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20・解決
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ノクタディットの冷ややかな声が響き渡る。
捕食者に睨まれた獲物のように、扉の外に見苦しく突っ立っているフェアルの父は、身をすくませた。
しかし、年の離れた若者に負けまいと虚勢を張るように、父は無駄に大きな咳払いをしてから、下品に笑う。
「な、なんだね。私は君のためを思ってあらゆる手を尽くしたのだよ。感謝される立場であろう?」
若き領主は冷ややかな笑みで頷いた。
「それは、ありがとうございます。ところで、僕の弟が預り金を渡して引き取った付き人を、勝手に呼びつけて、食事も与えず拘束していたのは本当なのですか。弟は未成年で、オッグス家領主である僕の保護下にあります。つまり、今お話した一連については、保護者である僕に対する礼儀ということでよろしいでしょうか」
「い、いや……誤解だ! それはバカな使用人が勝手にやったことで、そいつはクビに……」
「使用人に責任を負わせるようなことは、必要ありません」
いつものように、目についた使用人のせいにして逃げようとする父を前に、ノクタディットは微笑み続けている。
先ほどから変わらないはずの笑みに、すごみが増した。
「ただ、我が領土である古の森にキーリ領からの侵入者ががあった、という話も出てきていますが、それはご存じで?」
「しっ、失敬な! 証拠があるのか! 私が、そんなこと! するはずがないだろう!」
「もちろんです。ですがもし調査した結果、キーリ領土側から侵入者が毒を投棄していたという話になれば、それは領土間の問題だけではなく、国境を越えた話になりますからね。我が国の王も近年、領土侵犯に非常に敵意を抱いておりますので、ごまかしはできませんし、穏便におさまることもありません。責任を取る準備が必要でしょう」
父は土気色に変色した顔で絶句している。
ノクタディットは涼しい笑顔のまま、フェアルに向き直る。
それが、もう話は終わったという合図だった。
「さぁ、フェアル。疲れただろう。おなかが空いているだろうから、僕の馬車に乗って隣町に向かうといい。山の幸がふんだんの、美味しいお店だからね。僕からのお礼さ」
「おい、兄貴」
先ほどまで静かにしていたカームが、不満そうにフェアルとノクタディットの間に入る。
「余計なこと、するなよ。俺の付き人だぞ」
必死に食い下がる弟に対し、ノクタディットは楽しそうに微笑を浮かべた。
「そうだね。いつもは年寄りぶった足取りで来るくせに、今回はフェアルのために、あんなに全力やってきて……。あれは、過去最高の慌てっぷりだったかな」
「だから変な注釈つけるなって! 別に、俺は、早く手続きが済んだから、ちょっと様子見に来ただけで……だからなんだよ、そのにやけた顔は!」
「もとからだよ」
嬉しそうに嫌がらせを言うノクタディットと、いつもより声量の大きいカームを交互に見ながら、フェアルはカームが子ども扱いされることに劣等感を持っている理由が、なんとなくわかった気がした。
ノクタディットは、楽しい時間を終える合図をするように、カームの肩を軽くたたく。
「僕が感謝の気持ちから、フェアルにごちそうすることを変えるつもりはないよ。だけど、そうだな。普段なら5000ロムもらうところだけど、今回はよく働いてくれたお礼に、カームにもタダでごちそうするよ。それでいいだろ?」
「ケチか」
「我が家の倹約は伝統だよ。ほら、ふたりで仲良く行っておいで。僕はもう少し、退屈な話をする必要があるみたいだから」
ノクタディットが視線を送ると、フェアルの父は戦意すら失った様子で身を震わせた。
フェアルは少し心配になったが、カームに手を引かれたので、そのままついていく。
「さっさと行くぞ。俺は兄貴と同じ場所にいたくない」
「お父様、大丈夫かしら」
「さぁな。兄貴はただ、感情的なことは抜きに事実を確認して、それ相応に判断していくやつだ。そういうのは得意なやつに任せて、フェアルはこれからうまいもの食べに行くんだから、そっちを楽しめよ」
一言一言から、カームなりの気づかいにあふれてることが、フェアルにはわかった。
