12 / 21
12.遠い王都に
しおりを挟む
「……あれは」
私は、精霊の森の上空に来ていた。
魔力によって、私はここからエルドー王国の上空の様子を窺っている。
そこには、確かに龍がいた。
以前よりもかなり近づいている。この数日で、さらに距離を縮めたようだ。
「……」
私は、改めて夢の光景を思い出していた。
火の海に包まれる町。逃げまとう人々、その光景が鮮明に蘇ってくる。
あれが、現実に起こるというのだろうか。私はぼんやりとそんなことを考える。
「……私には関係がないこと、か」
しかし、私はその考えが振り払った。
あの国がどうなろうとも、私には関係がないことだ。
「……うん?」
そこで、私は何か違和感のようなものを覚えた。
それが何かはわからない。だが、あの龍を見ていると、なんだか変な感じがするのだ。
「……下りよう」
私は、ゆっくりと下降していく。
すると、シャルピードとロッピリオが駆け寄って来る。
「ミレイナ、すごいね……まるで、ロッピリオみたいだ」
「本当だぜ……というか、俺よりも高く飛べるんじゃないか?」
「あはは……」
二人は、私が空に飛び上がったことに驚いているようだ。
確かに、この森の者達には私の力はまだ見せていない。小さい頃の私しか知らない二人からすれば、信じられないことだろう。
「まあ、これでも聖女をやっていたからね……人並外れた魔力があるんだよ」
「そいつはすごいな……まあ、でも考えてみれば、小さな頃から魔力に溢れていたか」
「そうだね……確かに、そうだった」
「あれ? 二人とも、知っていたの?」
「ああ、気づいていたよ。君の体にとてつもない力が宿っているということには……」
私は知らなかったが、二人は私の体に多大な魔力が宿っていると知っていたようだ。
確かに、私を連れ去ったエルドー王国の者達は、私の魔力にすぐに気づいた。もしかしたら、他人からすれば、私の魔力というものはわかりやすいものだったのかもしれない。
「だけど、まさかここまでとは思っていなかった……本当に、成長したんだね」
「うん……まあ、色々と学ばされたからね」
「そうか……」
私は、魔法を自在に操ることができる。
エルドー王国で聖女になるために学ばされたこの技術は、今でも私の身に沁みついている。
これが役に立つものではあることはわかっている。だが、あの国の身勝手で与えられた技術は、今となっては少々複雑なものだ。
「まあ、いいじゃないか。せっかく身に着けた力なんだから、存分に利用すればいい」
「……そうだね、ロッピリオの言う通りだ」
「……うん、そうかもしれないね」
二人の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
せっかく利用できる力なのだから、利用する。それでいいのだろう。
私は、精霊の森の上空に来ていた。
魔力によって、私はここからエルドー王国の上空の様子を窺っている。
そこには、確かに龍がいた。
以前よりもかなり近づいている。この数日で、さらに距離を縮めたようだ。
「……」
私は、改めて夢の光景を思い出していた。
火の海に包まれる町。逃げまとう人々、その光景が鮮明に蘇ってくる。
あれが、現実に起こるというのだろうか。私はぼんやりとそんなことを考える。
「……私には関係がないこと、か」
しかし、私はその考えが振り払った。
あの国がどうなろうとも、私には関係がないことだ。
「……うん?」
そこで、私は何か違和感のようなものを覚えた。
それが何かはわからない。だが、あの龍を見ていると、なんだか変な感じがするのだ。
「……下りよう」
私は、ゆっくりと下降していく。
すると、シャルピードとロッピリオが駆け寄って来る。
「ミレイナ、すごいね……まるで、ロッピリオみたいだ」
「本当だぜ……というか、俺よりも高く飛べるんじゃないか?」
「あはは……」
二人は、私が空に飛び上がったことに驚いているようだ。
確かに、この森の者達には私の力はまだ見せていない。小さい頃の私しか知らない二人からすれば、信じられないことだろう。
「まあ、これでも聖女をやっていたからね……人並外れた魔力があるんだよ」
「そいつはすごいな……まあ、でも考えてみれば、小さな頃から魔力に溢れていたか」
「そうだね……確かに、そうだった」
「あれ? 二人とも、知っていたの?」
「ああ、気づいていたよ。君の体にとてつもない力が宿っているということには……」
私は知らなかったが、二人は私の体に多大な魔力が宿っていると知っていたようだ。
確かに、私を連れ去ったエルドー王国の者達は、私の魔力にすぐに気づいた。もしかしたら、他人からすれば、私の魔力というものはわかりやすいものだったのかもしれない。
「だけど、まさかここまでとは思っていなかった……本当に、成長したんだね」
「うん……まあ、色々と学ばされたからね」
「そうか……」
私は、魔法を自在に操ることができる。
エルドー王国で聖女になるために学ばされたこの技術は、今でも私の身に沁みついている。
これが役に立つものではあることはわかっている。だが、あの国の身勝手で与えられた技術は、今となっては少々複雑なものだ。
