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12.なれなかった者

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「あなたが聖女だなんて、私は認めていません」

 王城の廊下を歩いていると、身なりがいい女性に呼び止められた。
 その女性の名前は、ウェリーナ・ラルバエル。ラルバエル公爵家の長女で、私と聖女の座を争った魔法使いである。

 彼女は、選考の結果に納得していないようだ。
 聖女に相応しいのは自分である。そのように思っているのだろうか。

 しかし実際の所、私と彼女との間にはかなりの差がある。実力的に言えば、私の方が上だ。それは間違いない。
 故に彼女は、その地位を考慮しているのだろう。公爵令嬢である彼女の方が地位を得るのに相応しい。そう言われてしまったら、私としては反論の余地はない。

「国王様は、私にとって伯父にあたることはあなたもご存知でしょう。私は彼に、今回の決定について抗議いたします」
「……抗議、ですか」
「私が働きかければ、様々な人が動いてくれます。私にはそれだけの力がある」

 ウェリーナ様は、私のことを睨みつけてきた。
 私としては理不尽でしかないが、彼女はかなり怒っているらしい。

 というか、そもそもの話ではあるが、それを私に話す意味があるのだろうか。
 そういったことができるというなら、私に話さず実行しておけばいいことだ。それ所か、選考の時点で働きかければ良かったのではないだろうか。

「ただ、あなたに猶予を与えてあげましょう。今すぐ聖女の地位を下りれば、寛大な措置をしてあげましょう」
「それは……」
「言っておきますが、あなたの味方なんていませんよ。あなたは一介の平民、そんなあなたに味方する殊勝な方なんているはずがありません」

 ウェリーナ様が言っていることの全てが真実であるという訳では、恐らくないだろう。少なくとも、国王様は私を聖女として一度認めている。その結果が、何よりの証拠だ。
 ただ、彼女が本当に働きかけ始めたら厄介である。聖女に就任して早々にこんなことになるなんて、私も中々に不運なものだ。

「……それなら、俺が聖女の味方をするとしよう」
「え?」

 そんな風に私が辟易としていると、その場に一人の男性がやって来た。
 その男性は、メレギア・ラルバルト。このラルバルト王国の第一王子である。

「なっ、あなたはっ……!」
「ウェリーナ、随分と勝手な真似をしているようだな……」
「そ、それは……」
「言っておくが、お前の好きにはさせん。この俺の目が黒い内は、聖女アルティナには絶対に手出しはさせん」
「くっ……」

 突然現れたメレギア殿下に、ウェリーナ様はかなり驚いている様子だった。
 彼の言葉に、彼女は明らかに怯んでいる。この場においてどちらが優位なのかは、それでよくわかった。どうやら私には、心強い味方がついてくれるらしい。
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