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episodeFinal 永遠のワンスモア
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「……んっ!!??」
ねっとりと斗哉の甘い舌が、つばさの口の中を同じ味にしていく。2人の唾液で
薄まったチョコを飲み干しても、斗哉のキスは終わらない。つばさは、斗哉に
しがみつきながら、長い長いキスを受け止めた。
「……っ、はあっ……」
ようやく、解放された唇で息を吐くと、つばさは斗哉の胸に顔を埋めた。心臓が痛い
ほど、どきどきしている。躰もふわふわして、何だかこのまま浮いてしまいそうだ。
「どう?美味しかった?」
ぐったりと顔を埋めているつばさに、斗哉が囁くように訊いた。つばさは答える
余裕もなく、腕の中でこくこくと首を振る。斗哉は満足そうに微笑むと、つばさの
頭を撫でながら、さらにとろけるような甘い声で囁いた。
「1週間分のキスでこれだからな。俺が会いに行った時は、覚悟しておけよ」
-----それが半年ほど前の話だ。
斗哉は焼けつくような夏の日差しを浴びながら、つばさが住む街の最寄り駅に
降り立った。あの夜の宣言通り、新年度から遠く離れた高校へ転校していった
つばさに会いに来るのはこれが初めてで、この空の下につばさがいると思うと、
どうにも胸の高鳴りがおさまらない。斗哉は自分を迎えに来ているはずの車を
探した。「私は迎えに行けないけど」という前置き付きでメールに書いてあった
内容は、九重家専属の運転手がハイヤーで迎えに行くというものだった。
つばさの祖母である九重澄子は、この土地では有名な霊能力者であり、資産家
でもある。たった一度だけ、小学生の頃につばさと訪れたことがあるが、
あまりの家の広さに、家の中で迷子になってしまったほどだ。同じような和室と、
どこまでも続く長い廊下は、隠れているつばさを探しているうちに方向感覚を
狂わせてくれて……不安で胸をいっぱいにしながら、廊下を歩きまわった
あの日が懐かしい。そんな思い出に浸っていた斗哉の耳に、突然、しゃがれ
声が飛び込んできた。
「あんたが斗哉さんかい?」
この地方独特のイントネーションで話しかけれて横を向けば、小柄な老人が
自分を見上げている。まあるい顔に、糸のような細い目をいっそう細くして、
老人は人が良さそうな笑顔を向けていた。斗哉は彼を向いて頷いた。
「お迎えの方ですか?」
「はい。運転手の妹尾です。暑い中、よう来られましたな。どうぞ、
車はあちらです」
ロータリーの隅に停めてある黒塗りのハイヤーを指差しながら、老人は
ひょこひょこと歩き出した。斗哉もその後に続く。
エンジンが掛けられたままの車に乗り込むと、車内はエアコンが効いていた。
汗ばんだ額が徐々に冷やされていって、暑さから解放される。走り出した
車の窓から山々に囲まれた街並みを見ているうちに、車は吸い込まれるように
くねくねと山道を登り始めた。つばさの待つ祖母の家は、山の麓にあるのだ。
「長旅で疲れましたでしょう?あと20分ほどで着きますから、良かったら、
寝とってください」
バックミラー越しに妹尾が声をかけてきたので、斗哉はやんわりと笑んだ。
眠れと言われて、眠れるわけがない。つばさに会える。そう思うだけで、
心は車を降りて走り出してしまいそうだ。やがて視界が開けた先に、
大きな日本家屋が見えてくるだろう。斗哉は窓の外を眺めながら、自分の
腕に飛び込んでくるつばさの顔を思い浮かべた。
ねっとりと斗哉の甘い舌が、つばさの口の中を同じ味にしていく。2人の唾液で
薄まったチョコを飲み干しても、斗哉のキスは終わらない。つばさは、斗哉に
しがみつきながら、長い長いキスを受け止めた。
「……っ、はあっ……」
ようやく、解放された唇で息を吐くと、つばさは斗哉の胸に顔を埋めた。心臓が痛い
ほど、どきどきしている。躰もふわふわして、何だかこのまま浮いてしまいそうだ。
「どう?美味しかった?」
ぐったりと顔を埋めているつばさに、斗哉が囁くように訊いた。つばさは答える
余裕もなく、腕の中でこくこくと首を振る。斗哉は満足そうに微笑むと、つばさの
頭を撫でながら、さらにとろけるような甘い声で囁いた。
「1週間分のキスでこれだからな。俺が会いに行った時は、覚悟しておけよ」
-----それが半年ほど前の話だ。
斗哉は焼けつくような夏の日差しを浴びながら、つばさが住む街の最寄り駅に
降り立った。あの夜の宣言通り、新年度から遠く離れた高校へ転校していった
つばさに会いに来るのはこれが初めてで、この空の下につばさがいると思うと、
どうにも胸の高鳴りがおさまらない。斗哉は自分を迎えに来ているはずの車を
探した。「私は迎えに行けないけど」という前置き付きでメールに書いてあった
内容は、九重家専属の運転手がハイヤーで迎えに行くというものだった。
つばさの祖母である九重澄子は、この土地では有名な霊能力者であり、資産家
でもある。たった一度だけ、小学生の頃につばさと訪れたことがあるが、
あまりの家の広さに、家の中で迷子になってしまったほどだ。同じような和室と、
どこまでも続く長い廊下は、隠れているつばさを探しているうちに方向感覚を
狂わせてくれて……不安で胸をいっぱいにしながら、廊下を歩きまわった
あの日が懐かしい。そんな思い出に浸っていた斗哉の耳に、突然、しゃがれ
声が飛び込んできた。
「あんたが斗哉さんかい?」
この地方独特のイントネーションで話しかけれて横を向けば、小柄な老人が
自分を見上げている。まあるい顔に、糸のような細い目をいっそう細くして、
老人は人が良さそうな笑顔を向けていた。斗哉は彼を向いて頷いた。
「お迎えの方ですか?」
「はい。運転手の妹尾です。暑い中、よう来られましたな。どうぞ、
車はあちらです」
ロータリーの隅に停めてある黒塗りのハイヤーを指差しながら、老人は
ひょこひょこと歩き出した。斗哉もその後に続く。
エンジンが掛けられたままの車に乗り込むと、車内はエアコンが効いていた。
汗ばんだ額が徐々に冷やされていって、暑さから解放される。走り出した
車の窓から山々に囲まれた街並みを見ているうちに、車は吸い込まれるように
くねくねと山道を登り始めた。つばさの待つ祖母の家は、山の麓にあるのだ。
「長旅で疲れましたでしょう?あと20分ほどで着きますから、良かったら、
寝とってください」
バックミラー越しに妹尾が声をかけてきたので、斗哉はやんわりと笑んだ。
眠れと言われて、眠れるわけがない。つばさに会える。そう思うだけで、
心は車を降りて走り出してしまいそうだ。やがて視界が開けた先に、
大きな日本家屋が見えてくるだろう。斗哉は窓の外を眺めながら、自分の
腕に飛び込んでくるつばさの顔を思い浮かべた。
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初回公開日時 2019.01.25 22:29
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