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第一章:詩乃 守人
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繊細なのだ。言葉ひとつひとつに、魅せられてしまうほどに。
少々古風な言葉遣いも、情緒溢れる描写も、読んでいるだけで
すっと心に沁み込んできて、活字から目を離すことが出来ない。
あっという間に最後のページを読み終えた蛍里は、ほぅ、とため息を
つきながら、しばらく爽やかな読後感に浸ってしまっていた。
そして気が付いた時には、「御感想はこちらへ」というボタンをクリック
していた。子供の頃から今まで、蛍里が読んできた作品は何百とあるが、
その感想を作者に送ったことは一度もなかった。だから、感想を送り
たいと思うことは至極特別で、表紙と同様の幻想的な画面にぽっかりと、
白いメールフォームが表示されただけで、何故だかどきどきしてしまう。
まるで恋文を書く中学生のような心持で、蛍里はキーボードに触れた。
深呼吸をひとつして、まずは「詩乃 守人様」と宛名を書き込む。
続けて、簡単な挨拶文を認めると、蛍里は感じたままに物語
の感想を綴った。そして最後に、「HOTARU」というハンドル名を添えた。
筆名から察するに、おそらく、この物語を書いたのは男性だ。HOTARU
と名乗れば、詩乃 守人と名乗るその人は、相手が女性だと察する
だろうか?ふと、そんなことを思いながら、蛍里は送信ボタンを押した。
送信済みのボタンの上に、メッセージが表示される。
“作品をお読みいただき、ありがとうございます。
感想のメールは、すべて嬉しく読ませて頂いています。
必ず返答のメールをお送りいたします。しばらくお待ちください。“
たったそれだけの文章だったが、作者の真摯な人柄が伝わってきた。
-----必ず返事が来る。
そう思うだけで、心の奥が騒めいてどうにも落ち着かなかった。
「しの……もりひと。うたを、守る人……」
蛍里はひとり呟きながら、パソコンの電源を落としベッドに入った。
顔も名前も知らないその人が、自分からのメールを読んでいる
様を想像して、枕に顔を埋める。恥ずかしいような、嬉しいような、
不思議な気分だ。蛍里は結局、その夜は朝まで寝付けなかった。
翌日も、その翌日も、詩乃 守人からの返事は届かなかった。
家に帰ってパソコンを開き、広告メールばかりの受信ボックスを
見て、がっかりする日々。こんなにも、誰かからの返事を楽しみ
待ったことがあっただろうか?まるで恋でもしているかのような
錯覚に陥りながらも、蛍里は返事を待ち続けた。
少々古風な言葉遣いも、情緒溢れる描写も、読んでいるだけで
すっと心に沁み込んできて、活字から目を離すことが出来ない。
あっという間に最後のページを読み終えた蛍里は、ほぅ、とため息を
つきながら、しばらく爽やかな読後感に浸ってしまっていた。
そして気が付いた時には、「御感想はこちらへ」というボタンをクリック
していた。子供の頃から今まで、蛍里が読んできた作品は何百とあるが、
その感想を作者に送ったことは一度もなかった。だから、感想を送り
たいと思うことは至極特別で、表紙と同様の幻想的な画面にぽっかりと、
白いメールフォームが表示されただけで、何故だかどきどきしてしまう。
まるで恋文を書く中学生のような心持で、蛍里はキーボードに触れた。
深呼吸をひとつして、まずは「詩乃 守人様」と宛名を書き込む。
続けて、簡単な挨拶文を認めると、蛍里は感じたままに物語
の感想を綴った。そして最後に、「HOTARU」というハンドル名を添えた。
筆名から察するに、おそらく、この物語を書いたのは男性だ。HOTARU
と名乗れば、詩乃 守人と名乗るその人は、相手が女性だと察する
だろうか?ふと、そんなことを思いながら、蛍里は送信ボタンを押した。
送信済みのボタンの上に、メッセージが表示される。
“作品をお読みいただき、ありがとうございます。
感想のメールは、すべて嬉しく読ませて頂いています。
必ず返答のメールをお送りいたします。しばらくお待ちください。“
たったそれだけの文章だったが、作者の真摯な人柄が伝わってきた。
-----必ず返事が来る。
そう思うだけで、心の奥が騒めいてどうにも落ち着かなかった。
「しの……もりひと。うたを、守る人……」
蛍里はひとり呟きながら、パソコンの電源を落としベッドに入った。
顔も名前も知らないその人が、自分からのメールを読んでいる
様を想像して、枕に顔を埋める。恥ずかしいような、嬉しいような、
不思議な気分だ。蛍里は結局、その夜は朝まで寝付けなかった。
翌日も、その翌日も、詩乃 守人からの返事は届かなかった。
家に帰ってパソコンを開き、広告メールばかりの受信ボックスを
見て、がっかりする日々。こんなにも、誰かからの返事を楽しみ
待ったことがあっただろうか?まるで恋でもしているかのような
錯覚に陥りながらも、蛍里は返事を待ち続けた。
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