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4・婚約破棄と引き換えに手に入れたもの
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「はっはっは! 気色悪い蛾のような特注指輪なんて、はじめて見たわい!」
不要となった婚約指輪を売った私は、対価として金貨入りの袋を手渡される。
そのずっしりとした感覚に、気持ちが軽くなった。
今夜はよく眠れそうだ。
「お嬢さん、あんたずいぶん成金悪趣味の男に入れ込まれていたようじゃの。美人に生まれるのも大変そうだ」
「いいえ。彼は私のことが嫌いだったようです」
「ほう。確かにあんな指輪を贈られたら、そうも思いたくなるかもしれんなぁ。でもこれでお嬢さんに似合う、新しい指輪も買えるだろう。欲しいものがあるのなら、いい店を紹介しよう」
「ありがとうございます。でもこれは私の生活資金ですから、計画的に使うつもりです」
私はワクワクしながら、これから自由を与えてくれる硬貨入りの袋をしっかりと握りしめる。
絶対、大切に使おう。
「若いお嬢さんだというのに、なかなかしっかりしているんですなぁ。でもこんな店まで足を運んだんだ。なにか事情や、欲しいものがあるのではないのかね」
「一番欲しいのは夕食です。今からひとりでも行ける、あまり人目につかないおいしいお店、知りませんか?」
おじいさんの背後にある、店の奥の扉が開いた。
その隙間から幼い女の子が顔を覗かせる。
なにやら真剣な様子で、私を見つめていた。
「コリンナ、目が覚めてしまったのか。今はお客さんが来ているから……おっ」
おじいさんはコリンナと呼んだ女の子に歩み寄って抱き上げようとすると、慣れた様子ですり抜けられてしまう。
コリンナは私のところへ走ってきて、元気に指さした。
「おんなのこ!」
「は、はい」
女の子……人差し指が向いているし、たぶん私のことだ。
「おんなのこ、おなか、すいたねー?」
扉の陰で、私とおじいさんの話を聞いていたらしい。
「はい。ペコペコです」
「これ、あげゆ!」
コリンナが持っていた茶色いパンを差し出すので、ありがたく受け取る。
おじいさんは慌ててやってくると、指をさすコリンナの手を包んでやさしく注意した。
それから私に向かって申し訳なさそうに頭を下げる。
「躾がなっておらず、失礼しました。ご様子から想像するに、あなたは名家のお嬢様だと思われるのですが……。孫はまだ幼いのでそのことがわからず、こんな粗末なパンを」
「いいえ、嬉しいです。ありがとう、コリンナ」
私はコリンナに見えるように一口いただく。
よく噛んで食べると、妙な香のせいで失われていたあらゆる感覚、パンの素朴な匂いや甘さ、しっとりとした生地まで感じられた。
大聖堂へ行く前に暮らしていた修道院の、懐かしい味を思い出す。
「うん、おいしい!」
コリンナの目がきらきらと輝く。
「おんなのこ、おいしーの! かわいーね!」
そして奥の部屋を何度も往復して、私にたくさんのごちそうを運びはじめた。
不要となった婚約指輪を売った私は、対価として金貨入りの袋を手渡される。
そのずっしりとした感覚に、気持ちが軽くなった。
今夜はよく眠れそうだ。
「お嬢さん、あんたずいぶん成金悪趣味の男に入れ込まれていたようじゃの。美人に生まれるのも大変そうだ」
「いいえ。彼は私のことが嫌いだったようです」
「ほう。確かにあんな指輪を贈られたら、そうも思いたくなるかもしれんなぁ。でもこれでお嬢さんに似合う、新しい指輪も買えるだろう。欲しいものがあるのなら、いい店を紹介しよう」
「ありがとうございます。でもこれは私の生活資金ですから、計画的に使うつもりです」
私はワクワクしながら、これから自由を与えてくれる硬貨入りの袋をしっかりと握りしめる。
絶対、大切に使おう。
「若いお嬢さんだというのに、なかなかしっかりしているんですなぁ。でもこんな店まで足を運んだんだ。なにか事情や、欲しいものがあるのではないのかね」
「一番欲しいのは夕食です。今からひとりでも行ける、あまり人目につかないおいしいお店、知りませんか?」
おじいさんの背後にある、店の奥の扉が開いた。
その隙間から幼い女の子が顔を覗かせる。
なにやら真剣な様子で、私を見つめていた。
「コリンナ、目が覚めてしまったのか。今はお客さんが来ているから……おっ」
おじいさんはコリンナと呼んだ女の子に歩み寄って抱き上げようとすると、慣れた様子ですり抜けられてしまう。
コリンナは私のところへ走ってきて、元気に指さした。
「おんなのこ!」
「は、はい」
女の子……人差し指が向いているし、たぶん私のことだ。
「おんなのこ、おなか、すいたねー?」
扉の陰で、私とおじいさんの話を聞いていたらしい。
「はい。ペコペコです」
「これ、あげゆ!」
コリンナが持っていた茶色いパンを差し出すので、ありがたく受け取る。
おじいさんは慌ててやってくると、指をさすコリンナの手を包んでやさしく注意した。
それから私に向かって申し訳なさそうに頭を下げる。
「躾がなっておらず、失礼しました。ご様子から想像するに、あなたは名家のお嬢様だと思われるのですが……。孫はまだ幼いのでそのことがわからず、こんな粗末なパンを」
「いいえ、嬉しいです。ありがとう、コリンナ」
私はコリンナに見えるように一口いただく。
よく噛んで食べると、妙な香のせいで失われていたあらゆる感覚、パンの素朴な匂いや甘さ、しっとりとした生地まで感じられた。
大聖堂へ行く前に暮らしていた修道院の、懐かしい味を思い出す。
「うん、おいしい!」
コリンナの目がきらきらと輝く。
「おんなのこ、おいしーの! かわいーね!」
そして奥の部屋を何度も往復して、私にたくさんのごちそうを運びはじめた。
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