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40・同じ姿の魔術師

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 その場にいたメイドたちも、同じ姿の魔術師が並んでいる状況に唖然としている。

 ヨルクさんも信じられない様子で、対峙するイザベラを交互に見た。

「どういうことだ、イザベラが二人いる……?」

 彼の言葉に、あっけに取られていたイザベラは我に返る。

 そして自分の名を騙る偽物を睨みつけた。

「あ、あんたは何者よ!」

「だから私は皇城魔術師のイザベラよ、おチビちゃん」

「あんたもチビでしょ! それに皇城魔術師のイザベラは私!」

「それを証明できるの?」

 自分を本物だと言う偽物のイザベラは、手を振り上げる。

 晴れた上空で不穏な稲妻が光り鳴った。

「わっ」

「怖いっ!」

 カフェテラス一帯が動揺に包まれる。

 ある者は身をすくめて硬直し、ある者は怯えて逃げていった。

 偽イザベラはその様子を鼻で笑っている。

 イザベラはさらに目をつり上げた。

「魔術で人を怖がらせて喜ぶなんて、あんたは皇城魔術師失格よ!」

「どうかしら。皇城魔術師はこのくらいの魔術、誰だって安全に使いこなせるわ。もちろんあんたも使えるわよね?」

「そ、それは……」

「できるに決まってるじゃない。ラグガレド帝国の魔術師団に、単純な雷撃すら使えないやつはいらない。あんたがイザベラでもそうでなくても、ろくな魔術を使えないやつに皇城魔術師を名乗る資格はないの」

「そんなことありませんよ」

 ちょっと呟いただけなのに、やけに声が響いて注目を集めてしまった。

 振り返ったイザベラも私の言葉に気づいて、困ったように口ごもっている。

「師匠……! で、でも今の私は本当に、魔術が……」

「イザベラは帝国の審査に受かって資格を得たんだから。間違いなく皇城魔術師だよ。辞めるつもりもないでしょう?」

「そうです。だけど、」

「大丈夫! イザベラには魔術に対する好奇心があるもの。魔紋を見れば努力の跡までわかるよ。きっかけさえつかめば、調子はよくなるから!」

「師匠……」

 私たちのやり取りを見て、偽イザベラはため息交じりで笑った。

「その真新しい制服……適当なことを言う新入りメイドさんのようだけど、魔帝陛下は恐ろしいお方よ。ろくな魔術も使えない人材を、皇城魔術師として置いておくわけないわ」

「そうですね。彼は帝国に必要なものを歓迎します。危険なものは置いておかないでしょう。なによりすごくかわいいんです」

「……かわいい?」

「あ、いえ。つい自慢したくなって……。じゃなくて偽イザベラさん、そろそろ正体を明かしたほうが身のためですよ」

 先ほどのやりとりから予想すると、彼女はイザベラが魔術のスランプだと知っている。

 それに魔術の精度を見た限り、間違いなく……。

「あなた、今の自分の状況を人に知られたくないですよね?」

 図星だったらしい。

 偽イザベラの瞳が動揺に揺れた。






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