魔王の子

烏帽子 博

文字の大きさ
20 / 22
第二章

捕虜BB

しおりを挟む
治癒魔法の甲斐があって、助けた敵兵は、回復した。
彼女が最初に発した言葉は
「どうして………」
それっきり口をつぐんだ。

「あなたはソーレン星人の唯一の生き残りよ。
我々に協力するなら、殺しはしない。
色々喋って貰うわよ」

フウリンがそう話しかけると
彼女はジェスチャーで

口を指差し
手を胸の前でクロスして☓を作り
手を上に向けて、グーからパーをした。

「喋れない理由は、爆弾?」

彼女は心臓の当たりを指差してから、グーパーをして頭を縦に振った。

ー タマ、彼女の全身を探知で調べて異物が無いか診てくれる。特に脳と心臓付近を注意して ー

ー 頭部には、チップが有ります。心臓のそばに、パワーの塊があって、手の銃口や足にも繋がってます。内臓は退化してほとんど機能してなかったみたいです。先程のパワーの塊が脳や心臓を動かしていたようです。ー

ー タマ、彼女の頭のチップは、取り除いても命に問題無いかしら。ー

ー たぶん大丈夫としか言えません ー

ー じゃあ本人に確認するしか無いわね。ー

「ねぇあなた これからあなたの頭の中のチップを取り除こうと思うんだけど、それであなたが死んだり、爆発することは無いかしら?」

彼女は胸の前で祈るように手を組み、頭を縦に振った。

ー マオ、タマラが調べた情報を共有して、頭の中のチップを結界で包んで消し去って ー

タマと手を繋ぐと、タマの魔力と共に敵の女の体を調べた情報が全て流れ込んできた。

私はタマと手を離し、念のため敵の女と自分の二人の周りに結界を張った。
頭に手をのせて、探知を行う。
タマのように得意ではないけど、タマのくれたマップに従って診ていくと、ソレはあった。

ソレにいくつかの神経も繋がっているので、慎重に結界をチップの周りに作り出して、チップを取り除いた。
無事爆発が起きることもなくチップは取り出せた。
すぐに治癒魔法をかけ始めた。

するとセーラがきて、
「私に任せて、治癒魔法じゃだめよ、再生魔法じゃないとね」

セーラが彼女の頭に手をのせて少しすると、彼女は目を開けた。

フウリンが、彼女に話しかける。
「もう大丈夫、頭の中のチップは取れたわ。ここにいる人以外には、あなたの言葉を盗み聞くことは出来ないわ。
最初の話に戻るわよ。
私たちに協力するなら、あなたを殺しはしない。
どう?あなたも自爆するの?」

「協力します。自爆はしません。
頭のチップを取り除いてくれてありがとうございます。
これで最期は人として生きられます」

「あなたの名前は?ソーレン星人は、この基地以外にどのくらいいるの。」

「私はBB069です。ここの他、はウクラ星とリミア星の基地、合わせて50人位だと思います。
他にこの基地から飛び立っていってる兵士が3名程います。
まずその3名が戻って来るはずです。」

「その3人はAK135って奴より強いのかしら。」

「はい、ですが、こちらの皆さんの方が実力は上だと思います。」

「何で私たちに協力する気になったの?」

「私たち兵士は皆改造され頭の中にチップを埋められて、常にマザーに監視され、支配されています。
先程自爆したBB096は私の友だちでした。
自爆するように命令されたんです。
私が投降するふりをして、味方に後から撃ち抜かれたのも命令でした。
私は、バッテリーを使いきればそれで生命も終わりです。
その時まで、マザーの司令ではなく自分の意思で行動できれば本望です」

「BB069 う~ん 本当の名前とかないの?番号とか記号じゃ無くてさ」

「改造されたときに、それ以前の記憶は消去されたのでわかりません。」

「それじゃあポコが名前つけてあげる。
ポコは、元はアイシャって名前なの。
でもね マオマオとタマがポコって呼び名をつけてくれたのよ。
私 ポコって名前気に入ってるんだ~
それでね、BBだから、ブリジットがいいと思ったんだ。それともそのままビービーにするってのもいいかなぁ?」

「ポコさん ありがとうございます。ブリジット、いい名前ですね。皆さんそう呼んで下さい。」

「ブリジット 君以外の君の仲間は頭のチップを取ればどうなると思う?」

「多分変わらないと思います。私は96とよく話していたんです。
他の星を侵略して、たくさんの人を殺すのが、私たちの仕事。私たちは、そのための道具。
わかっていたんです。
でも彼女が自爆して悲しかったんです。
何でこんな死に方しなきゃいけないんだろうって。
私のこんな感情も、次にメンテナンスを受けたら消えるはずだったんです。
だから、きっと兵士は何をしても最後まで抵抗すると思います。
ウクラ星とリミア星のマザーを壊して下さい、そしてウクラ星に残る、まだ改造されてない子どもたちを救って下さい。」

その後、ブリジットの言葉通り3人のAランク兵士が戻って来た。
話をするどころか、こちらを見かけるなり攻撃してきたので、返り討ちにした。
捕まえてチップを壊すなど
とてもできることでは無かった。
ブリジットは、ソーレン兵が殺されるのを、黙って見ていた。

ドックに残された宇宙船をブリジットにセットしてもらい、
まずリミア星へと全員で向かった。
ブリジットに、宇宙船での充電を薦めたが「また人で無くなる気がする」と拒否された。

リミア星到着間近に管制塔から連絡が来た。

「貴舟の指揮官名を、知らせよ。リミア星への到着目的を答えよ。返答なき場合は、直ちに撃墜する」

「全弾発射!」

「ブリジット!どうした?」

「撃ちました!そして、攻撃が来ます!」

ー マオマオ、ブリジットをお願い! みんな!戦闘開始よ!ー

私たちは、宇宙船を捨てて船外に出た。
「マオさん私はいつ死んでもいいです。
私に構わず思いっきり戦って下さい。」

ブリジットは力無く落ちていった。

こちからのミサイルは、ほぼ撃ち落とされたが、一基だけ管制塔に命中した。

わらわらと兵士が飛び出して来て空中戦になった。

彼らの放つビームへの対策は各自済んでいる。
それほど時間をかけることもなく、殲滅した。

戦闘が終わるとブリジットが泥だらけで姿を現した。

「マザーは、あの建物の中央です。
電源はその地下です。
私はおじゃまでしょうから、ここで皆さんの成功を祈ってお待ちしてます」

ブリジットは、どう感じているんだろう。
この間まで仲間だった人たちが、われわれに次々と殺されてゆくのに手を貸して、黙って見届けているんだ。
苦しいに決まっているはずだ。

ー マオマオ、行くよ!ー
タマに促されて、私もマザーの破壊に向った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...