38 / 42
ep3
姉妹
しおりを挟む
パール以下X"エッグスの面々が玉座の間から退出しようとした時に、姉のダイヤと出会った。
「パール。あなたが久しぶりに戻って来たと聞いて会いにきたのに、もうどこかに行くの」
「お姉様、お久しぶりです。
王様との話は終わりましたので、部屋に戻る所です。」
「そう。
それで、この方たちは?」
ダイヤはチェックするようにパックたちを見回した。
「彼らはみな私の学院からの友だちで、冒険者パーティーの仲間よ。そして、彼は私の夫のパック、その両脇に居るのが彼の第二夫人の聖女シンディと第三夫人の魔人アイ。
あとの二人も夫婦で夫が魔剣士ミューラー妻が剛拳メーリールーよ。」
「えっ あなた結婚したの。
しかも側室二人がいる人と。
見ればみんな平民よね。
それに魔人って、何?人間でも無いの。
王様がそんなことお許しになるはずないわ。」
先程まで きどった感じだったダイヤが興奮してまくしたててきた。
「許すも何も、結婚したから報告をしにきたのよ。
いわゆる事後承諾ね。
フフフ。
お姉様は、心配しなくてもいいわ。適当な貴族に嫁がせてあげるから」
パールは、仁王立ちでダイヤに話した。
「えっ、何よその『適当な貴族に嫁がせてあげる』って
あなた王様にでもなったつもりなの。」
ダイヤはぐいっとパールに向って一歩踏み出した
「ああ、言い忘れたかしら。
二月後には私が女王となる戴冠式があるから。
姉さんも出席してね。」
「女王。戴冠式ですって!
冗談言わないでよ。
ちょっと、あなた そこどきなさい」
ダイヤはパックたちを割るように通り過ぎて玉座へと向かった。
パックはパールを覗き込む
「行かなくてもいいの」
「問題ないわ」
少しして
「ウソよ~ そんなの
パールが女王だなんて」
ダイヤの泣き叫ぶ声が聞こえてきた。
「寄生虫は、早めに駆除しないとね。平民に落としてあげるから、待ってなさい。お姉様」
パールが小声で言った独り言をパックは聞き漏らさなかった。
パールがこんな感情をこれまで持ち続けていたことを改めて知って、パックは驚いた。
姉妹は、お互いに憎み合ってるように感じた。
権力者の椅子はそれほど迄に魅力的なのだろうか。
庶民生まれのパックには理解できなかった。
王ともなれば、自分の気持ち一つで他国に戦争を仕掛けることもできる。
何十万の人を殺し合いの地に送り込むことができる。
人を人とも思わず、ただの駒と思わなかったら、とてもそんなことは出来ないはずだ。
自分は、特別な存在だと信じて疑わない。そんな考えに支配された人間なのだろう。
パールは、「国を食い物にしてる貴族の富を再分配して、優秀な平民を登用したい」と言った。
そのこと自体は立派だと思う。
だが目の前で、力づくで王様を廃し姉を蔑ろにする姿は、別人のように思えた。
そして、それに加担している自分がいる。
パックは、自分もそっち側の人間になりつつ有る様に感じていた。
もう、ここまで来たら後戻りはできない。
せめて、パールが暴走しないようにするのが自分の役目だと思った。
◇
その夜、パックはダイヤの寝所に忍びこんだ。
夜鴉からコピーした『隠密』が早速役にたった。
姿をダイヤに見せないまま、鉄糸で拘束して、頭に鉄糸を打込み記憶を探った。
これは、もちろんアイのスキルだ。
ダイヤの記憶の中には、刺客に通じる内容は、無かった。
パックは、どうしてそこまで姉妹で反目し合うのか気になり、ダイヤの過去を探ってみた。
