21 / 22
21・ありがとう
しおりを挟む
「カーム、急いできてくれて、ありがとう。門のところで、返事をしてくれなかったから。私、嫌われたかもしれないって、怖かったの」
「ガキだからな、俺」
「え?」
「兄貴の言う通りだから。俺、好きにすればいいとか言ったけど。ここに来させるの、本当に嫌だったし。実際、フェアルはあんな家で育って、自分のしたいことに鈍いようなところもあるから、色々考えるのには、ちょうどいいと思ったんだけど……。フェアルの来客が誰なのか考えだしたら、俺、解毒に関しての手配中も落ち着かないし。気になるし。だから即行で終わらせて、全然余裕ない状態で、ここに乗り込んだんだよ。それで、兄貴がいて……で、事情知られて、からかわれて……。いつになったら、こんなガキっぽい自分から抜け出せるんだろうな」
フェアルはそっと、カームの後ろ姿を見上げる。
離れていた時の心細さを思い出すと、胸の奥がうずいて、今までとは違う気持ちで、泣きたくなった。
「私は、ただ……カームが来てくれたから。嬉しい」
「俺の方だよ」
「え?」
「フェアルが戻ってきて、よかった」
ずいぶん小さな声だったので、フェアルは聞き間違いかと見上げる。
カームの耳が、火傷でもしたのかと思うほどに赤い。
見間違いかと思い、横顔を凝視する。
耳だけでなく、全体的に、赤い。
フェアルは口を開いたが、何を言えばいいのか分からず、言葉が出てこなかった。
「見るなよ」
17歳の青年は、フェアルと目を合わせず、赤面を空いている方の腕で隠した。
「だから、見るなって。俺、こういうの、慣れてない」
「ご、ごめんね。突然言われたから、びっくりして。だけど、カームが気持ち、言おうとしてくれてるの、わかるよ。その、あの……」
なんとか意思疎通をしようとしているうちに、フェアルの顔まで熱くなってくる。
普段は博識に裏打ちされた考察と判断で、自分よりずっと落ち着いて見えるというのに、不器用に感情を伝えられると、今までどうやって接していたのか、わからなくなった。
カームは大きく息を吐いてから、小さく笑った。
「……本当、嫌になる。俺、ずっとごまかしてきたから。それっぽく見せることばかり得意になったけど、それって子どもでも、大人でもないんだな。フェアルは恥ずかしげもなく、思ったことを垂れ流してるけど、俺、無理だし」
「私、垂れ流しているつもりは……」
「いつも全身から、とくに目玉から垂れ流してるだろ、フェアルは。俺には無理だ」
「私、わかるよ。今、カームが恥ずかしがってること」
「そこはわからないふりしろよ」
「できないよ、わかるんだもん」
「おまえな……」
「それに、昨日から嬉しい。誰かにお礼を言われるなんて……10年以上、なかったから」
フェアルは恥ずかしそうにはにかむと、カームは「今日は兄貴の方が、先に言ってたけどな」と不満げにつぶやく。
「フェアルは大人だな」
「変なの。カームの方が、私には大人に見えるのに」
少し離れたところから、ノクタディットの茶化すような合いの手が入る。
「かっこつけてるだけだよー」
「うるさい! 地獄耳やめろ!」
カームは怒鳴り返すと、フェアルの手を強く引いてくる。
それは強引でもなく、乱暴でもなく、ただついていきたいと思わせる安心感があった。
「行くぞ」
返事の代わりに、フェアルは、ありったけの勇気を出して、大きな手を握り返した。
「ガキだからな、俺」
「え?」
「兄貴の言う通りだから。俺、好きにすればいいとか言ったけど。ここに来させるの、本当に嫌だったし。実際、フェアルはあんな家で育って、自分のしたいことに鈍いようなところもあるから、色々考えるのには、ちょうどいいと思ったんだけど……。フェアルの来客が誰なのか考えだしたら、俺、解毒に関しての手配中も落ち着かないし。気になるし。だから即行で終わらせて、全然余裕ない状態で、ここに乗り込んだんだよ。それで、兄貴がいて……で、事情知られて、からかわれて……。いつになったら、こんなガキっぽい自分から抜け出せるんだろうな」
フェアルはそっと、カームの後ろ姿を見上げる。
離れていた時の心細さを思い出すと、胸の奥がうずいて、今までとは違う気持ちで、泣きたくなった。
「私は、ただ……カームが来てくれたから。嬉しい」
「俺の方だよ」
「え?」
「フェアルが戻ってきて、よかった」
ずいぶん小さな声だったので、フェアルは聞き間違いかと見上げる。
カームの耳が、火傷でもしたのかと思うほどに赤い。
見間違いかと思い、横顔を凝視する。
耳だけでなく、全体的に、赤い。
フェアルは口を開いたが、何を言えばいいのか分からず、言葉が出てこなかった。
「見るなよ」
17歳の青年は、フェアルと目を合わせず、赤面を空いている方の腕で隠した。
「だから、見るなって。俺、こういうの、慣れてない」
「ご、ごめんね。突然言われたから、びっくりして。だけど、カームが気持ち、言おうとしてくれてるの、わかるよ。その、あの……」
なんとか意思疎通をしようとしているうちに、フェアルの顔まで熱くなってくる。
普段は博識に裏打ちされた考察と判断で、自分よりずっと落ち着いて見えるというのに、不器用に感情を伝えられると、今までどうやって接していたのか、わからなくなった。
カームは大きく息を吐いてから、小さく笑った。
「……本当、嫌になる。俺、ずっとごまかしてきたから。それっぽく見せることばかり得意になったけど、それって子どもでも、大人でもないんだな。フェアルは恥ずかしげもなく、思ったことを垂れ流してるけど、俺、無理だし」
「私、垂れ流しているつもりは……」
「いつも全身から、とくに目玉から垂れ流してるだろ、フェアルは。俺には無理だ」
「私、わかるよ。今、カームが恥ずかしがってること」
「そこはわからないふりしろよ」
「できないよ、わかるんだもん」
「おまえな……」
「それに、昨日から嬉しい。誰かにお礼を言われるなんて……10年以上、なかったから」
フェアルは恥ずかしそうにはにかむと、カームは「今日は兄貴の方が、先に言ってたけどな」と不満げにつぶやく。
「フェアルは大人だな」
「変なの。カームの方が、私には大人に見えるのに」
少し離れたところから、ノクタディットの茶化すような合いの手が入る。
「かっこつけてるだけだよー」
「うるさい! 地獄耳やめろ!」
カームは怒鳴り返すと、フェアルの手を強く引いてくる。
それは強引でもなく、乱暴でもなく、ただついていきたいと思わせる安心感があった。
「行くぞ」
返事の代わりに、フェアルは、ありったけの勇気を出して、大きな手を握り返した。
18
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
過労死して転生したので絶対に働かないと決めたのに、何をしても才能がバレる件
やんやんつけバー
ファンタジー
過労死して異世界転生。今度こそ絶対に働かないと決めたのに、何をやっても才能がバレてしまう——。農村で静かに暮らすはずが、魔力、農業、医療……気づけば誰も放っておかない。チートで穏やか系の異世界スローライフ。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています
きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...
冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる