「君の代わりはいくらでもいる」と言われたので、聖女をやめました。それで国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗

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117.王子達の最期

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 私は、研究所から出て来て、海の方に向かっていた。
 とりあえず、そこなら人気はない。森の方に行く選択肢もあったが、草木に囲まれているそちらで爆発が起これば、私が木々の下敷きになる可能性がある。そのため、海岸の方がいいと思ったのだ。

「あれは……騎士団の船か。あそこからも、離れないと駄目だよね」

 海岸には、騎士団の船があった。そういえば、その存在を忘れていた。あの近くからも離れなければ、帰れなくなってしまう。

「ルルメア!」
「逃がさんぞ!」
「お前だけは、この手で八つ裂きにしてやる!」

 私の後ろからは、グーゼス様達が追いかけてきていた。
 彼らの走る速度は早い。うかうかしていると、追いつかれてしまう。

「迷っている暇もない……」

 私は、後ろを振り返ることなく走り出す。
 私の役目は、とにかく人気のない場所に行くことだ。後は、ルミーネが彼らを爆発させてくれる。

「とにかく逃げない……と!」

 私は、自らの足に魔力を集中させて、前に飛ぶ。これで、それなりに距離は稼げるはずである。

『……ルルメア様、聞こえますか?』
「その声は……ルミーネ?」
『ええ、私です……これから、グーゼス様を爆発させますから、そのご連絡をと思いまして』
「わかった。お願い」

 私の頭の中に、ルミーネの声が響いてきた。これは恐らく、念話での類だろう。頭の中に、直接言葉を響かせることで、遠くからでも会話できるのだ。
 どうやら、彼女はグーゼス様を爆発させるつもりらしい。ここは、一度大きく距離をとるべきだろう。

「くっ……!」
「ルルメア! 逃げ……」

 私が大きく飛び出した瞬間、追いかけて来るグーゼス様の声が途切れた。
 次の瞬間、私の耳に轟音が届いてくる。それは、グーゼス様が爆発する音だ。
 最初に音が聞こえてきてから、その音は連鎖して響いてくる。どんどんと彼らが爆発していっているのだろう。
 その余波を受けて、私は吹き飛ばされる。だが、すぐに体勢は立て直せた。距離を取っていたため、なんとかなったのだ。

「うぐっ……でも」

 私は、周囲の様子を確認した。
 すると、私の前方の海岸に砂埃が上がっている。
 それは、恐らくグーゼス様達が爆発した結果だろう。
 見た所、彼らの姿は見当たらない。全員、爆発して、跡形もなく消え去ったのだろう。

「終わった……ううん、まだやることは残っている」

 グーゼス様は、これで全てこの世界から消え去っただろう。こんな形ではあったが、後は彼の安寧を祈るばかりだ。
 しかし、まだ完全に安心することはできない。私には、まだやるべきことが残っているのだ。
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