すると、幼い日の記憶にはパールを可愛がるダイヤがいた。
ダイヤは、パールと遊びたかった。王宮の中では同じ年頃の子どもはパール以外一人もいなかった。
それなのにダイヤの母親イザベラは、ダイヤがパールの所に行くのを許さなかった。
「あっちは、正室の娘、おまえは側室の娘だよ。
ああ、あの娘さえいなければねぇ、おまえが成人したら女王になれるところだったのに。
年下だからって、気を許したりしちゃだめよ。
おまえの方がずっと優秀なら、チャンスはきっと来るはずよ。
パールは、あなたの敵よ敵。
わかった」
イザベラは、ダイヤにパールを敵と思うようにすり込み、かつ教養も、魔法も常にトップクラスであり続けるよう求めた。
ダイヤは、イザベラの思いに応えようと、次第にパールを敵と認識するようになり、優秀だと認められるように必死で努力を重ねたのだった。
歳を重ねると共に、ダイヤは、周りから優秀だと認められるようになり、パールに対しては「出来の悪い第一王女」と公言してはばからなくなった。
ダイヤとしては、自分の方がより次期女王として相応しいと周囲にアピールしていたのだ。
その頃のパールは、成績は平凡ながら、男子顔負けに短槍を振り回していた。
わがままな言動も多かったが、裏表の無い性格に好感度は高かった。
それに対してダイヤは、母親に似てきらびやかな衣装を着て、パーティーや観劇が趣味だった。
ダイヤがパールに負けている部分は、その見た目と周囲からの好感度たった。
パールの美しさは、王女としての風格と共に飛び抜けていた。
それがパールの好感度を高めている一番の要因だとダイヤは思っていた。
ダイヤがどんなに頑張っても、「実力のダイヤ、人気のパール」はくつがえらず、パールへの憎しみをつのらせていた。
パックは、ダイヤから鉄糸を抜き拘束を解いて『聖なる風』を吹きかけて、部屋を出た。
跡目争いが無ければ、仲のいい姉妹になれたのかもと思いながら、自分の部屋に戻った。
部屋に戻ってみると、パール、シンディ、アイの3人の妻がパックを待ち構えていた。
「パール。あなたが久しぶりに戻って来たと聞いて会いにきたのに、もうどこかに行くの」
「お姉様、お久しぶりです。
王様との話は終わりましたので、部屋に戻る所です。」
「そう。
それで、この方たちは?」
ダイヤはチェックするようにパックたちを見回した。
「彼らはみな私の学院からの友だちで、冒険者パーティーの仲間よ。そして、彼は私の夫のパック、その両脇に居るのが彼の第二夫人の聖女シンディと第三夫人の魔人アイ。
あとの二人も夫婦で夫が魔剣士ミューラー妻が剛拳メーリールーよ。」
「えっ あなた結婚したの。
しかも側室二人がいる人と。
見ればみんな平民よね。
それに魔人って、何?人間でも無いの。
王様がそんなことお許しになるはずないわ。」
先程まで きどった感じだったダイヤが興奮してまくしたててきた。
「許すも何も、結婚したから報告をしにきたのよ。
いわゆる事後承諾ね。
フフフ。
お姉様は、心配しなくてもいいわ。適当な貴族に嫁がせてあげるから」
パールは、仁王立ちでダイヤに話した。
「えっ、何よその『適当な貴族に嫁がせてあげる』って
あなた王様にでもなったつもりなの。」
ダイヤはぐいっとパールに向って一歩踏み出した
「ああ、言い忘れたかしら。
二月後には私が女王となる戴冠式があるから。
姉さんも出席してね。」
「女王。戴冠式ですって!
冗談言わないでよ。
ちょっと、あなた そこどきなさい」
ダイヤはパックたちを割るように通り過ぎて玉座へと向かった。
パックはパールを覗き込む
「行かなくてもいいの」
「問題ないわ」
少しして
「ウソよ~ そんなの
パールが女王だなんて」
ダイヤの泣き叫ぶ声が聞こえてきた。
「寄生虫は、早めに駆除しないとね。平民に落としてあげるから、待ってなさい。お姉様」
パールが小声で言った独り言をパックは聞き漏らさなかった。
パールがこんな感情をこれまで持ち続けていたことを改めて知って、パックは驚いた。
姉妹は、お互いに憎み合ってるように感じた。
権力者の椅子はそれほど迄に魅力的なのだろうか。
庶民生まれのパックには理解できなかった。
王ともなれば、自分の気持ち一つで他国に戦争を仕掛けることもできる。
何十万の人を殺し合いの地に送り込むことができる。
人を人とも思わず、ただの駒と思わなかったら、とてもそんなことは出来ないはずだ。
自分は、特別な存在だと信じて疑わない。そんな考えに支配された人間なのだろう。
パールは、「国を食い物にしてる貴族の富を再分配して、優秀な平民を登用したい」と言った。
そのこと自体は立派だと思う。
だが目の前で、力づくで王様を廃し姉を蔑ろにする姿は、別人のように思えた。
そして、それに加担している自分がいる。
パックは、自分もそっち側の人間になりつつ有る様に感じていた。
もう、ここまで来たら後戻りはできない。
せめて、パールが暴走しないようにするのが自分の役目だと思った。
◇
その夜、パックはダイヤの寝所に忍びこんだ。
夜鴉からコピーした『隠密』が早速役にたった。
姿をダイヤに見せないまま、鉄糸で拘束して、頭に鉄糸を打込み記憶を探った。
これは、もちろんアイのスキルだ。
ダイヤの記憶の中には、刺客に通じる内容は、無かった。
パックは、どうしてそこまで姉妹で反目し合うのか気になり、ダイヤの過去を探ってみた。
すると、幼い日の記憶にはパールを可愛がるダイヤがいた。
ダイヤは、パールと遊びたかった。王宮の中では同じ年頃の子どもはパール以外一人もいなかった。
それなのにダイヤの母親イザベラは、ダイヤがパールの所に行くのを許さなかった。
「あっちは、正室の娘、おまえは側室の娘だよ。
ああ、あの娘さえいなければねぇ、おまえが成人したら女王になれるところだったのに。
年下だからって、気を許したりしちゃだめよ。
おまえの方がずっと優秀なら、チャンスはきっと来るはずよ。
パールは、あなたの敵よ敵。
わかった」
イザベラは、ダイヤにパールを敵と思うようにすり込み、かつ教養も、魔法も常にトップクラスであり続けるよう求めた。
ダイヤは、イザベラの思いに応えようと、次第にパールを敵と認識するようになり、優秀だと認められるように必死で努力を重ねたのだった。
歳を重ねると共に、ダイヤは、周りから優秀だと認められるようになり、パールに対しては「出来の悪い第一王女」と公言してはばからなくなった。
ダイヤとしては、自分の方がより次期女王として相応しいと周囲にアピールしていたのだ。
その頃のパールは、成績は平凡ながら、男子顔負けに短槍を振り回していた。
わがままな言動も多かったが、裏表の無い性格に好感度は高かった。
それに対してダイヤは、母親に似てきらびやかな衣装を着て、パーティーや観劇が趣味だった。
ダイヤがパールに負けている部分は、その見た目と周囲からの好感度たった。
パールの美しさは、王女としての風格と共に飛び抜けていた。
それがパールの好感度を高めている一番の要因だとダイヤは思っていた。
ダイヤがどんなに頑張っても、「実力のダイヤ、人気のパール」はくつがえらず、パールへの憎しみをつのらせていた。
パックは、ダイヤから鉄糸を抜き拘束を解いて『聖なる風』を吹きかけて、部屋を出た。
跡目争いが無ければ、仲のいい姉妹になれたのかもと思いながら、自分の部屋に戻った。
部屋に戻ってみると、パール、シンディ、アイの3人の妻がパックを待ち構えていた。
1
あなたにおすすめの小説
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい
寿明結未(旧・うどん五段)
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。
ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。
ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。
時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。
だから――。
「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」
異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ!
============
小説家になろうにも上げています。
一気に更新させて頂きました。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜
リョウ
ファンタジー
僕は十年程闘病の末、あの世に。
そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?
幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。
※画像はAI作成しました。
※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる