浮気相手と心中した夫のことを美談なんかで片付けないでください。

木山楽斗

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11.とある記事

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 ベンテス・バルフェルドは、舞台女優ロレイナと恋に落ちた。
 とある記者によって出された記事によって、その事実は瞬く間に世間に知れ渡ったである。
 その記事を出した記者は、セフィーヌというらしい。彼女の記事はなんというか、少々情熱的だ。

「そもそもこれは……記事なのかしら?」
「どうでしょうか? 事実が記されている訳では、ないように思えますが……」

 記事の内容は、ベンテス様とロレイナの恋愛が事細かに記されていた。
 それは明らかに、想像と憶測で書かれたものであるだろう。本人達でもなければ、これ程詳細な記事など書ける訳がない。

「私なんか、まるで悪者ね……」
「僕もそんな所です。父上の行いを咎めるような記事ではないようですね」
「むしろ、ベンテス様の行いを称賛しているわ。何故、こんな記事を……」

 セフィーヌの記事は、読めば読むほど頭が痛くなるものだった。
 どうやら彼女は、記事の真偽などはどうでも良いと思うような記者であるらしい。話題になれば良いなどと考えているのだろう。それが読み取れた。
 もしかしたら、ベンテス様とロレイナの駆け落ちの情報すら、彼女は掴んでいないかもしれない。同じ時期に失踪したので、適当に記事を書いたのではないだろうか。

「これはシスティア様の名誉を傷つける記事です。このような記事を許すべきではありません」「ええ、抗議するべきでしょうね……ただ厄介なのは、この記事の全てが事実とは異なる、と言う訳ではないことね」

 このような記事を出されたら、バルフェルド伯爵家としては溜まったものではない。後続が出ないようにするためにも、記者に対して圧力をかけておく必要があるだろう。
 しかし事実無根なら問題はないのだが、この記事には確かな真実が含まれている。これがなんとも厄介だ。

「一度記事が出てしまった以上、噂が流れることは避けられませんよね……」
「ええ、そうね。でも、それはある程度覚悟していたことよ。簡単に隠せるようなことではないもの」
「そうですね。覚悟はしていました。でも、やっぱり厳しいものですね。家の醜態が晒されるということは……」
「その内慣れるわよ」

 弱気になるバルディスの前で、私は強気に振る舞った。
 ただ実の所、そんなに余裕がある訳ではない。私の方も、結構焦っている。

 今回の件の対応によっては、バルフェルド伯爵家が揺れることもあるかもしれない。再び正念場といった所だろうか。
 しかし前に進んでいくしかない。私がバルフェルド伯爵家を守ってみせるとしよう。
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