家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。

木山楽斗

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21.おかしな様子

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 イルフェンお兄様は、再度婚約者のリフェルナ様に会いに行った。先日の悪印象を塗り替えるためである。
 第一印象というものは、とても大切なものだ。そこで失敗してしまった以上、それを取り返すのはそれなりに難しいことだろう。
 だが、お兄様は基本的には根気強い人だ。決して諦めることなく、リフェルナ様からの印象を覆すだろう。

「……」
「お兄様、大丈夫ですか?」
「あ、ああ……」

 そう思っていた私とウェリーナお姉様の前には、魂が抜けたようなお兄様がいる。
 リフェルナ様の元から帰って次の日、成果を聞こうと呼び出したらこの様だ。
 もしかしたら、聞く意味はないかもしれない。この反応は、どう見ても失敗だったという反応だろう。

「どうやら、手ひどくやられてしまったようですね……」
「ええ、そうみたいね……」
「む?」

 しかし、私とお姉様の会話にお兄様は不思議そうな顔をしていた。
 その反応は、少し意外である。てっきり、駄目だったのだと思っていが、そういう訳ではないのかもしれない。

「お兄様、もしかしてエルミナの言っているように悲惨な結果ではなかったのですか?」
「ああ、別にそういう訳ではないのだ」
「なら、どうしてそのような態度なのですか?」
「いや……いまいち釈然としていないというか、なんというか……」

 どうやらお兄様は、失敗したという訳ではないようだ。
 だが、それにしては歯切れが悪い。恐らく何かあったのだろう。
 ただ、失敗ではない何かとはなんなのだろうか。あまり、予想ができない。

「何があったのですか?」
「先日の一件で、俺はリフェルナ嬢から悪印象をもたれていると思っていた。だが、実際の所そういう訳ではなかったようなのだ」
「え?」

 お兄様の言葉に、私とお姉様は顔を見合わせた。
 そもそもの前提が違っていた。それは、驚くべきことである。

「あんなことを言われたのに、悪印象ではなかったのですか?」
「お兄様の口振りからして、とても引いているような感じだったと思うのですが……」
「あの時の彼女は、確かに暗い顔をしていた。だが、それは違ったのだ。彼女は引いていた訳ではなく、羨ましがっていたそうなのだ」
「羨ましがっていた?」

 お兄様の言っていることに、私は首を傾げた。
 なんというか、状況がよくわからない。一体、どういうことなのだろうか。

「彼女は末っ子でね……兄や姉からかなり可愛がられていたようだ。それに幸せを感じつつも、ある思いを抱いていた。要するに、弟や妹が欲しかったということだ」
「なるほど、それで……」
「妹の話を楽しそうにするお兄様を羨ましがっていたと……」

 リフェルナ様は、自分も妹が欲しいという思いを抱きながらお兄様の話を聞いていた。
 その結果、絶妙な表情であんなことを言ってしまったということが、今回の件の真相であるらしい。
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