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8・アロンの手
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エミリマの言葉は切ない嗚咽に変わり、アロンは無力感に襲われた。
元気になって欲しくて村を出たのに、帰ってから悲しませてばかりだった。
ごめんな。
胸の内で呟いてから、アロンはエミリマにだけ聞こえるように、声を落とす。
「北に向かって進め。国境を越えて、トープルカリアへ逃げろ。俺も後で追いつく」
することは、ひとつしかなかった。
アロンは、できる限り安心させられるようにと、震えかける声を抑えて、少し明るく言う。
「だから……一緒に、行こうな」
上手く伝えられた自信がなくても、時間は待ってくれない。
アロンは剣を怪我のない手に持ち直すと、前方に立ちふさがる無傷の近衛騎士へと一気に突き進む。
緊迫の硬直状態が破られ、アロンを迎え撃つ騎士はすぐに身構えたが、アロンは素早い一閃で、相手の剣をなぎ払った。
ひるんだ騎士の脇腹に、衝撃がめり込む。
近衛騎士は横倒しに吹っ飛んだ。アロンはすぐに振り返り、負傷している残りの騎士を警戒する。
前方をふさいでいた騎士は今倒したので、すぐに動けないはずだ。
後は背後からの追跡を遅らせられれば、そのぶんだけ、エミリマの逃げられる可能性が上がる。
「エミリマ、走れ!」
アロンは傷付いた近衛騎士たちの前に立ちふさがった。
血まみれの手で剣を握りしめ、殺気立った声で宣言する。
「何があっても、通さない」
狂気すらにじませた気迫に、騎士たちは一瞬たじろいだ。
しかし彼らにも後に引く選択はない。
騎士たちは剣を握り直すと、アロンめがけて駆ける。
アロンは身構えた。
騎士たちは間合いに入りかけた、その直前で、剣を投げ放った。
想定しなかった動きに、アロンの動きが一瞬遅れる。
気づいたときには、そのうちの一振りがアロンの肩を打ちのめした。
それをきっかけに、今まで忘れていた、あらゆる痛みがどっと戻ってくる。
激痛で意識が一瞬飛び、次に気がづいたとき、アロンは膝をついていた。
そのわずかな隙を逃がさず、近衛騎士たちはアロンを押さえつける。
「放せ!」
アロンは抵抗したが、目をぎらつかせた騎士たちはこの優勢を逃さなかった。
「おとなしく従っていれば、俺たちもこんなことをしなくても済んだんだ。もう、暴れるのはやめてくれ。利き手の一本で、すませてやるから」
微笑む母の面影がよぎった。
アロンは声を上げて暴れたが、傷だらけの身体は数名がかりで押さえつけられ、動く気配すらない。
「動かないほうが、おまえ自身のためだぞ」
仰向けで見上げる夜空の月と、その光を反射する刃先が不気味に光る。
振り下ろされた瞬間、アロンは目を閉じることができなかった。
元気になって欲しくて村を出たのに、帰ってから悲しませてばかりだった。
ごめんな。
胸の内で呟いてから、アロンはエミリマにだけ聞こえるように、声を落とす。
「北に向かって進め。国境を越えて、トープルカリアへ逃げろ。俺も後で追いつく」
することは、ひとつしかなかった。
アロンは、できる限り安心させられるようにと、震えかける声を抑えて、少し明るく言う。
「だから……一緒に、行こうな」
上手く伝えられた自信がなくても、時間は待ってくれない。
アロンは剣を怪我のない手に持ち直すと、前方に立ちふさがる無傷の近衛騎士へと一気に突き進む。
緊迫の硬直状態が破られ、アロンを迎え撃つ騎士はすぐに身構えたが、アロンは素早い一閃で、相手の剣をなぎ払った。
ひるんだ騎士の脇腹に、衝撃がめり込む。
近衛騎士は横倒しに吹っ飛んだ。アロンはすぐに振り返り、負傷している残りの騎士を警戒する。
前方をふさいでいた騎士は今倒したので、すぐに動けないはずだ。
後は背後からの追跡を遅らせられれば、そのぶんだけ、エミリマの逃げられる可能性が上がる。
「エミリマ、走れ!」
アロンは傷付いた近衛騎士たちの前に立ちふさがった。
血まみれの手で剣を握りしめ、殺気立った声で宣言する。
「何があっても、通さない」
狂気すらにじませた気迫に、騎士たちは一瞬たじろいだ。
しかし彼らにも後に引く選択はない。
騎士たちは剣を握り直すと、アロンめがけて駆ける。
アロンは身構えた。
騎士たちは間合いに入りかけた、その直前で、剣を投げ放った。
想定しなかった動きに、アロンの動きが一瞬遅れる。
気づいたときには、そのうちの一振りがアロンの肩を打ちのめした。
それをきっかけに、今まで忘れていた、あらゆる痛みがどっと戻ってくる。
激痛で意識が一瞬飛び、次に気がづいたとき、アロンは膝をついていた。
そのわずかな隙を逃がさず、近衛騎士たちはアロンを押さえつける。
「放せ!」
アロンは抵抗したが、目をぎらつかせた騎士たちはこの優勢を逃さなかった。
「おとなしく従っていれば、俺たちもこんなことをしなくても済んだんだ。もう、暴れるのはやめてくれ。利き手の一本で、すませてやるから」
微笑む母の面影がよぎった。
アロンは声を上げて暴れたが、傷だらけの身体は数名がかりで押さえつけられ、動く気配すらない。
「動かないほうが、おまえ自身のためだぞ」
仰向けで見上げる夜空の月と、その光を反射する刃先が不気味に光る。
振り下ろされた瞬間、アロンは目を閉じることができなかった。
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