私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗

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34.愚かなる妹

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「げほっげほっ……」

 腹違いの妹が苦しそうに咳をしているのを見ながら、私は少し考えていた。
 信じていた者に裏切られて、人質にまでされたという経験は、妹をかなり痛めつけているのだろう。それはイフェルーナの表情から伝わってきた。
 ただ同情できるかといったら、それとこれとは別の話である。そもそもことを起こしたのは彼女だ。今回のことは自業自得であるといえる。

「さてと、こちらについても話をつけなければならないか……」

 そこでギーゼル様は、ゆっくりとため息をついた。
 彼は、微妙な表情でイフェルーナの方を見つめている。それは今回の件に対してどう対処するべきか、悩んでいるからだろう。
 イフェルーナの行動は、グライム辺境伯家への裏切りともいえる行為だ。グライム辺境伯家の代表であるギーゼル様は、そのことに対して決断を下さなければならないのである。

「イフェルーナ嬢、少し良いだろうか?」
「あなたは……」
「俺はグライム辺境伯家の次男、ギーゼルだ……知らないという訳でもないだろう」
「……ちっ!」

 ギーゼル様の言葉に、イフェルーナはその表情を歪めていた。
 彼女が今回の件について、どこまで把握しているのかはよくわかっていない。ただ、アンデルト伯爵夫人と私達の間にある取引を理解していないとは思えなかった。
 メアリーを連れ去るという行動には、取引を快く思っていないという意思があると思うのだ。逆にそうでなければ、彼女を連れ去った意味がわからない。

「あなたがどういった意図で今回のことを起こしたのか、教えてもらえるとこちらとしては助かる。もっとも、教えてくれなかったとしても、やることというのはそれ程変わらないがな」
「……アンデルト伯爵家は、グライム辺境伯家と対等な立場にあります。あなたが何かをしようとしたら、こちらもそちらの弱みを明かすことができるのですよ?」
「あなたが状況を何も理解していないということはよくわかった。共倒れの覚悟なんて、言い出すなよ? そんなことを口にすると、馬鹿だと言いたくなってしまう」

 ギーゼル様は、首をゆっくりと横に振った。
 彼の表情からは、呆れというものが伝わって来る。この状況で、まだ優位に立とうとしているイフェルーナに、彼は呆れ返っているのだろう。

 あの妹は、愚かにも状況というものをまったく持って理解していない。
 高慢な彼女には、取引の意味などわかっていなかったのだろう。イフェルーナはアンデルト伯爵家にとって、余計なことをしたのである。
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