【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆

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42 奇跡の空

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   ◇

 その後。
 自らの落雷で倒れたコルヴォンは、無事に拘束された。

 私はようやく胸を撫で下ろし、広間へと急いだ。
 公爵はまだラウルドの護送中だろうけれど、啓示の儀は終盤を迎えているはずだ。

(なにかしら。魔力の気配がじわじわ増しているような……)

 広間の扉を開いた瞬間、どっと歓声が押し寄せてくる。

 儀の終わりを告げる、大司教の聖典朗誦に盛り上がっているのではなく――
 それどころか大司教まで、参列者たちと同じように、そろって窓の外を見上げている。
 
「おかぁしゃま、しゅごいのっ! みて!」

 駆け寄ってきたエトワールに手を引かれ、窓辺まで連れて行かれる。

 見上げる青空を、大きな白い雲がゆっくりと滑っていく。
 サンタがトナカイの引くソリに乗っているかのような形だ。

(さっき羽ペンで描いた空模様、完璧に再現できてるわ!)

 エトワールはそのサンタ雲に向かって、ぺこりと頭を下げた。

「サンタしゃん。レオしゃまのたからもの、とどけてくれて、ありがとでしゅ!」

 まるでその声が届いたかのように、サンタ雲がふわりと手を振る。

 エトワールが笑っている。
 それだけで、全部報われた気がする。

 繋いでいた小さな手が、私の手をぎゅっと握る。

「おかぁしゃま……あのね。エト、おなかいっぱいって、なってきたの」

 エトワールは両手でお腹を押さえる。
 私はその上に、そっと掌を重ねる。

「おなかいっぱいなの?」

「あい。ぽかぽかって」

 悪喰の感覚で探ると、違和感の正体はすぐに分かった。
 エトワールの魔力、それに周囲にいる人の魔力までもが、じわじわと高まっている。

(広間の魔力の気配が増していく感じは、これだったのね)

 私も食後に魔力が貯められる体質に変化していた。
 他の人たちの魔力にも、なんらかの影響があったのかもしれない。

 でも、エトワールだけは特別だった。
 小さな身体に秘めた膨大な魔力が、内側から急激に膨れ上がっていく。

(今は「おなかいっぱい」で済んでいる。でも、このままだと……)

 公爵の後継に選ばれるだけの資質を持っている証拠。
 けれど、子供の身体には大きすぎる。

「エトのおなか、ぽんぽんよ。サンタしゃんクッキー、あしたになっちゃう」

 考えるより先に体が動いていた。
 私はエトワールをぎゅっと抱きしめる。

(私が、この子を守るのよ!)

 悪喰でそっとエトワールの魔力に触れる。

 奪うわけでも、抑え込むわけでもなく。
 奔流のように溢れるそれを、ただ受け止めていく。

 大聖堂に満ちた静寂の中、私の足元が輝く。

 そこに強い光が集まると、一気に弾ける。
 床いっぱいに広がったのは、巨大な魔術陣だ。

 高い天井に、大聖女の明るい声が響く。

「これが『しょうかん』ですのね!」

 魔術陣から飛び出したのは、巨大なクリスマスツリー。続いてプレゼント箱。
 さらに、ぴょこんと飛び出すリース、キャンドル、キラキラ輝く飾り――

 人々が歓声を上げる中、大聖堂の床はみるみるうちに埋め尽くされていく。
 まるで盛大なクリスマスパーティーのようだった。

 けれど、それだけ召喚で魔力を使っても、エトワールの魔力は尽きない。

 魔術陣からは次々と品が現れ続け――

 そのとき、ひときわ強い虹色の光が弾けた。

(なにこれ……あっ!)

 光は天井へと昇り、人々の視線が一斉に釘付けになる。
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