家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。

木山楽斗

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1.目覚めし記憶

 私は、ゆっくりと目を覚ます。
 今まで私は夢を見ていた。その夢の中で、私は今とまったく異なる姿をしており、周りの様子も随分と異なっていた。
 あの夢は、なんだったのだろうか。そんな疑問を抱きながら、私は目を擦る。
 どうやら、まだ夜中のようだ。辺りは真っ暗で、何も見えない。

「えっと……明かりをつけないと」

 私は、ベッドの周りを探ってみる。
 そこにあるはずのリモコンを見つけたかったのだ。
 だが、そこにはそんなものはない。

「リモコン?」

 そこで、私は気付いた。
 リモコンなどというものが、ここにはないということに。
 何かがおかしかった。私は一体、何を探していたのだろうか。

「明かりは……こう」

 私は、魔法によって部屋の明かりをつける。
 それはいつも通りのことだ。それなのに、私はどうして何かを探していたのだろうか。

「……あれ?」

 明かりをつけた私は、辺りの様子に少し違和感を覚えた。
 しかし、ここは紛れもなく私の部屋だ。いつも過ごしているこの部屋の見た目は、特に変わっていない。

 それによって、私は気がついた。
 私は、あの夢の中の記憶によって混乱しているのだと。

「記憶……?」

 そんなことを思いながら、私はまた新たなことに気づいた。
 私はあの夢を記憶だと思っている。それは考えてみれば、おかしな話だ。

 私の名前は、エルミナ・サディード。サディード家の次女で、公爵令嬢である。
 それは間違いない。鏡で見ても、私はいつも通りの顔だ。

 しかし、私は知っている。この顔と名前の人物が、夢の中でどこにいたのかを。
 いや、正確には、私の少し成長した姿といった所だろうか。

 彼女は、パソコンという機械の中にいた。
 エルミナは、乙女ゲームというものの登場人物であり、現実には存在しない存在だったのである。

「リモコン、パソコン……うん、そんなものはここにはない」

 私は、混乱していた。
 ここはどこで、私は何者なのか。そんな考えが、頭の中をぐるぐると回っている。

「これは夢……ううん、そんな訳ないよね。どう考えてもこれは現実……さっきのが夢で、でもあれは記憶で……そう、あれは間違いなく私の記憶。私は、こことは違う部屋にいた。こことは、違う世界にいた?」

 だんだんと意識がはっきりとしてきて、私は頭の中を整理できるようになっていた。
 私はエルミナである。そして、先程の夢は私の記憶だ。一つ一つ整理していくと、見えてくるものがある。

「うん、間違いない……あれは私の前世の記憶だ。私は、エルミナとして生まれ変わったんだ」

 私は、ゆっくりとそんな結論を出した。
 あれは、前世の私の記憶だ。私は、エルミナとして生まれ変わったのである。
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