解できたからだ。

「以前君は、僕のことを咎めたことがあっただろう?」
「……何度かそういうことがあったとは認識していますが」
「余計なことばかり言う君にはうんざりとしていた。君と結婚すれば、僕の人生からは彩というものが失われてしまうだろうさ」

 私は、バルドン様の行いを何度か咎めたことがある。
 彼には、残虐な一面があるのだ。特に動物などに対して、苛烈な意思を向けることがある。

 そういった行いを注意したことが、バルドン様にとってはひどく気に食わないことだったらしい。しかしそれに関しては、必要なことだったと認識している。彼のそういった行為を止めないことは、人道から外れることだと私は思っているからだ。

 それが受け入れられなかったというならば、これはもう仕方がないことなのかもしれない。
 そもそも、私が婚約破棄を止める理由があるという訳でもないし、ここは諦めるとしよう。
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