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11.子爵家の人々

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 パステルト子爵家で昼食をいただくことになった私は、夫妻以外の面々と顔を合わせることになった。
 夫妻には息子が二人おり、それぞれラディオルとレフォルドという名前であるそうだ。
 その二人のことは、知らないという訳ではない。舞踏会とか、そういった場で顔を見たことがあるような気がする。いや、あまり自信はないのだが。

 兄であるラディオル様は既に結婚しているらしく、その奥様のマルリアさんもいた。
 彼女も夫妻に負けず劣らずニコニコしており、義理の娘であるというのに、何故か兄弟よりも夫妻に似ている。
 彼女とも会ったことはないと思うのだが、やはり自信はない。まあ面と向かって話したことはないだろうし、ここは初めましてで多分いいだろう。

「初めまして、ラディオル様、レフォルド様、マルリア様。イルファリアと申します」
「イルファリア嬢、こんにちは。すまいな、父上や母上が無理を言って」
「いえ、無理なんてことは」

 ラディオル様は、私のことを気遣うような言葉をかけてくれた。家族の食事に同席する気まずさというものを、理解しているのだろう。
 もしかしたら、こういうことはよくあったのかもしれない。あの夫妻のことだ。いつも心からの厚意で、人をもてなしているのではないだろうか。

「まあ、私も昔同じようなことがあったけど、あまり気負わないでもいいからね。お義父様もお義母様も、驚くくらいに怒らない人達だから」
「そうなのですか……まあ、そうなのでしょうね」
「やっぱり、わかるかしら?」
「ええ、なんとなく、ですが……」

 私の言葉に、マルリアさんは苦笑いを浮かべていた。
 嫁入りした彼女は、あの夫妻に恐らく戸惑っただろう。その光景は想像できる。

「もちろん、僕達もイルファリア嬢のことを歓迎していますからね」
「ありがとうございます、レフォルド様」

 レフォルド様も、私に対して笑顔を見せてくれた。
 三人も歓迎してくれるということは、よくわかった。なんというか、この一家は皆いい人なのだろう。それがこれまでの態度から伝わってくる。

「さて、もうすぐ料理が運ばれてきますから、自己紹介はここまでにしておきましょう。さあ、イルファリア嬢、席にどうぞ」
「すみません、レフォルド様」

 レフォルド様が椅子を引いてくれたので、私はそこに座った。
 なんというか、肩の荷が少し下りたような気がする。食事が始まる前に、三人と話せて良かったと思う。
 私の目の前では豪勢な食事が運び込まれている。せっかくなので、その食事を楽しむとしようか。
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