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第五章:罪の在り処
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そのことに戸惑っていると、俺を見つめて
いた武弘が、すっ、と棚の一番右下にある段
ボールを指差す。そして、小さく頷いたかと
思うと、まるで蛍光灯の灯りに溶けるように
ふっ、と消えてしまった。
「武弘ッ!!?」
それは一瞬の出来事だった。
瞬きをしている間に消えてしまった親友の
名を呼ぶと、金縛りが解けたのだろうか?体
の自由がきくようになる。俺は慌てて武弘が
いた場所に駆けたが、ずらりと並ぶ棚のすべ
てを覗いてみても、どこにも武弘の姿はなく。
チカチカと音をさせながら、蛍光灯だけが
点滅していた。
「……武弘」
幻のように消えてしまった親友に息を吐く
と、俺は武弘が指差していた段ボールに手を
伸ばす。武弘が示した段ボールは白いラベル
が破れており、それを手で繋ぎ合わせてみた
俺は、瞠目した。
「あった、これだ!」
二〇一×年一月とマジックで書かれたそれ
を棚から引っ張り出す。急くような思いで日
付が一致するフラットファイルを手に取ると、
俺はページを捲り捜索報告書に目を走らせた。
『二〇一×年 山岳遭難事故捜索報告書
一月二十三(土)十二時四十五分ごろ、Yヶ
岳連峰・A天狗岳に入山した息子が戻らない
という通報が家族から入った。長野県警本部
と地元の遭難救助対策協議会が、翌二十四日
早朝から捜索を開始。通報からおよそ二十二
時間後に山頂付近の稜線で、貴船菜乃子さん
(二十一)を発見した。一緒に入山した当麻
卓さん(二十三)はその後、捜索を続けるも
発見に至らず。県警本部は滑落したのち雪崩
に巻き込まれたとして二十七日に捜索を打ち
切り、官公庁によって『認定死亡』の報告が
なされた。突然、ホワイトアウトに見舞われ
身動きが取れなくなったという貴船菜乃子さ
んは、両手両足に凍傷を負ったが命に別状は
なかった』
「……認定死亡だと?」
あの日、母親の口から語られなかった事実
を知り、俺は掠れた声で呟く。心春の実家に
赴き居間に足を踏み入れた時、部屋には娘の
遺影しかなかった。息子も死んだと聞かされ
たのは線香を手向けた後のことで、俺は取り
乱す母親の姿に違和感を覚えながらも、卓の
遺影が部屋にないことにまで気付けなかった。
「これが違和感の正体か。だが、まさか」
突き止めた事実に思考を巡らせようとした、
その時だった。懐で携帯が鳴って俺はパタリ
とファイルを閉じる。着信を告げるそれを手
に取って見れば、見知らぬ番号が表示されて
いる。俺は通話ボタンに触れ、電話に出た。
「はい。目黒北警察、刑事課の木林です」
どうやら、固定電話からのようだ。
表示されている番号にそう思いながら耳を
澄ませると、聞き覚えのある女性の声がした。
いた武弘が、すっ、と棚の一番右下にある段
ボールを指差す。そして、小さく頷いたかと
思うと、まるで蛍光灯の灯りに溶けるように
ふっ、と消えてしまった。
「武弘ッ!!?」
それは一瞬の出来事だった。
瞬きをしている間に消えてしまった親友の
名を呼ぶと、金縛りが解けたのだろうか?体
の自由がきくようになる。俺は慌てて武弘が
いた場所に駆けたが、ずらりと並ぶ棚のすべ
てを覗いてみても、どこにも武弘の姿はなく。
チカチカと音をさせながら、蛍光灯だけが
点滅していた。
「……武弘」
幻のように消えてしまった親友に息を吐く
と、俺は武弘が指差していた段ボールに手を
伸ばす。武弘が示した段ボールは白いラベル
が破れており、それを手で繋ぎ合わせてみた
俺は、瞠目した。
「あった、これだ!」
二〇一×年一月とマジックで書かれたそれ
を棚から引っ張り出す。急くような思いで日
付が一致するフラットファイルを手に取ると、
俺はページを捲り捜索報告書に目を走らせた。
『二〇一×年 山岳遭難事故捜索報告書
一月二十三(土)十二時四十五分ごろ、Yヶ
岳連峰・A天狗岳に入山した息子が戻らない
という通報が家族から入った。長野県警本部
と地元の遭難救助対策協議会が、翌二十四日
早朝から捜索を開始。通報からおよそ二十二
時間後に山頂付近の稜線で、貴船菜乃子さん
(二十一)を発見した。一緒に入山した当麻
卓さん(二十三)はその後、捜索を続けるも
発見に至らず。県警本部は滑落したのち雪崩
に巻き込まれたとして二十七日に捜索を打ち
切り、官公庁によって『認定死亡』の報告が
なされた。突然、ホワイトアウトに見舞われ
身動きが取れなくなったという貴船菜乃子さ
んは、両手両足に凍傷を負ったが命に別状は
なかった』
「……認定死亡だと?」
あの日、母親の口から語られなかった事実
を知り、俺は掠れた声で呟く。心春の実家に
赴き居間に足を踏み入れた時、部屋には娘の
遺影しかなかった。息子も死んだと聞かされ
たのは線香を手向けた後のことで、俺は取り
乱す母親の姿に違和感を覚えながらも、卓の
遺影が部屋にないことにまで気付けなかった。
「これが違和感の正体か。だが、まさか」
突き止めた事実に思考を巡らせようとした、
その時だった。懐で携帯が鳴って俺はパタリ
とファイルを閉じる。着信を告げるそれを手
に取って見れば、見知らぬ番号が表示されて
いる。俺は通話ボタンに触れ、電話に出た。
「はい。目黒北警察、刑事課の木林です」
どうやら、固定電話からのようだ。
表示されている番号にそう思いながら耳を
澄ませると、聞き覚えのある女性の声がした。
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