感謝を伝えようと思ったが、つないだ手を意識すると急に恥ずかしくなり、つい声が小さくなる。
捕食者に睨まれた獲物のように、扉の外に見苦しく突っ立っているフェアルの父は、身をすくませた。
しかし、年の離れた若者に負けまいと虚勢を張るように、父は無駄に大きな咳払いをしてから、下品に笑う。
「な、なんだね。私は君のためを思ってあらゆる手を尽くしたのだよ。感謝される立場であろう?」
若き領主は冷ややかな笑みで頷いた。
「それは、ありがとうございます。ところで、僕の弟が預り金を渡して引き取った付き人を、勝手に呼びつけて、食事も与えず拘束していたのは本当なのですか。弟は未成年で、オッグス家領主である僕の保護下にあります。つまり、今お話した一連については、保護者である僕に対する礼儀ということでよろしいでしょうか」
「い、いや……誤解だ! それはバカな使用人が勝手にやったことで、そいつはクビに……」
「使用人に責任を負わせるようなことは、必要ありません」
いつものように、目についた使用人のせいにして逃げようとする父を前に、ノクタディットは微笑み続けている。
先ほどから変わらないはずの笑みに、すごみが増した。
「ただ、我が領土である古の森にキーリ領からの侵入者ががあった、という話も出てきていますが、それはご存じで?」
「しっ、失敬な! 証拠があるのか! 私が、そんなこと! するはずがないだろう!」
「もちろんです。ですがもし調査した結果、キーリ領土側から侵入者が毒を投棄していたという話になれば、それは領土間の問題だけではなく、国境を越えた話になりますからね。我が国の王も近年、領土侵犯に非常に敵意を抱いておりますので、ごまかしはできませんし、穏便におさまることもありません。責任を取る準備が必要でしょう」
父は土気色に変色した顔で絶句している。
ノクタディットは涼しい笑顔のまま、フェアルに向き直る。
それが、もう話は終わったという合図だった。
「さぁ、フェアル。疲れただろう。おなかが空いているだろうから、僕の馬車に乗って隣町に向かうといい。山の幸がふんだんの、美味しいお店だからね。僕からのお礼さ」
「おい、兄貴」
先ほどまで静かにしていたカームが、不満そうにフェアルとノクタディットの間に入る。
「余計なこと、するなよ。俺の付き人だぞ」
必死に食い下がる弟に対し、ノクタディットは楽しそうに微笑を浮かべた。
「そうだね。いつもは年寄りぶった足取りで来るくせに、今回はフェアルのために、あんなに全力やってきて……。あれは、過去最高の慌てっぷりだったかな」
「だから変な注釈つけるなって! 別に、俺は、早く手続きが済んだから、ちょっと様子見に来ただけで……だからなんだよ、そのにやけた顔は!」
「もとからだよ」
嬉しそうに嫌がらせを言うノクタディットと、いつもより声量の大きいカームを交互に見ながら、フェアルはカームが子ども扱いされることに劣等感を持っている理由が、なんとなくわかった気がした。
ノクタディットは、楽しい時間を終える合図をするように、カームの肩を軽くたたく。
「僕が感謝の気持ちから、フェアルにごちそうすることを変えるつもりはないよ。だけど、そうだな。普段なら5000ロムもらうところだけど、今回はよく働いてくれたお礼に、カームにもタダでごちそうするよ。それでいいだろ?」
「ケチか」
「我が家の倹約は伝統だよ。ほら、ふたりで仲良く行っておいで。僕はもう少し、退屈な話をする必要があるみたいだから」
ノクタディットが視線を送ると、フェアルの父は戦意すら失った様子で身を震わせた。
フェアルは少し心配になったが、カームに手を引かれたので、そのままついていく。
「さっさと行くぞ。俺は兄貴と同じ場所にいたくない」
「お父様、大丈夫かしら」
「さぁな。兄貴はただ、感情的なことは抜きに事実を確認して、それ相応に判断していくやつだ。そういうのは得意なやつに任せて、フェアルはこれからうまいもの食べに行くんだから、そっちを楽しめよ」
一言一言から、カームなりの気づかいにあふれてることが、フェアルにはわかった。
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