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「……さて、これからお話しすることは、あなたにとってはそれなりに辛い話になると思います。ですから、どうか覚悟を決めてください」
「覚悟、ですか……はい、わかりました」
「それでは、話を始めましょう」
ゼルーグ殿下の言っているように、私はしっかりと覚悟を決めておかなければならない。
私は、母親とお父様とが浮気した結果できた子供である。その過程が明るい訳はない。
それは理解している。本で読んだ知識でしかないが、そこに男女のドロドロとしたあれこれがあることは想像できない訳ではない。
それでも、私は聞きたいと思っている。私がどうして生まれて、どうしてここにいるのかを私は知りたいのだ。
「あなたのお母上……エムティアは、貧しい家に生まれたそうです。平民の農家の出身だったようですね」
「農家の……」
「ですが、彼女はその時のことを不幸せだとは思っていなかったようです。家族皆で穏やかに暮らすその生活は、それでも幸せだったとそう言っていました」
「そうですか……」
ゼルーグ殿下の説明を聞きながら、私はある事実を再確認していた。
私は、母親の名前すら知らなかったのである。自分を生んでくれた人の名前も知らないなんて、なんて情けない話だろうか。
同時に悲しかったのは、私自身が今までそれを知りたいとすら思っていなかったということだ。私は、どうして自分の母親についてもっと思いを馳せてこなかったのだろうか。
「しかし、その生活は長くは続かなかったそうです。流行り病で、家族が亡くなってしまったそうです。それに不作が続き、農家としても立ち行かなくなったらしく、かなり苦境に立たされてしまったらしいのです」
「そんな……」
母が幸せから一転して不幸になったと聞いて、私の心の奥には鋭い痛みが走ってきた。
それは初めて覚える痛みだ。息が苦しい。自分のことではないというのに、どうしてこんなにも苦しいのだろうか。
「そこで彼女は、町に出て色々と仕事をしたそうです。その仕事の中で、あなたのお父上……アルフェンド伯爵と出会ったようです」
「お父様と……」
「端的に言いますと、そこで二人は関係を持ったそうです。アルフェンド伯爵は、あなたのお母上に恋心を抱いたらしく、熱烈にアプローチしたようですね」
「お父様から、だったんですね……」
「ええ……あなたのお母上は、乗り気という訳ではなかったようです。無論、それが不倫にあたることは理解していたそうですからね」
「それは、そうですよね……」
母とお父様の出会い。それがなければ私はここにいなかった。
ただ、その出会いはやはり明るいものではなかったようだ。妻がいる身でありながら、母に恋をしたお父様は、愚かであるとしか言いようがないだろう。
そして、母も愚かだったのかもしれない。その先に明るい結末が待っていないとわかっていながら、結局もお父様と結ばれたのだから。
私がここにいること。それこそが、二人の罪の証だ。私にとってそれは、残酷な話ではあるのだが。
「覚悟、ですか……はい、わかりました」
「それでは、話を始めましょう」
ゼルーグ殿下の言っているように、私はしっかりと覚悟を決めておかなければならない。
私は、母親とお父様とが浮気した結果できた子供である。その過程が明るい訳はない。
それは理解している。本で読んだ知識でしかないが、そこに男女のドロドロとしたあれこれがあることは想像できない訳ではない。
それでも、私は聞きたいと思っている。私がどうして生まれて、どうしてここにいるのかを私は知りたいのだ。
「あなたのお母上……エムティアは、貧しい家に生まれたそうです。平民の農家の出身だったようですね」
「農家の……」
「ですが、彼女はその時のことを不幸せだとは思っていなかったようです。家族皆で穏やかに暮らすその生活は、それでも幸せだったとそう言っていました」
「そうですか……」
ゼルーグ殿下の説明を聞きながら、私はある事実を再確認していた。
私は、母親の名前すら知らなかったのである。自分を生んでくれた人の名前も知らないなんて、なんて情けない話だろうか。
同時に悲しかったのは、私自身が今までそれを知りたいとすら思っていなかったということだ。私は、どうして自分の母親についてもっと思いを馳せてこなかったのだろうか。
「しかし、その生活は長くは続かなかったそうです。流行り病で、家族が亡くなってしまったそうです。それに不作が続き、農家としても立ち行かなくなったらしく、かなり苦境に立たされてしまったらしいのです」
「そんな……」
母が幸せから一転して不幸になったと聞いて、私の心の奥には鋭い痛みが走ってきた。
それは初めて覚える痛みだ。息が苦しい。自分のことではないというのに、どうしてこんなにも苦しいのだろうか。
「そこで彼女は、町に出て色々と仕事をしたそうです。その仕事の中で、あなたのお父上……アルフェンド伯爵と出会ったようです」
「お父様と……」
「端的に言いますと、そこで二人は関係を持ったそうです。アルフェンド伯爵は、あなたのお母上に恋心を抱いたらしく、熱烈にアプローチしたようですね」
「お父様から、だったんですね……」
「ええ……あなたのお母上は、乗り気という訳ではなかったようです。無論、それが不倫にあたることは理解していたそうですからね」
「それは、そうですよね……」
母とお父様の出会い。それがなければ私はここにいなかった。
ただ、その出会いはやはり明るいものではなかったようだ。妻がいる身でありながら、母に恋をしたお父様は、愚かであるとしか言いようがないだろう。
そして、母も愚かだったのかもしれない。その先に明るい結末が待っていないとわかっていながら、結局もお父様と結ばれたのだから。
私がここにいること。それこそが、二人の罪の証だ。私にとってそれは、残酷な話ではあるのだが。
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