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7.使用人達の見送り
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「まさかこのようなことになるなんて、思っていませんでした」
「そうでしょうね……」
「あまり主人のことを下げるようなことは言いたくありませんが、アンドラ様の判断は愚の骨頂と言わざるを得ません」
私の目の前には、ヴォルガー伯爵家に仕える使用人達が集まっていた。
それは私の見送りである。その中でも重鎮であるダグラスさんは、アンドラ様に対してなんとも辛辣な評価を下していた。
ただそれに異論を唱えるものはいないだろう。私と離婚することは、ヴォルガー伯爵家にとって良いこととは言い難いからだ。
「これ以上、彼に付き合うことはできません。それは我々の総意です」
「……しかし、皆さんにも生活があるでしょう」
「はい。ですが私達も、誇りというものはあるのです。先代の代から、思う所はありました。これ以上ここにいると、人として本当に腐ってしまい兼ねません。それを私達は、許容することができないのです」
ダグラスさんの言葉に、周囲の使用人達は皆頷いていた。
使用人としての誇り、それは彼らにとって大切なものなのだろう。それが表情から伝わってきた。
悪しき主人に仕えることは、彼らにとってきっとその誇りに反することなのだ。アンドラ様程になると、流石に許容できないといった所か。
「ダグラスさん、そういうことなら退職後はラバンス伯爵家を頼ってください。私にもそれなりに伝手はありますから」
「……ありがとうございます」
私の言葉に、ダグラスさんは少し躊躇した後頷いた。
彼はそのような気遣いは不要だと、言おうとしていたのかもしれない。ただそれは飲み込んだのだろう。ここにいる大勢の使用人のこれからのために。
そういったことができるダグラスさんは、やはりなんとも立派な人だと思う。許されるなら、ランバス伯爵家で雇いたいくらいだ。
「しかしラバンス伯爵家は大丈夫なのですか? ヴォルガー伯爵家との繋がりが途切れることは、大きなことだと思いますが……」
「その辺りについては、大丈夫だと思います。お兄様の婚約が決まりましたから。端的に言ってしまえば、後ろ盾ができたのです」
「なるほど、それは本当に幸いなことでしたね」
「ええ、まあそれでも色々と苦しいことは待っているでしょうが……」
「いつでもお手伝いします」
ダグラスさんは、ラバンス伯爵家のこれからについて心配してくれた。
それは確かに、私も考えていたことではある。ラフォードお兄様のソフィア様との婚約によって、それなりに基盤は固まったと思っているが、実際の所どうなのだろうか。
とにかくラバンス伯爵家の屋敷に戻って、お兄様と相談しなければならない。急いで帰るとしよう。
「ありがとうございます、ダグラスさん。それでは、私はこれで……」
「お気をつけて……」
ダグラスさん達は、私に対して深く礼をしてきた。
それを背にして、私は馬車に乗り込む。これで私のヴォルガー伯爵夫人としての生活は、終わった訳である。
「そうでしょうね……」
「あまり主人のことを下げるようなことは言いたくありませんが、アンドラ様の判断は愚の骨頂と言わざるを得ません」
私の目の前には、ヴォルガー伯爵家に仕える使用人達が集まっていた。
それは私の見送りである。その中でも重鎮であるダグラスさんは、アンドラ様に対してなんとも辛辣な評価を下していた。
ただそれに異論を唱えるものはいないだろう。私と離婚することは、ヴォルガー伯爵家にとって良いこととは言い難いからだ。
「これ以上、彼に付き合うことはできません。それは我々の総意です」
「……しかし、皆さんにも生活があるでしょう」
「はい。ですが私達も、誇りというものはあるのです。先代の代から、思う所はありました。これ以上ここにいると、人として本当に腐ってしまい兼ねません。それを私達は、許容することができないのです」
ダグラスさんの言葉に、周囲の使用人達は皆頷いていた。
使用人としての誇り、それは彼らにとって大切なものなのだろう。それが表情から伝わってきた。
悪しき主人に仕えることは、彼らにとってきっとその誇りに反することなのだ。アンドラ様程になると、流石に許容できないといった所か。
「ダグラスさん、そういうことなら退職後はラバンス伯爵家を頼ってください。私にもそれなりに伝手はありますから」
「……ありがとうございます」
私の言葉に、ダグラスさんは少し躊躇した後頷いた。
彼はそのような気遣いは不要だと、言おうとしていたのかもしれない。ただそれは飲み込んだのだろう。ここにいる大勢の使用人のこれからのために。
そういったことができるダグラスさんは、やはりなんとも立派な人だと思う。許されるなら、ランバス伯爵家で雇いたいくらいだ。
「しかしラバンス伯爵家は大丈夫なのですか? ヴォルガー伯爵家との繋がりが途切れることは、大きなことだと思いますが……」
「その辺りについては、大丈夫だと思います。お兄様の婚約が決まりましたから。端的に言ってしまえば、後ろ盾ができたのです」
「なるほど、それは本当に幸いなことでしたね」
「ええ、まあそれでも色々と苦しいことは待っているでしょうが……」
「いつでもお手伝いします」
ダグラスさんは、ラバンス伯爵家のこれからについて心配してくれた。
それは確かに、私も考えていたことではある。ラフォードお兄様のソフィア様との婚約によって、それなりに基盤は固まったと思っているが、実際の所どうなのだろうか。
とにかくラバンス伯爵家の屋敷に戻って、お兄様と相談しなければならない。急いで帰るとしよう。
「ありがとうございます、ダグラスさん。それでは、私はこれで……」
「お気をつけて……」
ダグラスさん達は、私に対して深く礼をしてきた。
それを背にして、私は馬車に乗り込む。これで私のヴォルガー伯爵夫人としての生活は、終わった訳である。
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