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第五章:罪の在り処
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「朝早くにすみません。当麻です。心春の
母親の当麻朝子です。実は、刑事さんにお話
したいことが」
名前を耳にした瞬間、体中の血が沸騰する。
手にしていたファイルが、ばさりと足元に
落ちた。話しがあるという母親の声はか細く、
俺は受話音量を上げる。そして直立不動のま
ま、訥々と語り始めた母親に耳を傾けた。
「すみません、ヒカリお爺さん!」
『みちくさ』を飛び出し、そのままの勢い
でヒカリ電気に飛び込んでゆくとカウンター
に頬杖をついてテレビを観ていたヒカリ爺さ
んが目を瞬いた。
「いらっしゃいま……って、あんた、確か
あの時の。どうしたんだね、血相変えて」
名前までは憶えていないらしいお爺さんが、
それでも、僕を見てただならぬ空気を感じた
のか眉を寄せる。僕はカウンターに両手をつ
くとお爺さんの顔を覗き込み、いきなり本題
を突き付けた。
「ちょっと確認したいんですが、この店の
防犯カメラはダミーなんですよね?」
わかりきったことを訊く僕に、お爺さんは
さらに眉を寄せる。
「そうだが、それがどうしたというんだ?」
「だから『みちくさ』のポストも、その隣
にある車庫も、当然、映っていない」
「だからそれは、すまんかったと言っただ
ろうに。映ってないものは、映ってないんだ」
僕の問いに困ったように腕を組み、ヒカリ
爺さんが項垂れる。と、店の自動ドアが開き、
杖にしがみつくようにしてみちくさ爺さんが
入って来た。僕は背後に立つお爺さんを一度
振り返ると、またヒカリ爺さんを覗く。
問題は防犯カメラがダミーか本物かという
ことではなかった。
「じゃあここ最近、そのことを誰かに話し
ませんでしたか?この店のカメラが、ダミー
だということを」
その問いに、「あっ」とヒカリ爺さんが目
を見開く。僕は鼓動が早なるのを感じながら
お爺さんを問い詰めた。
「話したんですね?誰に言ったんですか?」
「そう言えば。その……浅利とかいうあの
営業さんに商店街の防犯が素晴らしいと褒め
られて、つい、調子に乗ってしゃべってしま
ったような気が」
もごもごと奥歯に物が挟まったような物言
いをするヒカリ爺さんに、「なんだとっ!?」
と背後からみちくさ爺さんが声を上げる。
無理もなかった。
防犯カメラがダミーであることをバラして
しまうということは、泥棒に家の鍵が開いて
いることを教えているようなものだからだ。
「まったくっ!ダミーをダミーだと言って
しまったら、何の役にも立たないじゃないか」
「いや、確かに。そう言われればそうだな。
すまん、つい口が勝手に」
目を剥き出して憤慨するみちくさ爺さんに、
ヒカリ爺さんがしゅんとする。
母親の当麻朝子です。実は、刑事さんにお話
したいことが」
名前を耳にした瞬間、体中の血が沸騰する。
手にしていたファイルが、ばさりと足元に
落ちた。話しがあるという母親の声はか細く、
俺は受話音量を上げる。そして直立不動のま
ま、訥々と語り始めた母親に耳を傾けた。
「すみません、ヒカリお爺さん!」
『みちくさ』を飛び出し、そのままの勢い
でヒカリ電気に飛び込んでゆくとカウンター
に頬杖をついてテレビを観ていたヒカリ爺さ
んが目を瞬いた。
「いらっしゃいま……って、あんた、確か
あの時の。どうしたんだね、血相変えて」
名前までは憶えていないらしいお爺さんが、
それでも、僕を見てただならぬ空気を感じた
のか眉を寄せる。僕はカウンターに両手をつ
くとお爺さんの顔を覗き込み、いきなり本題
を突き付けた。
「ちょっと確認したいんですが、この店の
防犯カメラはダミーなんですよね?」
わかりきったことを訊く僕に、お爺さんは
さらに眉を寄せる。
「そうだが、それがどうしたというんだ?」
「だから『みちくさ』のポストも、その隣
にある車庫も、当然、映っていない」
「だからそれは、すまんかったと言っただ
ろうに。映ってないものは、映ってないんだ」
僕の問いに困ったように腕を組み、ヒカリ
爺さんが項垂れる。と、店の自動ドアが開き、
杖にしがみつくようにしてみちくさ爺さんが
入って来た。僕は背後に立つお爺さんを一度
振り返ると、またヒカリ爺さんを覗く。
問題は防犯カメラがダミーか本物かという
ことではなかった。
「じゃあここ最近、そのことを誰かに話し
ませんでしたか?この店のカメラが、ダミー
だということを」
その問いに、「あっ」とヒカリ爺さんが目
を見開く。僕は鼓動が早なるのを感じながら
お爺さんを問い詰めた。
「話したんですね?誰に言ったんですか?」
「そう言えば。その……浅利とかいうあの
営業さんに商店街の防犯が素晴らしいと褒め
られて、つい、調子に乗ってしゃべってしま
ったような気が」
もごもごと奥歯に物が挟まったような物言
いをするヒカリ爺さんに、「なんだとっ!?」
と背後からみちくさ爺さんが声を上げる。
無理もなかった。
防犯カメラがダミーであることをバラして
しまうということは、泥棒に家の鍵が開いて
いることを教えているようなものだからだ。
「まったくっ!ダミーをダミーだと言って
しまったら、何の役にも立たないじゃないか」
「いや、確かに。そう言われればそうだな。
すまん、つい口が勝手に」
目を剥き出して憤慨するみちくさ爺さんに、
ヒカリ爺さんがしゅんとする。
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