甘やかされて育った妹が何故婚約破棄されたかなんて、わかりきったことではありませんか。

木山楽斗

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14.天の助け

『今まで育ててやった恩も忘れて――お前など、もうこのリヴェルト伯爵家に必要ない! ここから出て行け!』

 激昂するお父様によって、私はリヴェルト伯爵家の屋敷から追い出されることになった。
 私はすぐに追い出されてしまった。あるのはこの身一つだ。正直な所、困ってしまう。流石の私も、一文無しで放り出されるのはきつい。
 とはいえ、なんとかできないという訳でもないだろう。頼れる人がいないという訳でもないのだから、そちらをあたってみることにしよう。

「おや、こんにちは」
「え? ああ、こんにちは」

 屋敷の外にある門から出た私は、一人の男性から声をかけられた。
 それに私は驚いた。反射的に挨拶はしたが、話しかけられるなんて思ってもいなかったからである。
 ただ、声をかけてきた人の格好を見て気付いた。それは郵便の配達員の格好だ。

「家の方ですか? お手紙を持ってきたのですが……」
「あ、えっと、実の所経った今追い出されてしまって」
「何かご事情がおありのようですね」

 私が特に何も考えずに事情を話したら、配達員は背筋を伸ばした。
 リヴェルト伯爵家とそんなに関係もないため、彼になら話してもいいかと楽観的に言葉を発したのだが、間違いだっただろうか。かなり重く受け止められているような気がする。

「……うん?」

 背筋を伸ばしたことによって、私は配達員の帽子に隠れて見えなかった顔を見た。
 その顔には、見覚えがある。しかしながら、私は混乱していた。その人物が、配達員をしている訳がないからだ。
 ただ、ここまで顔がそっくりな人はそういないだろう。故に私は、とりあえず名前を呼んでみることにした。それで返って来る反応から判断しようと思ったのだ。

「マレイド様?」
「ええ、僕です」

 私の言葉に、配達員ははっきりと答えてくれた。
 それで彼が、ミルドレッド男爵家のマレイド様だということがわかった。
 しかし、彼が郵便配達員の格好をしている意味がわからない。私は思わず首を傾げる。するとマレイド様は笑顔を返してきた。

「実はミルドレッド男爵家も色々と情報を仕入れていましてね。ベレイン伯爵家がリヴェルト伯爵家との婚約を破棄したと聞きました。それでもしかしたら、何か起こっているのではないかと思い、知人に頼んでこうしてあなたの様子を見に来たのです」
「そうだったのですか……ありがとうございます。それは、とても助かります」

 マレイド様の言葉に、私は驚きながらも感謝した。
 ここに彼が来てくれたことは、天の助けとさえ言いたくなるようなことだ。これからどうするべきかと悩んでいたが、それが解決するかもしれない。
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