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15.仕事の提案

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「なるほど、そういうことでしたか」
「ええ……」

 パステルト子爵家において、私が最も親しくなったなったのは、レフォルド様だった。
 年が近いこともあるだろうか。なんとなく話が合うのだ。
 という訳で、まずは彼に連絡を取ってみた。その結果、私はパステルト子爵家に招かれたのである。

 そこで私は、今回のいきさつをある程度彼に話した。
 今は両親の支えがあるが、妹とは仲が悪いため将来が不安。そんな感じで、最低限の情報だけ伝えておく方が、話が早いと思ったのだ。

「僕は兄上とは仲が良いですから、そういった事情はまったく考えていませんでした。すみませんね、無神経で……」
「いいえ、そんなことはありませんよ。兄弟の仲が良いのは幸いなことです。特に貴族は後継者争いなどもあり得ますからね」
「そうですね……」

 レフォルド様は、兄であるラディオル様とかなり仲が良さそうだった。
 それは私から見れば、羨ましいことである。妹があんな風だったため、私はこんなことになっている訳だし。

「それで仕事のことですが、実の所イルファリア嬢に勧めたい仕事があるのです」
「え? そうなのですか?」

 そこでレフォルド様は、意外なことを言ってきた。
 私に勧めたい仕事、そのようなものがいきなり見つかるなんてことは、予想していなかったことである。もう少し時間とか、能力とかが必要だと思っていたのだが。

「パステルト子爵家の領地には学校があります。それは、子供達に教育をするための場所です。イルファリア嬢には、そこで教師をしてもらいたいと思っています」
「教師、ですか?」
「ええ、イルファリア嬢は、伯爵家で教育を受けていた訳でしょう? 知識という側面において、あなたは優秀であるといえる。もちろん、確かめる必要はあると思いますが」

 レフォルド様からの提案に、私は考えることになった。
 伯爵家の教育は当然のことながら優れたものだった。故に恐らく、知識の面については問題はないだろう。
 しかし、教師というものはそれだけではない。それが私に務まるのかは、正直不安である。

「……わかりました。そういうことなら、どうかそれで話を進めていただけますか?」
「そう言っていただけると、こちらとしても助かります」

 少し考えた結果、私はその話を受けることにした。
 結局の所、何をするにしても不安はつきものだ。その不安で動かないなんて、本末転倒というものである。
 こうして私は、新たな道へと進むことになったのだった。
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