ルーザー

烏帽子 博

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新たな世界に

神の使徒

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ベッドルームに案内されて、二人の見張りがドアで待機した。

私は直ぐに「正射必中」と思い浮かべた。
矢を射る自分の姿を俯瞰で見るようにイメージした。
よし!中るあたるそう思えたときに、イメージの中の的がぐにゃりと変化して神が現れた。

レイ、ロストヒューマンたちと会えたんだね。

ちょっとー どういうこと?
私を介護職員にでもするつもり?
世界を変えるってのに、この戦力でやれって言うの?
勝算有るの?
死人を増やすだけじゃ無いの?

まぁまぁそういきり立たないでよ。

ウィナーに成ってから、スキルがバレないようにしてただろ。
ここなら、データ取られずに試せるよ。
まずは、スキル超健康体 をジジババに使ってみ。
命中だって上手く使えば空も飛べるよ。

わたしの、生命力削り取られたりしない?

超健康体だよ、削られたとしても、直ぐに元に戻るだろ。

何か倫理的にやってはいけないことを、させようとしてない?
いいの?神様がそんなこと言って。

レイの超健康体は、ぶっちゃけトンデモスキルだから、もうそのままやるしか無いっしょ。
じゃ そういうことで









でもなぁ~ 絶対わたしの力求めて老人たちが押し寄せるわよね。

そうだ!こうしよう。







見張りに声をかけて、先程の会議室に戻って、人を集めてもらった。

「神と話しをしてきました。ロストヒューマンの皆さんと共に、私も戦いましょう。
そこで、これからわたしのスキルで皆さんの強化を行います。
3日後の満月迄に、なるべく多くの魔獣を倒して魔石を集めて下さい。」

わたしは、そう言い残してから、いぶかしがられながらも、ロストヒューマンのコロニーをくまなく見て回った。

その中で病気か、老衰かわからないが、生命のともし火が間もなく消えそうな老婆と出会った。名はカオルといって口だけは達者で元気そうだが、体はピクリとも動かせないみたいだ。

「お若い頃は、カオルさん、さぞ美人さんだったんでしようね。」

「お嬢さん。若かった頃なら、あなたにも負けてないわ。フフフ」

「それだけの元気があれば、まだまだ大丈夫長生きしますよ。」

「私、剣士だったのよ。一番強いって訳じゃなかったけど、そのへんの男なんか相手にならなかったのよ」

「そりゃあ凄いですね。」

「それとね、わたしと付合いたい色んな男がしょっちゅう花束持ってきて告白してきたわ」

「へえ~ 羨ましいです」

「でも、誰の花束も受け取らなかったわ」

「どうしてですか?」

「好きな人がいたからに決まってるじゃない」

「片想いだったんですか?」

「そうよ、若かったし。振られるのが怖くて、自分からは言い出せなかったの。」

「それからどうなったんですか?」

「聞きたい?」

「そりゃあ聞きたいですよ。
そこまで聞かされたら」

「魔獣ハントに彼が行くって知って、わたしも一緒に参加したのよ。
それで、わたしが不注意で怪我しちゃったの?」

「魔獣にやられたんですか?」

「他のハンターが設置した罠に引っ掛かったの」

「大怪我だったんですか?」

「死ぬほどじゃないけど、歩くのはちょっと無理だったわ」

「それで彼に助けられた」

「そうよ。何でわかったの?」

「もしかして、作り話ですか?」

「女の嘘は、あばいちゃだめよ」

「続きを聞かせてください。」

「それでね………」

わたしは、彼女から終わらないラブロマンスストーリーを長々と聞かされた。
どこまでが真実かわからないが、素敵な話に時間を忘れて聴き入った。

次の日、わたしは、またそのカオル婆のテントに行き、マークとわたしの話をした。

「レイバーの女の事は、おおめに見てあげたら。
彼はあなたを大切に思ってるはずよ。
今度一緒になれたら、離しちゃ駄目よ。」

「アドバイスありがとう。カオル。」

「フフフ どういたしまして レイ。」

私たちは、この2日の間ですっかり打ち解け、名前を呼びあう中になっていた。

「カオルに、お願いが有るんだけど、聞いてくれる?」

「レイ、残念だけど、私にできることなんて、もう無いわ」

「私には、元気を人に分けるスキルが有るの、それをみんなの前で見せたいんだけど、その相手に、なってくれないかしら?」

「この動けない婆を見世物にする気なの?」

「カオルが嫌なら断わっていいわよ。」

「嫌だとは、言ってないわ」

「それじゃ、明日、迎えに来るから、よろしくねカオル」

「私はもう まな板の上の鯉 ね。好きにして。」


約束の満月の日の夕方、人に頼んでベッドごとカオルを集会所に運んでもらった。いくつもの魔石も用意されていた。


「レイ!これはどうゆうことだ!こんな病人を引っ張り出して見世物にする気か!」

ヒムラが、たいそうな剣幕で壇上に上がってきた。

「ヒムラ、あなたはまだまだ元気でいいわね。」

カオルの声は弱々しかった。

「カオル。大丈夫か。すまない大きな声を出して。」

「いいのよ、少し手を握っててくれる?」

わたしは、いくつかの魔石を食べてから、二人の頭に手を置いた。

その姿を見て会場がざわついた

月明りで照らされていた私の体が光りだす。
光は胸のあたりから手に移動して、やがてヒムラとカオルが光りだした。
光は二人の全身をしばらく包んでからやがて消えていった。

「えっ ヒムラ!あなたどうして!」

「カオル! 綺麗だ!」

カオルが起き上がると、そこには、若い美男美女となったヒムラとカオルが現れた。

「奇跡だ!」
「わー」

二人とも18歳位に見える。顔の血色も良く、髪も艷やかだ。

ヒムラが私にかしずいて
「レイ 少しでも疑って済まない。やはりあなたは神の使徒なんですね」

カオルは、その美しい顔で私に微笑んで
「早く鏡が見たいわ。レイ。言ったでしょ。あなたにも負けてないってね。
心から礼を言うわ、本当にありがとう。
これからは、あなたのために命がけで尽くすわ。」

「俺もやってくれ!」
「私もお願い!」

集会所が騒がしくなった。

「皆さん、聞いて下さい。
わたしのスキルで、若返らせることが出来るのは、満月の夜、魔石の力を借りて二人だけです。
次の満月の夜に若返らせる人は、ヒムラとカオルに決めてもらいます。」

わたしが壇上から降りてゆくと、皆に拝まれた。
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