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episode3 転入生 神崎 嵐
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「ふうん、クリスマス・イブか。黒沢も、やっと決心したんだね」
誰もいない昼休みの屋上で、真理がにっこりとつばさに
笑みを向けて言った。その笑みに対して、つばさは、うーん、と
首を捻る。
「そんなの、まだわかんないよ。今までだって、斗哉とクリスマスに
出掛けたことは何度もあるし。ご飯食べて、ゲーセンで遊んで、
楽しかったね♪で、帰って来るかもしんないし」
空っぽになった弁当箱を大判のハンカチで包みながら、
つばさは言った。聞いて欲しいことがある、と、真理を昼休みの
屋上に誘ったのはつばさだ。この学校の屋上のドアには、鍵が
掛かっていない。剥き出しのコンクリートに、空高くそびえる
フェンスは物々しくて、癒しの空間とは言えないが、誰かに聞き耳を
立てられることなく、斗哉や嵐の話ができる場所は、ここしか
思いつかなかった。
「ねぇ。今さらそんな惚けたこと言う?もう3回もキスして
んのよ?ただの幼馴染の顔をして、黒沢があんたをデートに
連れてくワケないでしょう?ちゃんとあんたも覚悟して行かないと、
その時になって慌てても知らないよ」
きゅう、と真理がつばさの鼻を指で摘まみながら言う。
「いひゃい、ってば……」
つばさは、真理にされるがまま、くぐもった声でそう言って、
顔を顰めた。真理がため息をついて、鼻を開放する。
「まあ、黒沢のことだから、あんたに過度な期待はしてない
でしょうけどね。でも、プレゼントくらいは用意してった方が
いいわよ。絶対、黒沢、持ってくると思うし」
さら、と真理が髪を掻き上げながらくすりと笑う。
「プレゼントか。わかった、考えてみる」
つばさはお弁当箱を膝にのせたままで腕を組むと、
空を見上げて、ふむ、と考え出した。
「それにしても……神崎嵐のことは色々驚いたわね。
霊が見えるだの、霊能一族だの。まるで映画の中の
話みたいでさ」
屋上に上がってすぐ、お弁当を食べながら話したことを
思い返して、真理も空を見上げた。こんな話が真理に
できるようになったのも、あの修学旅行からで……
つばさにとっては、その事も新鮮だ。うん、と頷く頬が
自然と綻んでしまう。
「まだ一度しか話してないし、昨日会ったばっかりなんだけど、
何だか親近感を持てるんだよね。嵐とは、いい仲間に
なれそうな気がする」
胸ポケットの護符にそっと触れながら、つばさは笑みを
深めた。その横顔に、ちら、と真理が視線を送る。
「いい仲間、か。本当に、そうなれるならいいけど……。
ヘンに嵐との関係を拗らせないように、気を付けなさいよ」
そう言うと、真理は立ち上がってスカートを叩いた。ほぼ同時に、
予鈴のチャイムが屋上に鳴り響いて、昼休みの終わりを告げる。
「拗らせるって、どういうこと?」
何のことだかわからずに首を捻るつばさに、ほら、行くよ、と
振り返ると、真理はすたすたと出入り口に歩いて行った。
誰もいない昼休みの屋上で、真理がにっこりとつばさに
笑みを向けて言った。その笑みに対して、つばさは、うーん、と
首を捻る。
「そんなの、まだわかんないよ。今までだって、斗哉とクリスマスに
出掛けたことは何度もあるし。ご飯食べて、ゲーセンで遊んで、
楽しかったね♪で、帰って来るかもしんないし」
空っぽになった弁当箱を大判のハンカチで包みながら、
つばさは言った。聞いて欲しいことがある、と、真理を昼休みの
屋上に誘ったのはつばさだ。この学校の屋上のドアには、鍵が
掛かっていない。剥き出しのコンクリートに、空高くそびえる
フェンスは物々しくて、癒しの空間とは言えないが、誰かに聞き耳を
立てられることなく、斗哉や嵐の話ができる場所は、ここしか
思いつかなかった。
「ねぇ。今さらそんな惚けたこと言う?もう3回もキスして
んのよ?ただの幼馴染の顔をして、黒沢があんたをデートに
連れてくワケないでしょう?ちゃんとあんたも覚悟して行かないと、
その時になって慌てても知らないよ」
きゅう、と真理がつばさの鼻を指で摘まみながら言う。
「いひゃい、ってば……」
つばさは、真理にされるがまま、くぐもった声でそう言って、
顔を顰めた。真理がため息をついて、鼻を開放する。
「まあ、黒沢のことだから、あんたに過度な期待はしてない
でしょうけどね。でも、プレゼントくらいは用意してった方が
いいわよ。絶対、黒沢、持ってくると思うし」
さら、と真理が髪を掻き上げながらくすりと笑う。
「プレゼントか。わかった、考えてみる」
つばさはお弁当箱を膝にのせたままで腕を組むと、
空を見上げて、ふむ、と考え出した。
「それにしても……神崎嵐のことは色々驚いたわね。
霊が見えるだの、霊能一族だの。まるで映画の中の
話みたいでさ」
屋上に上がってすぐ、お弁当を食べながら話したことを
思い返して、真理も空を見上げた。こんな話が真理に
できるようになったのも、あの修学旅行からで……
つばさにとっては、その事も新鮮だ。うん、と頷く頬が
自然と綻んでしまう。
「まだ一度しか話してないし、昨日会ったばっかりなんだけど、
何だか親近感を持てるんだよね。嵐とは、いい仲間に
なれそうな気がする」
胸ポケットの護符にそっと触れながら、つばさは笑みを
深めた。その横顔に、ちら、と真理が視線を送る。
「いい仲間、か。本当に、そうなれるならいいけど……。
ヘンに嵐との関係を拗らせないように、気を付けなさいよ」
そう言うと、真理は立ち上がってスカートを叩いた。ほぼ同時に、
予鈴のチャイムが屋上に鳴り響いて、昼休みの終わりを告げる。
「拗らせるって、どういうこと?」
何のことだかわからずに首を捻るつばさに、ほら、行くよ、と
振り返ると、真理はすたすたと出入り口に歩いて行った。
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