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71・みんなありがとう
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ディルとハーロルトさんは、意識を失って倒れているユリウス殿下を見下ろした。
その姿はずぶ濡れで、静電気で逆立っていた髪もしんなりしている。
身体もパチパチ音を立てていない。
「一般的な水なら絶命していただろう。しかし俺の使った井戸水は聖水で、純水と同じく電気を通さない。そして聖水に包まれた効果で、彼が帯びている雷は安定して体内に留められている」
「これでより正確に魔力の検査ができます。言い逃れのできない証拠となるでしょう」
ハーロルトさんはほっとしたように息をついた。
「しかし陛下の堂々とした振る舞いは迫力がありますね。悪者を成敗する舞台劇のようで、思わず見入ってしまいましたよ」
その言葉に、周囲の張り詰めていた緊張感が解ける。
そして一連の出来事について、少し興奮気味で考察したり意見を交わしはじめた。
彼らもどうやら、ハーロルトさんと同じ気持ちで眺めていたらしい。
ハーロルトさんは警備騎士たちに指示を出して、さっそく用意された担架にユリウス殿下を乗せている。
「とりあえず聖国の王太子殿下を救護室へ。目が覚めてから取り調べを行います。付き人は……」
「私が行きます」
リタさんはハーロルトさんのそばへ駆け寄ると、後ろの茂みを指さした。
「ユリウス殿下の護衛騎士たちは、あの陰で眠っています。今回起こったことについては、私からもしっかり説明させてください」
「それは助かります」
リタさんは私に振り返る。
「レナさん。二度も私を救ってくださって、ありがとうございました」
そう言って素敵な笑顔を見せてくれた。
弟さんのことや領地のこと、これから色々あると思う。
でも今のリタさんを見ていると、うまくいく気がした。
私のそばで、ディルも微笑む。
「お前はいつになっても変わらないな」
「そうね。私はずうっと昔から、自分の望みに忠実なのよ」
「ああ。だから俺は変わりたかった。変われたのだろうか」
「……どういうこと?」
「あと少しで俺の諸事も終わる。待っていてくれるか?」
ディルの言葉の意味に気づいて、私は笑って頷いた。
「もちろん」
彼の望みについて、話すときが近づいている。
私はハーロルトさんとリタさん、そしてディルが皇城へと向かう後ろ姿を見送った。
「師匠!!」
振り返ると駆け寄ってきたイザベラが、涙で顔面を濡らしながら飛びついてくる。
「師匠があの全身雷男に濡れ衣を着せられたままだったら、私、どうしようかと……。もし偽の判決がでたら、遠慮なく魔術をぶっぱなしていたくらい、本当に怖かったです!」
イザベラは物騒なことを言いながらも、泣きながら鼻をすすっている。
でも彼女に残っているおいしそうな甘い匂いが漂ってきたので、思わず笑ってしまった。
「イザベラ、ヨルクさんと仲良く食べた建国祭限定の特大パフェ、おいしかった?」
「えっ……! どうしてそのことを!?」
イザベラは泣くことも忘れて、わかりやすいほど顔を真っ赤に染める。
ヨルクさんとうまくいったらしい。
「ちょっとイザベラー! それってあまネコ店限定の恋人パフェのことでしょ!?」
「ヨルク君、休憩に入るとき浮かれ気味だったけど、そういうことだったのね!」
私たちの様子を見ていたらしく、もうすっかり顔なじみのメイドたちが黄色い声を上げて近づいてくる。
「だけどレナはさすがだね。とんでもない妄言野郎に絡まれていたのに、全然動じる様子もないし。イザベラの甘い事情を把握するくらい肝が据わっているんだから!」
「でも困ったことがあったら言いなさいよ。またレナに妙な奴が寄ってきたら、私たちがきれいに掃除してあげる!」
「ふふ。みんなありがとう」
私はにぎやかな友人に囲まれながら、夕日色に変わりゆく空を見上げた。
建国祭の終わりを告げる鐘が、心地よく鳴り響いている。
その姿はずぶ濡れで、静電気で逆立っていた髪もしんなりしている。
身体もパチパチ音を立てていない。
「一般的な水なら絶命していただろう。しかし俺の使った井戸水は聖水で、純水と同じく電気を通さない。そして聖水に包まれた効果で、彼が帯びている雷は安定して体内に留められている」
「これでより正確に魔力の検査ができます。言い逃れのできない証拠となるでしょう」
ハーロルトさんはほっとしたように息をついた。
「しかし陛下の堂々とした振る舞いは迫力がありますね。悪者を成敗する舞台劇のようで、思わず見入ってしまいましたよ」
その言葉に、周囲の張り詰めていた緊張感が解ける。
そして一連の出来事について、少し興奮気味で考察したり意見を交わしはじめた。
彼らもどうやら、ハーロルトさんと同じ気持ちで眺めていたらしい。
ハーロルトさんは警備騎士たちに指示を出して、さっそく用意された担架にユリウス殿下を乗せている。
「とりあえず聖国の王太子殿下を救護室へ。目が覚めてから取り調べを行います。付き人は……」
「私が行きます」
リタさんはハーロルトさんのそばへ駆け寄ると、後ろの茂みを指さした。
「ユリウス殿下の護衛騎士たちは、あの陰で眠っています。今回起こったことについては、私からもしっかり説明させてください」
「それは助かります」
リタさんは私に振り返る。
「レナさん。二度も私を救ってくださって、ありがとうございました」
そう言って素敵な笑顔を見せてくれた。
弟さんのことや領地のこと、これから色々あると思う。
でも今のリタさんを見ていると、うまくいく気がした。
私のそばで、ディルも微笑む。
「お前はいつになっても変わらないな」
「そうね。私はずうっと昔から、自分の望みに忠実なのよ」
「ああ。だから俺は変わりたかった。変われたのだろうか」
「……どういうこと?」
「あと少しで俺の諸事も終わる。待っていてくれるか?」
ディルの言葉の意味に気づいて、私は笑って頷いた。
「もちろん」
彼の望みについて、話すときが近づいている。
私はハーロルトさんとリタさん、そしてディルが皇城へと向かう後ろ姿を見送った。
「師匠!!」
振り返ると駆け寄ってきたイザベラが、涙で顔面を濡らしながら飛びついてくる。
「師匠があの全身雷男に濡れ衣を着せられたままだったら、私、どうしようかと……。もし偽の判決がでたら、遠慮なく魔術をぶっぱなしていたくらい、本当に怖かったです!」
イザベラは物騒なことを言いながらも、泣きながら鼻をすすっている。
でも彼女に残っているおいしそうな甘い匂いが漂ってきたので、思わず笑ってしまった。
「イザベラ、ヨルクさんと仲良く食べた建国祭限定の特大パフェ、おいしかった?」
「えっ……! どうしてそのことを!?」
イザベラは泣くことも忘れて、わかりやすいほど顔を真っ赤に染める。
ヨルクさんとうまくいったらしい。
「ちょっとイザベラー! それってあまネコ店限定の恋人パフェのことでしょ!?」
「ヨルク君、休憩に入るとき浮かれ気味だったけど、そういうことだったのね!」
私たちの様子を見ていたらしく、もうすっかり顔なじみのメイドたちが黄色い声を上げて近づいてくる。
「だけどレナはさすがだね。とんでもない妄言野郎に絡まれていたのに、全然動じる様子もないし。イザベラの甘い事情を把握するくらい肝が据わっているんだから!」
「でも困ったことがあったら言いなさいよ。またレナに妙な奴が寄ってきたら、私たちがきれいに掃除してあげる!」
「ふふ。みんなありがとう」
私はにぎやかな友人に囲まれながら、夕日色に変わりゆく空を見上げた。
建国祭の終わりを告げる鐘が、心地よく鳴り響いている。
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