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episode5 朔風に消える
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「申し訳ありませんが、やはり、こちらではお答えできかねますので……
まずは、警察にご相談に行かれてはどうか、ということです」
丁寧に似顔絵を折りたたんで、加賀見の手に返す。無理もなかった。
家族だと名乗る加賀見が、本当に家族かどうかも、わからないのだ。
簡単に患者の個人情報を、病院が漏らすわけがない。
「わかりました。お忙しいところ、お手数かけてすみませんでした」
意外にも、加賀見はあっさり引き下がると、行くよ、とつばさに声をかけて
病院を出て行った。
「どうでしたか?」
ドアを出て通路に戻ると、斗哉が加賀見の顔を覗いた。加賀見が頷く。
「本当のことは話さなかったけど、この似顔絵の人物を知ってる顔だった。
犯人がここに通院していることは、間違いなさそうだ。それにしても……」
建物の階段を降りながら、加賀見は自分の後ろに続くつばさを振り返った。
「君がボロを出さないか、本当に冷や冷やしたよ。僕の隣で顔を青くしたり、
赤くしたり。君は嘘がつけないタイプなんだな」
くすくす、と笑いながら加賀見が肩を揺する。つばさは、口を尖らせて
肩を竦めた。自分は嘘が付けないどころか、何でも顔に出てしまうタイプ
なのだ。だから、斗哉か嵐が行くべきだと、そう思ったのに……
つばさは、目の前で可笑しそうに笑っている加賀見の背中に、言った。
「もういいじゃないですか。犯人がここに通ってるって、わかったんだから。
それより、門田刑事にこのことを知らせなくていいんですか?警察手帳の
力を借りれば、一発で犯人の居所が掴めますよ」
拳を握りしめてそう言ったつばさに、加賀見はなぜか首を振った。
「それはもう少し待ってもらえるかな。勝手に行動した言い訳も考えたいし」
加賀見がそう言った時だった。下から男性が階段をあがってきて、
加賀見がぴたりと足を止めた。急に立ち止まった加賀見に、つばさは
うわっ、と前のめりになって彼の両肩に掴まる。
「どうしたんですか?急に」
怪訝な顔をして、加賀見が視線を向ける先に目をやったつばさは、
次の瞬間、これ以上ないくらいに、目を見開いた。
-----果たして、こんな偶然があっていいのだろうか?
階段の踊り場に突っ立っている男が、こちらを見上げている。
自分の顔を凝視する加賀見に、無機質な眼差しを向けるその男。
男の唇の右上には、黒子がある。線が細く、暗い感じのする若者。
長い前髪は真ん中で分けられていて、くっきりと顔が見える。
けれどその顔は………あの似顔絵と同じだっだ。
「あっ!!」
つばさは、加賀見の肩越しにその男を指差した。男が、さっと顔色を
変えて、踵を返す。一目散にその場を走り去ろうとする男を、加賀見が
ものすごい速さで追いかけ始めた。
「ひゃ…っ!!」
支えとなっていた加賀見の肩を失って、つばさは手をバタつかせながら
階段を落ちそうになる。その肩を、後ろにいた斗哉が抱き留めるのと
同時に、さらに、その後ろにいた嵐が、猛スピードで階段を駆け下りた。
そうして、建物を飛び出す直前に斗哉を振り返った。
「黒沢っ、門田さんに電話!!」
ひと言、そう叫んで2人の後を追う。犯人は駅の方に向かって走って
行った。ここで犯人を逃がしてしまったら……また、捜査が息詰まること
は間違いない。斗哉はポケットから携帯を取り出しながら走った。
つばさも、道行く人を避けながら斗哉に続く。心臓はバクバクと鳴って、
走る前から胸が苦しかった。
「…………黒沢です、すみません、犯人と鉢合わせました!!」
門田刑事にそう言いながら、斗哉が嵐の背中を追いかける。けれど、
途中で信号に遮られてしまい、最寄り駅に辿り着いたところで嵐を
見失ってしまう。斗哉もつばさも、かなり足は速い方なのに追いつけな
かった。つばさは、きょろきょろと周囲を見回した。そして、遠くを指差した。
まずは、警察にご相談に行かれてはどうか、ということです」
丁寧に似顔絵を折りたたんで、加賀見の手に返す。無理もなかった。
家族だと名乗る加賀見が、本当に家族かどうかも、わからないのだ。
簡単に患者の個人情報を、病院が漏らすわけがない。
「わかりました。お忙しいところ、お手数かけてすみませんでした」
意外にも、加賀見はあっさり引き下がると、行くよ、とつばさに声をかけて
病院を出て行った。
「どうでしたか?」
ドアを出て通路に戻ると、斗哉が加賀見の顔を覗いた。加賀見が頷く。
「本当のことは話さなかったけど、この似顔絵の人物を知ってる顔だった。
犯人がここに通院していることは、間違いなさそうだ。それにしても……」
建物の階段を降りながら、加賀見は自分の後ろに続くつばさを振り返った。
「君がボロを出さないか、本当に冷や冷やしたよ。僕の隣で顔を青くしたり、
赤くしたり。君は嘘がつけないタイプなんだな」
くすくす、と笑いながら加賀見が肩を揺する。つばさは、口を尖らせて
肩を竦めた。自分は嘘が付けないどころか、何でも顔に出てしまうタイプ
なのだ。だから、斗哉か嵐が行くべきだと、そう思ったのに……
つばさは、目の前で可笑しそうに笑っている加賀見の背中に、言った。
「もういいじゃないですか。犯人がここに通ってるって、わかったんだから。
それより、門田刑事にこのことを知らせなくていいんですか?警察手帳の
力を借りれば、一発で犯人の居所が掴めますよ」
拳を握りしめてそう言ったつばさに、加賀見はなぜか首を振った。
「それはもう少し待ってもらえるかな。勝手に行動した言い訳も考えたいし」
加賀見がそう言った時だった。下から男性が階段をあがってきて、
加賀見がぴたりと足を止めた。急に立ち止まった加賀見に、つばさは
うわっ、と前のめりになって彼の両肩に掴まる。
「どうしたんですか?急に」
怪訝な顔をして、加賀見が視線を向ける先に目をやったつばさは、
次の瞬間、これ以上ないくらいに、目を見開いた。
-----果たして、こんな偶然があっていいのだろうか?
階段の踊り場に突っ立っている男が、こちらを見上げている。
自分の顔を凝視する加賀見に、無機質な眼差しを向けるその男。
男の唇の右上には、黒子がある。線が細く、暗い感じのする若者。
長い前髪は真ん中で分けられていて、くっきりと顔が見える。
けれどその顔は………あの似顔絵と同じだっだ。
「あっ!!」
つばさは、加賀見の肩越しにその男を指差した。男が、さっと顔色を
変えて、踵を返す。一目散にその場を走り去ろうとする男を、加賀見が
ものすごい速さで追いかけ始めた。
「ひゃ…っ!!」
支えとなっていた加賀見の肩を失って、つばさは手をバタつかせながら
階段を落ちそうになる。その肩を、後ろにいた斗哉が抱き留めるのと
同時に、さらに、その後ろにいた嵐が、猛スピードで階段を駆け下りた。
そうして、建物を飛び出す直前に斗哉を振り返った。
「黒沢っ、門田さんに電話!!」
ひと言、そう叫んで2人の後を追う。犯人は駅の方に向かって走って
行った。ここで犯人を逃がしてしまったら……また、捜査が息詰まること
は間違いない。斗哉はポケットから携帯を取り出しながら走った。
つばさも、道行く人を避けながら斗哉に続く。心臓はバクバクと鳴って、
走る前から胸が苦しかった。
「…………黒沢です、すみません、犯人と鉢合わせました!!」
門田刑事にそう言いながら、斗哉が嵐の背中を追いかける。けれど、
途中で信号に遮られてしまい、最寄り駅に辿り着いたところで嵐を
見失ってしまう。斗哉もつばさも、かなり足は速い方なのに追いつけな
かった。つばさは、きょろきょろと周囲を見回した。そして、遠くを指差した。
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