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39.腹の探り合い
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私は、夕方もトゥーリンの定食屋で働いていた。
ナーゼスさんが言っていた通り、昼間に比べてお客さんは落ち着いている。この店は、昼間がメインであるようだ。
「……お嬢ちゃん、少しいいかい?」
「あ、はい。なんですか?」
そんな定食屋に、とあるお客さんが来ていた。それは、昼間も来ていたドルギアさんである。
なんと彼は、夕食もここに来たのだ。いくら常連だからといって、昼も夜も来るというのは、流石に珍しいのではないだろうか。
しかも、彼は昼とまったく同じ料理を頼んでいる。ナーゼスさんの料理は確かにおいしいが、同じ料理というのはどうなのだろうか。
「そういえば、お嬢ちゃんにまだ名乗っていなかったと思ってな」
「あ、実はそれについては、ナーゼスさんからもう教えてもらいました」
「なんだ、そうなのか……まあ、でも、一応自己紹介させてもらっておくか。俺は、ドルギア。騎士をやっている」
「騎士?」
ドルギアさんの自己紹介に、私は少し驚くことになった。騎士、それは少しだけ気になる職業だったからだ。
「おっと、それは聞いていなかったのか? ナーゼスの奴、随分と中途半端な紹介をしたんだな」
「話の流れで、名前だけ聞いたんです」
「まあ、そういうこともあるか」
私の言葉に、ドルギアさんは口の端を歪めた。その笑みは、なんだか少し怖い。
気のせいかもしれないが、彼は私に探りを入れてきているような気がする。今の彼の雰囲気が、そんな感じなのだ。
自慢できることではないが、こういう感覚は今まで何度も経験している。間違っていたことの方が少ないくらいだ。
そのため、私は少しだけ彼を揺さぶってみることにした。間違っていてもそこまで困ることではないので、そうした方がいいと思ったのである。
「ドルギアさんは、この町を守る仕事をされているんですね?」
「あ、いや、俺はこの町の出身ではあるが、王都で働いているんだ」
「そうなんですか。それじゃあ、どうしてこの町に?」
「まあ、故郷でもあるし、この店の味がどうして味わいたくてな。王都からも近いから、こうやって帰ってくることも多いんだ」
「なるほど……そういえば、昼間にいた方は、ご一緒じゃないんですね?」
「うん? ああ、あいつは俺の同僚なんだが、もう王都に帰ったよ」
「そうでしたか」
会話をしながら、私は確信した。やはり、彼は私のことを探っているのだと。
どうしてそんなことをするのか。それは理解できる。恐らく、私がズウェール王国の聖女だったからだろう。
私は、少し考える。彼にどう対応するべきかを。
ナーゼスさんが言っていた通り、昼間に比べてお客さんは落ち着いている。この店は、昼間がメインであるようだ。
「……お嬢ちゃん、少しいいかい?」
「あ、はい。なんですか?」
そんな定食屋に、とあるお客さんが来ていた。それは、昼間も来ていたドルギアさんである。
なんと彼は、夕食もここに来たのだ。いくら常連だからといって、昼も夜も来るというのは、流石に珍しいのではないだろうか。
しかも、彼は昼とまったく同じ料理を頼んでいる。ナーゼスさんの料理は確かにおいしいが、同じ料理というのはどうなのだろうか。
「そういえば、お嬢ちゃんにまだ名乗っていなかったと思ってな」
「あ、実はそれについては、ナーゼスさんからもう教えてもらいました」
「なんだ、そうなのか……まあ、でも、一応自己紹介させてもらっておくか。俺は、ドルギア。騎士をやっている」
「騎士?」
ドルギアさんの自己紹介に、私は少し驚くことになった。騎士、それは少しだけ気になる職業だったからだ。
「おっと、それは聞いていなかったのか? ナーゼスの奴、随分と中途半端な紹介をしたんだな」
「話の流れで、名前だけ聞いたんです」
「まあ、そういうこともあるか」
私の言葉に、ドルギアさんは口の端を歪めた。その笑みは、なんだか少し怖い。
気のせいかもしれないが、彼は私に探りを入れてきているような気がする。今の彼の雰囲気が、そんな感じなのだ。
自慢できることではないが、こういう感覚は今まで何度も経験している。間違っていたことの方が少ないくらいだ。
そのため、私は少しだけ彼を揺さぶってみることにした。間違っていてもそこまで困ることではないので、そうした方がいいと思ったのである。
「ドルギアさんは、この町を守る仕事をされているんですね?」
「あ、いや、俺はこの町の出身ではあるが、王都で働いているんだ」
「そうなんですか。それじゃあ、どうしてこの町に?」
「まあ、故郷でもあるし、この店の味がどうして味わいたくてな。王都からも近いから、こうやって帰ってくることも多いんだ」
「なるほど……そういえば、昼間にいた方は、ご一緒じゃないんですね?」
「うん? ああ、あいつは俺の同僚なんだが、もう王都に帰ったよ」
「そうでしたか」
会話をしながら、私は確信した。やはり、彼は私のことを探っているのだと。
どうしてそんなことをするのか。それは理解できる。恐らく、私がズウェール王国の聖女だったからだろう。
私は、少し考える。彼にどう対応するべきかを。
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