もしも僕がいなくなったら

そらね

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第1章

自由

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「ねぇ、この世界はもしかしてなんでも無償だったりするの?」
 僕はカゲに言った。
 すると、カゲは笑いながら答えた。
「愼くんは考えすぎだよ。ここは自由なんだ。なんだってできるさ。ある程度仕組みがしっかりしているからね」
 本当に自由なのか、この世界は。手ぶらで生きていけるということになる。
 カゲはまだ笑っている。
 カゲにとっては、僕の質問はおかしいのかもしれない。
「仕組みというのは、衣住食が成り立っていること。だから何も心配はいらないよ。ただ生きていればいいのさ」
 ただ生きていればいいだなんて寂しい気がする。楽しくないし、つまらない。
 本当の自由とは、こういうことだとしたら僕が望んだ平穏ではない。
「ただ生きていても、つまらないよ」
「そうだね。でも、ただ生きていればいいんだ。それが嫌なら、君がこの世界を救えばいい。それだけの話さ」
 意味がわからない。カゲの言っていること全てが。
「ほら、ついたよ。校門だ。玄関はまだ奥にある。考え事していても、この世界じゃなんの意味もないよ」
 やっぱり、わからない。わからないしか出てこない。
 きっと頭の中が整理できていないからだ。
「玄関が見えてきたよ」
 いつの間にか、もう玄関に着いていた。考え事をし過ぎただろうか…。
 校門からかなり離れた所に玄関があり、近くで見た校舎はとても大きかった。校舎の周りは草原があったり、おしゃれなタイルが敷き詰められたり、噴水があったりとお金持ちが行くような高校にしか見えない。生徒の姿はなかった。
 ここまでの道のりが長かった。出発してから2時間以上経過していた。
「僕はどうすればいい?」
「先生に会ってもらう。そして、この学校のことを詳しく聞くんだ。詳しくね」
「わかった」
 僕たちは、職員室に向かった。 
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