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その時、蠢くアームを囲むように床に白い光が現れ、次第にドーム型に膨れ上がってやがてそれらを閉じ込めた。
「ほう」
ソニアスは感心したように目を瞬かせた。
ゴミ箱は隙間を開けるのが怖かったけど、これなら、魔法ならこのまま。
リリエナがアーム達を浄化するのを想像すると、ドームの中が発光し、黒いものは散霧しながら消えていった。
「で、できた?」
「もう一度やってみろ」
それから何度か同じ事を繰り返して今日の訓練は終わった。
「よくやった。今日はここまでにしておくか」
あれ、もう?と思ったが、設置されている時計を見るとお昼を指していた。
時間が経つのが早いと感じるのは、能動的に魔法を使い充実感を得られ楽しかったからだ。
「これで満足するなよ、実戦では想像する時間なんて待ってはくれないからな」
「わかってます」
それが分かってるから訓練してるのよ!と言い返したいのをぐっと堪えているとポンポンと頭頂部に何かが軽く当たった。
「え」
ソニアスに頭ポンポンされていた。
「そんな顔するな、頑張ってくれてるのはわかってる」
その美人な顔で申し訳ないような照れたような表情を浮かべている。
い、色っぽい。何だろう、この負けた感。
ぽけっと美麗な顔に見惚れていると、背後から低音の力強い声が掛けられた。
「おい、何色気振り撒いてんだ。ニア」
振り向くと扉から厳つい顔の男が覗いていた。
リリエナを見守るように壁際に立っていたオーガストが一礼をしたので怪しい人ではなさそうだ。
「んな事してねえよ、何言ってんだ。何か用か?」
「もう終わったんだろ。時間が出来たんだメシ行こうぜ」
ソニアスを昼食に誘いに来たようだが、リリエナは会った事がない人物だった。
「騎士団のリンガル団長ですよ、そう言えばまだ会っていませんでしたね」
オーガストがコソッと教えてくれる。
扉が全開になり全身を見せたリンガルの体躯は鍛え込んだ筋肉と二メートルはありそうな長身で迫力があったが、その顔は漢気があるものの犬歯を見せて笑えば人懐こい好青年にも見えた。
「団長、リリエナ様です」
「お初にお目にかかります、騎士団団長のリンガルと申します。以後お見知り置きを」
「リリエナ=ドゥーベです、こちらこそよろしくお願いします」
「講義は終了とお見受けしたが、魔導師長をお借りしてもよろしいかな」
「はい、ど、どうぞ」
「では失礼する。ニア、行こうぜ」
「お、おいっ、引っ張るな。あ、リナ、今日はゆっくり休めよ。ちょっ、リン」
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