貧乏伯爵家の妾腹の子として生まれましたが、何故か王子殿下の妻に選ばれました。

木山楽斗

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「あなたのお母上は、結果的にアルフェンド伯爵の要求を受け入れたそうです。金銭的に困っていた彼女にとって、伯爵の愛人になるというのは利益になると判断したようです」
「そうですか……」

 母にとって、お父様との関係はお金のために結ばれたものだった。その事実を聞いて、少し気分が沈んでしまう。
 だが、落ち込んでいる場合ではない。私は、全てを聞かなければならないのだ。

「それで……私が生まれたんですか?」
「ええ、そのようですね」

 二人が関係を持って私が生まれた。それは最初からわかっていたことである。
 問題となるのは、その後のことだろう。私が生まれた結果何が起こったのか。そこが最も聞くべき部分だ。
 私は、一度深呼吸をする。今から聞くことは、私にとって辛いものかもしれない。いや、確実に辛いだろう。私は現在まで辛い日々を送っていたのだから。

「私が生まれて、母と父はどうなったんですか?」
「あなたをその身に宿したことを知った彼女は、アルフェンド伯爵の元から姿を消すことにしたようです」
「姿を消す?」
「貴族の隠し子、その境遇がよくないものと理解していたのでしょう。あなたのことは一人で育てると決意し、伯爵の元を去ったのです。それが苦しい生活になると、わかっていながらも……」

 ゼルーグ殿下の言葉に、私は少し安心していた。
 母が、私のことを守ろうとしてくれた。その事実は、私にとって嬉しいものだったのだ。
 最悪、母は私のことを捨てたと考えていた。そうでなかったということが、思っていたよりも嬉しい。今まで母のことなんて考えたことがなかったというのに。

「……大丈夫ですか?」
「はい……すみません。思っていたよりも、少し心に来てしまって……」
「いえ、お気になさらず」

 ゼルーグ殿下は、それから何も言葉を発さなくなった。それは恐らく、私が落ち着くのを待っているからだろう。
 今はそれに甘えることにした方がいいかもしれない。今は喜べているが、続きを聞いたら私はまた悲しみを覚えることになるはずだ。
 なぜなら、私が今ここにいるという事実が、母と私の平穏な暮らしが崩れ去ったことの何よりの証拠だからである。そこには、間違いなく辛いことがあった。だが、それを私は聞かなければならない。

「ゼルーグ殿下、それでその後に何があったんですか? 私は……どうして、このアルフェンド伯爵家に閉じ込められてしまったのですか?」
「……アルフェンド伯爵家が、あなたとお母上の平穏な生活を許さなかったのです。貴族としてのプライドが、あなたを野放しにしておくことに耐えられなかった」
「貴族としてのプライド……」

 やはり、私と母の生活はアルフェンド伯爵家によって壊されてしまったようだ。
 わかっていたことだが、それは辛い。もしも伯爵家が違う選択をしていれば、私はまったく違った人生を歩んでいただろう。
 母との生活。それは豊ではなかったかもしれないが、今よりももっと幸せな生活だったのではないかとそう思ってしまうのだ。
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