「まあ、いいじゃないか。せっかく身に着けた力なんだから、存分に利用すればいい」
「……そうだね、ロッピリオの言う通りだ」
「……うん、そうかもしれないね」
二人の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
せっかく利用できる力なのだから、利用する。それでいいのだろう。
84
あなたにおすすめの小説
見知らぬ子息に婚約破棄してくれと言われ、腹の立つ言葉を投げつけられましたが、どうやら必要ない我慢をしてしまうようです
珠宮さくら
恋愛
両親のいいとこ取りをした出来の良い兄を持ったジェンシーナ・ペデルセン。そんな兄に似ずとも、母親の家系に似ていれば、それだけでもだいぶ恵まれたことになったのだが、残念ながらジェンシーナは似ることができなかった。
だからといって家族は、それでジェンシーナを蔑ろにすることはなかったが、比べたがる人はどこにでもいるようだ。
それだけでなく、ジェンシーナは何気に厄介な人間に巻き込まれてしまうが、我慢する必要もないことに気づくのが、いつも遅いようで……。
聖女ですが、大地の力を授かったので、先手を打って王族たちを国外追放したら、国がとってもスッキリしました。
冬吹せいら
恋愛
聖女のローナは、大地の怒りを鎮めるための祈りに、毎回大金がかかることについて、王族や兵士たちから、文句ばかり言われてきた。
ある日、いつものように祈りを捧げたところ、ローナの丁寧な祈りの成果により、大地の怒りが完全に静まった。そのお礼として、大地を司る者から、力を授かる。
その力を使って、ローナは、王族や兵士などのムカつく連中を国から追い出し……。スッキリ綺麗にすることを誓った。
聖女は神の力を借りて病を治しますので、神の教えに背いた病でいまさら泣きついてきても、私は知りませんから!
甘い秋空
恋愛
神の教えに背いた病が広まり始めている中、私は聖女から外され、婚約も破棄されました。
唯一の理解者である王妃の指示によって、幽閉生活に入りましたが、そこには……
平民を好きになった婚約者は、私を捨てて破滅するようです
天宮有
恋愛
「聖女ローナを婚約者にするから、セリスとの婚約を破棄する」
婚約者だった公爵令息のジェイクに、子爵令嬢の私セリスは婚約破棄を言い渡されてしまう。
ローナを平民だと見下し傷つけたと嘘の報告をされて、周囲からも避けられるようになっていた。
そんな中、家族と侯爵令息のアインだけは力になってくれて、私はローナより聖女の力が強かった。
聖女ローナの評判は悪く、徐々に私の方が聖女に相応しいと言われるようになって――ジェイクは破滅することとなっていた。
【完結】公爵家のメイドたる者、炊事、洗濯、剣に魔法に結界術も完璧でなくてどうします?〜聖女様、あなたに追放されたおかげで私は幸せになれました
冬月光輝
恋愛
ボルメルン王国の聖女、クラリス・マーティラスは王家の血を引く大貴族の令嬢であり、才能と美貌を兼ね備えた完璧な聖女だと国民から絶大な支持を受けていた。
代々聖女の家系であるマーティラス家に仕えているネルシュタイン家に生まれたエミリアは、大聖女お付きのメイドに相応しい人間になるために英才教育を施されており、クラリスの側近になる。
クラリスは能力はあるが、傍若無人の上にサボり癖のあり、すぐに癇癪を起こす手の付けられない性格だった。
それでも、エミリアは家を守るために懸命に彼女に尽くし努力する。クラリスがサボった時のフォローとして聖女しか使えないはずの結界術を独学でマスターするほどに。
そんな扱いを受けていたエミリアは偶然、落馬して大怪我を負っていたこの国の第四王子であるニックを助けたことがきっかけで、彼と婚約することとなる。
幸せを掴んだ彼女だが、理不尽の化身であるクラリスは身勝手な理由でエミリアをクビにした。
さらに彼女はクラリスによって第四王子を助けたのは自作自演だとあらぬ罪をでっち上げられ、家を潰されるかそれを飲み込むかの二択を迫られ、冤罪を被り国家追放に処される。
絶望して隣国に流れた彼女はまだ気付いていなかった、いつの間にかクラリスを遥かに超えるほどハイスペックになっていた自分に。
そして、彼女こそ国を守る要になっていたことに……。
エミリアが隣国で力を認められ巫女になった頃、ボルメルン王国はわがまま放題しているクラリスに反発する動きが見られるようになっていた――。
孤島送りになった聖女は、新生活を楽しみます
天宮有
恋愛
聖女の私ミレッサは、アールド国を聖女の力で平和にしていた。
それなのに国王は、平和なのは私が人々を生贄に力をつけているからと罪を捏造する。
公爵令嬢リノスを新しい聖女にしたいようで、私は孤島送りとなってしまう。
島から出られない呪いを受けてから、転移魔法で私は孤島に飛ばさていた。
その後――孤島で新しい生活を楽しんでいると、アールド国の惨状を知る。
私の罪が捏造だと判明して国王は苦しんでいるようだけど、戻る気はなかった。
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる