魔王の子

烏帽子 博

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第二章

救出

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リミア星のソーレン軍はマザーコンピューターとともに一掃した。

かつてはここにもリミア星人が居たそうだが、今は廃墟を残すのみだ。

私は自問していた。
自我を奪われている人は、人では無いのかしら?
敵ではあっても、最早私たちの前では驚異ではない。
虫けらのように潰して行くことに抵抗を感じ出していた。

ブリジットが
「皆さん、リミア星の解放、ご苦労さまです。残るは現在の母星 ウクラ星です。
ここでの戦いはウクラ星のマザープーチに届いているはずです。
当然対策を考えているはずです。子どもたちをできれば解放していただきたいと思いますが、この宇宙の平和のためには、なにをおいても、マザープーチの抹殺、破壊をお願いします。
どんな犠牲を払っても、達成して下さい。」

普通の女性が兵器に改造され戦地に送られ、ノーと言えない戦いに組み込まれる。
こんなことは不条理だ。
だけど、それだからと言って、その元凶を潰すためには、他の全てを犠牲にしても許されるのか?

私はどうだ?
無敵と言われ、敵兵をなぎ倒し、それが正義と言われてる。

敵兵だって、死にたくないだろう。
自分の家族を、村を、町を、国を守る為に命をかけて戦っているんだ。

私たちは、この星で全ての敵兵を抹殺した。
次は敵の母星だ。
私たちのやってることは、彼らと同じ、侵略者じゃあ無いかしら?
ブリジットの望み、子どもたちの解放は、私も素晴らしいと思う。
誰かが助けなかったら、その子らも改造され戦士として他の星の侵略の道具とされる運命が待っているんだ。

それでも自分の中で躊躇せずに敵を殺す勇気がだんだん薄らいで行く。

これから敵の母星での決戦、しかも子どもたちの救出を前にマオはジレンマに陥っていた。

ウクラ星攻略にむけては、その第一に無事に潜入出来るかだ。
リミア星からの宇宙船に対しては、問答無用で攻撃をして来るはずだ。
いくら強い戦闘力がある私たちでも、宇宙空間で船外に放り出されるようなことになれば、ひとたまりもない。

私たちは、ウクラ星の衛星イーナに一旦着陸した。
既に我々の行動は、マザープーチの監視下に有るだろう。
でもこの衛星軌道迄遠くへの直接攻撃手段は無いだろう。

そんな油断をした矢先、ビームでの攻撃を受けた。

やはり待ち伏せをされていた。

「みんな宇宙服を着て応戦を」
ブリジットが機銃を撃ちながら叫んだ。

「代わるわ」タマがブリジットの肩に手をのせて話しかけた。

「あなたには、辛いでしょう。それに、狙撃は私に任せて」

タマは、機銃の射程内の敵をすぐに一掃した。
そして、船外に出たフウリンたちが、残る敵を倒している。

敵が乗ってきた一人用宇宙船
これをブリジットが操作して、目的地をウクラ星にセットし、私が乗り込んだ。

飛び立ってすぐに、前が見えない程の攻撃が降ってきた。
この大きさの宇宙船なら、充分結界が張れる。
結界が全ての攻撃に対処して、大気圏に入った。
すると地上からの攻撃が止み、私の宇宙船は無事着陸した。

当然周りはぐるっとソーレン兵に囲まれている。ハッチを開けて外に出ると、そこらじゅうからビームが発射されてくる。

私にそんなものは効かない。
わかっているはずだ。
それなのになぜ、無駄なことを。

その時、宇宙船が一機飛びたった。
そしてまた一機と、バラバラな方向に向けて数機が飛び立って行く。

それに続けて一人用宇宙船も飛び立って行く。

今私が乗ってきた一人用宇宙船のハッチがしまりこれも飛び立って行った。

一方ブリジットの船でも
「船のコントロール権を奪われたわ、もう外にも出られない」

ー マオ そっちにはまだ行けない?こっちの掃除は終わったけど ー

ー 周り中敵兵で、ビームの中にいます。もう少し減らす迄待って下さい ー

私は敵の中に飛び込み、頭の中のチップを破壊して回った。
頭を押さえて倒れる人もいれば、なおかつ攻撃して来る人、逃げだす人と色々だ。



ー みんな来ていいわよ。ー

続々とみんながやってきた。


タマが
ー マオマオ、殺してないの?ー

ー うん、チップ壊しただけよ。ー


「あなたたちの攻撃は、いくら撃ったって、私たちには効かないわよ!」
大声でセーラが叫んだ。


その場で自爆したり、向ってくる敵もいるが、あきらかにリミア星の敵とは違うとみなが感じたみたいだ


ー ザコ残して、マザープーチには、まんまと逃げられたってこと?ー
セーラが口惜しげに言った


ー 今は、子供たちの無事を確認しましょう ー

ブリジットの言葉で、気を取り直して、子供たちの捜索を始めた。
ソーレン星人は、遠巻きにしている者もいたが、攻撃はもうしてこなかった。


マザールームは、予想通り空になっていたが、隣の部屋に入って私たちは、愕然とした。


そこには、カプセルの中に入れられ培養液に浸かっている子供たちが居た。


カプセルを見て回っていて、私は凍りついた。

そこで見たのは、最初に魔王城を襲ってきた男そっくりな少年がカプセルの中にいたのだ

「AK136」

カプセルのプレートにはそう表示があった。

「BB123」

そのカプセルにはブリジットそっくりな少女が入っている。

フウリンが呟いた
「クローンよ、クローン技術でソーレン星人をこの部屋は生産してるのよ。
植木を挿し木して増やすみたいに、同じDNAの人間を培養して作り出しているのよ」


タマが怒った目をして口を開いた
「この中の子供たちは、体の大きさには関係なく、みんな胎児よ。
カプセルから出して改造するときに、脳にプログラムが書き込まれて武器として誕生するのよ。私のように。」

その時、大地震が起こった。
カプセルもいくつか倒れたり、破損して中の溶液が漏れ出したりしている。
何人かの子どもは、そこから放り出されている

「マオ結界を!」

私が部屋ごと結界を作るとすぐに、大爆発が起きて、結界ごと吹き飛ばされた。

下をみるとアチコチで噴火が始まっている

「この星ごと、私たちを消すつもりね。
一度私たちの星に戻りましょう」

私は瓦礫の山となっている魔王城の跡と『リンク』で結界を繋いだ。

私たちは、子供たちも連れてそこへ退避した。

「マオマオ、なんか考えがあるんでしょう、何でここを選んだの?」

「フウリン 私、この子供たちとここで暮らそうと思って。
ここに村を作るの。普通にこの子たちが暮らせる村を」

「わたしも手伝うわ」
「わたしも手伝わせて下さい」
タマとセーラがそう言ってくれた。

「マオさん、ありがとうございます。同胞を助けていただき、感謝します。わたしにできることならなんでも申し付けてください。」
ブリジットは膝をついてそう言ってくれた。

「私は、マザープーチを追うわ。もうこんなひどいことさせない。
宇宙の果てでも、どこまででも追って破壊するわ。
マオ あなたたちの力が必要になったら来てくれる?
もう戦いは嫌?」

「戦いは嫌です。でも誰かを守る為なら、私は戦います。
呼ばれればすぐに駆けつけます。」

※※※※※

タマが、呟いた
「ウクラ星が今 消滅したわ
許せない………」

全員が重い雰囲気に包まれた。

「タマ これ以上好きにはさせないから。
私たちが、絶対終わらせる。」
フウリンの言葉にみんなが頷いた。

「それじゃあ マオマオ、タマ、セーラ、ブリジット またね。
私たちは、マザープーチを追うから」

「絶対やっつけてください
祈ってます」ブリジットの言葉に押し出されるように、フウリンたちは『リンク』で消えていった。
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