【完結】もしそこに、姫が

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆

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7・一緒に

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 ダメだ。
 追いつかれる。

 物々しく追随する足音の意味を、アロンはすぐに理解した。

 感情は走りたがっていたが、理性で押しとどめる。
 アロンは歯を食いしばった。
 覚悟しろ。

 背後で、鋭い音が空を切る。
 アロンはしっかりとエミリマを抱きかかえたまま、横に転がり回避した。
 鈍い音が刺さる。
 アロンが先ほどいた場所に、片手剣が深々と地に突き立っている。

「避けやがって!」

 石畳の隙間に挟まった剣を引き抜こうとしながら、茶髪の近衛騎士が憎々しげに叫んだ。
 アロンは体勢を立て直そうとしたが、背後から出てきた別の騎士が間髪入れず、エミリマに剣を振りかざす。
 間に合わない。
 アロンはエミリマを突き飛ばすと、その利き腕に衝撃を受けた。
 確かな手ごたえだった。
 騎士はにやりとする。その横顔にアロンはためらいなく蹴りを入れた。騎士は白目をむき、そのまま崩れる。
 失神した騎士の剣をアロンは奪うと、怪我をしていないほうの手でエミリマの腕を取り、再び走り出した。
 奪った剣は何とか握れていたが、その腕は血で濡れ、動くたび痛みに襲われる。
 アロンは弱気になりかける自分を必死に励ました。
 あと少し。
 あと少し進めば。
 隣国に行くことができれば、エミリマだけでも、姫から逃げられるはずだ。
 エミリマは真っ青な顔で、アロンの血まみれの腕を見入っている。

「アロン」
「足手まといなんだよ。先に行け!」

 エミリマは何か言いかけたが、悔しそうに唇を噛むと、先に駆け出した。
 その前に、人影が立ちふさがる。
 最後に現れた近衛兵は、低く吐き捨てるように言った。

「さすがだな。サンドワームに襲われた姫と近衛騎士、一人残らず助けたっていうのは本当らしい。今までの動きを見ていても、実力は明らか。油断するな」

 気配を感じる。
 アロンが振り返ると、負傷させた騎士たちに取り囲まれていた。
 彼らは疲労と怪我で息が荒れている。それが余計、鬼気迫って響いた。

「逃がすか」
「失敗すれば、俺たちが終わる」

 かつん、かつんと、ヒールの音が石畳に鳴り響く。
 背後から、のったりとした動作で近づいてくる上質なドレスを着た人影のシルエットが、じわじわと近づいてきた。
 全員の緊迫感が増す。
 アロンは恐怖を抑え込もうと、痛む手を握りしめる。
 肩や腕を伝い、血がぽたりぽたりと滴る。エミリマが小さく息をのんだ。

「アロン、血が……」
「俺じゃない。怪我させたやつらの血だ」

 エミリマはこらえられなくなったように、すすり泣きをはじめる。

「……嘘つき」

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