もしも僕がいなくなったら

そらね

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第2章

僕にできること

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 あれから僕たちは宿に戻り、いつもと変わらない夜を過ごした。
 僕は速やかに食事と入浴を終わらせ、部屋でのんびりしていた。そして明日のことを考えていた。
「僕が教室に入ってきたらあの人たちはどんな反応をするのかな……」
 何をされるかわからない。
「僕にできることは……」
 そういえば、あの高校には生徒会はないのだろうか?もしあるとしたら絶好のチャンスである。あの多人数の前で話が出来る。生徒会がなくてもクラスの委員長という役割があればいい。
 とにかく、人前で話すことの出来る役割があれば何とかなりそうだ。
「でも、既に決まっている可能性がある」
 僕は最近この世界に来た者であり、あの人たちは僕が来る前にもういたはず。
「この世界が表側で言う新学期だったらな」
「今はちょうど新学期だよ、愼くん」
「わっ!」
 いつの間にかカゲが僕の部屋に侵入していた。
「いつ入っていたのさ」
「ん?だいぶ前からかな」
「え?」
「愼くんがこの部屋に入る前から」
 カゲが僕の顔を見てにやけている。
「不法侵入じゃないか」
「別にいいじゃない。友達だろ?」
「いや、そういう問題?」
「ところで、今は何月だと思う?ちなみに表側は秋くらいかな」
「じゃぁこの世界も秋くらい?」
「残念。この世界は四月だよ」
「月日が変わっているのか」
「そう。だからさっき愼くんが言っていた新学期ってこと。無常高等学校にも入学式とか卒業式はちゃんとあるからね」
「そうなんだ」
「うん。生徒会もあるし、クラスの委員長も一年交代だから、チャンス到来だね」
「僕の作戦は、生徒会にも委員長にもなって少しでもあの人たちの感情を取り戻したいんだ。しつこいキャラを演じることも考えてる。僕があの人たちに嫌われていくことで悪口だって出てくる。そうするとあの人たちに僕が嫌いだという感情が生まれ、そのことをみんなで共感することで無の人たちが減る気がするんだ」
「難しいこと言うね。でも、いいと思うよ。愼くんのやり方で変えていけばいいさ」
「うん。上手くいくかはわからないけど、僕という存在があの人の心の中に残ればそれでいい」
「なんか気持ち悪くない?」
「う…ん」
 別に変な意味を込めて言ったわけではないが…
「じゃぁ、愼くんにできることはまず目立つような役割について、みんなの心を動かしてみるってことだね」
「そういうこと。で、いつまで僕の部屋にいるの?」
「おやすみ」
「あっ!僕の布団に…」
 カゲに布団を盗られてしまったので、僕はカゲの部屋に行って寝た。
 何で自分の部屋で寝ないんだ………。
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