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「……もしかして、伯爵家が破綻しましたか?」
「……何?」
「アルフェンド伯爵家は、あまり裕福ではないと聞いたことがあります。それが続いて、財政的に破綻したのではありませんか?」
この部屋に籠っていても、見えてくるものはいくつかあった。
例えば、窓を開けていれば噂話が耳に入ってくることもある。それに、お父様が気遣ったのか置いてくれたと思われる本などで得た知識も、私にはあった。
それらを合わせれば、結論もいくつか考えられる。お父様の反応からして、それはそれ程間違っていないだろう。
「切り捨てるなら、私ということでしょうか?」
「それは……」
「まあ、お父様が真実を明かしてくれる訳はありませんか」
お父様は、私に対して親としての情を抱いていない訳ではない。だが、それでもお母様には逆らえない人だ。
故に、彼が真実を話してはくれないだろう。弱い立場である彼は、指示に従うだけだ。
「……私が立場を失った後、妻がこの伯爵家の実権を握ったことは、お前も知っているだろう?」
「……ええ」
そう思っていた私に対して、お父様はそう切り出してきた。
意外なことに、何があったかを話してくれるつもりであるらしい。それも、大変珍しいことである。
もしかしたら、それは最後の優しさなのだろうか。これから私達は伯爵家から追放される。その境遇に同情して、口が緩くなっているのかもしれない。
「妻は優秀であるとは言い難かった。浪費癖もあったため、このアルフェンド伯爵家は貧乏な伯爵家となってしまったのだ」
「……そのような人にどうして任せてしまったのですか?」
「私の立場がなかったからだ。一族、いや一族以外からも私がアルフェンド伯爵家の当主として振る舞うことに反感を買っていた。だから、任せるしかなかったのだ」
お母様のことは、私もよく知っている。派手好きで、少々気性が荒し人。それが私が彼女に抱いていた印象だった。
ただ、それは妾の子である私の偏見が入っていると思っていた。悪い印象に引っ張られている部分があると考えていたのだ。
だが、それはそこまで間違った評価ではなかったらしい。私をここに閉じ込めた彼女は、貴族として優秀という訳ではなかったようだ。
「状況が厳しくなるにつれて、妻はお前を排除することを考え始めた。元々、血を重視する貴族としての理念がなければ、妻はお前を追い出していたはずだ。なりふり構っている状況ではなくなった以上、こうなることは目に見えていた」
「そうですか……」
お父様が言っていることは、すぐに理解できた。
当然のことながら、お母様は私のことを快く思っていない。いつかこうなるかもしれないとは、何度か考えていたことだ。
「それで、私はいつ出て行けばいいのでしょうか?」
「妻はすぐにでもと望んでいる」
「それなら、すぐに出て行きます」
この伯爵家にいれば、私は生きていくことはできる。最低限の生活は、保障されていたからだ。
だが、自由のない今の生活は、私にとって苦しいものだった。そこから解放されるなら、この先に辛いことが待ち受けているとしても、我慢することができるような気がする。
「そんなに簡単なことではないぞ? ここから出て行き生きていくことは」
「それなら、お父様が助けてくださるのですか?」
「何?」
「あなたはいつも私のことを心配する振りをする。でも、結局は何もしようとしない。今回もそれは同じなのでしょう?」
「それは……」
私の言葉に対するお父様の返答は、とても弱々しい。彼はいつもそうだ。お母様の顔色を窺いつつも、私に嫌われたくないという気持ちも持っている。そんな中途半端な人なのだ。
全てを捨てて、私を助けてくれる。そんな希望を抱いたこともあったが、それは小さな頃に打ち砕かれた。それをもう悲しいとは思わない。
私は、これから一人で生きていくしかないのだ。私には、それしか道はないのである。
「……何?」
「アルフェンド伯爵家は、あまり裕福ではないと聞いたことがあります。それが続いて、財政的に破綻したのではありませんか?」
この部屋に籠っていても、見えてくるものはいくつかあった。
例えば、窓を開けていれば噂話が耳に入ってくることもある。それに、お父様が気遣ったのか置いてくれたと思われる本などで得た知識も、私にはあった。
それらを合わせれば、結論もいくつか考えられる。お父様の反応からして、それはそれ程間違っていないだろう。
「切り捨てるなら、私ということでしょうか?」
「それは……」
「まあ、お父様が真実を明かしてくれる訳はありませんか」
お父様は、私に対して親としての情を抱いていない訳ではない。だが、それでもお母様には逆らえない人だ。
故に、彼が真実を話してはくれないだろう。弱い立場である彼は、指示に従うだけだ。
「……私が立場を失った後、妻がこの伯爵家の実権を握ったことは、お前も知っているだろう?」
「……ええ」
そう思っていた私に対して、お父様はそう切り出してきた。
意外なことに、何があったかを話してくれるつもりであるらしい。それも、大変珍しいことである。
もしかしたら、それは最後の優しさなのだろうか。これから私達は伯爵家から追放される。その境遇に同情して、口が緩くなっているのかもしれない。
「妻は優秀であるとは言い難かった。浪費癖もあったため、このアルフェンド伯爵家は貧乏な伯爵家となってしまったのだ」
「……そのような人にどうして任せてしまったのですか?」
「私の立場がなかったからだ。一族、いや一族以外からも私がアルフェンド伯爵家の当主として振る舞うことに反感を買っていた。だから、任せるしかなかったのだ」
お母様のことは、私もよく知っている。派手好きで、少々気性が荒し人。それが私が彼女に抱いていた印象だった。
ただ、それは妾の子である私の偏見が入っていると思っていた。悪い印象に引っ張られている部分があると考えていたのだ。
だが、それはそこまで間違った評価ではなかったらしい。私をここに閉じ込めた彼女は、貴族として優秀という訳ではなかったようだ。
「状況が厳しくなるにつれて、妻はお前を排除することを考え始めた。元々、血を重視する貴族としての理念がなければ、妻はお前を追い出していたはずだ。なりふり構っている状況ではなくなった以上、こうなることは目に見えていた」
「そうですか……」
お父様が言っていることは、すぐに理解できた。
当然のことながら、お母様は私のことを快く思っていない。いつかこうなるかもしれないとは、何度か考えていたことだ。
「それで、私はいつ出て行けばいいのでしょうか?」
「妻はすぐにでもと望んでいる」
「それなら、すぐに出て行きます」
この伯爵家にいれば、私は生きていくことはできる。最低限の生活は、保障されていたからだ。
だが、自由のない今の生活は、私にとって苦しいものだった。そこから解放されるなら、この先に辛いことが待ち受けているとしても、我慢することができるような気がする。
「そんなに簡単なことではないぞ? ここから出て行き生きていくことは」
「それなら、お父様が助けてくださるのですか?」
「何?」
「あなたはいつも私のことを心配する振りをする。でも、結局は何もしようとしない。今回もそれは同じなのでしょう?」
「それは……」
私の言葉に対するお父様の返答は、とても弱々しい。彼はいつもそうだ。お母様の顔色を窺いつつも、私に嫌われたくないという気持ちも持っている。そんな中途半端な人なのだ。
全てを捨てて、私を助けてくれる。そんな希望を抱いたこともあったが、それは小さな頃に打ち砕かれた。それをもう悲しいとは思わない。
私は、これから一人で生きていくしかないのだ。私には、それしか道はないのである。
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