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1章2節 狩人の目覚め
1-5,6 (16,17話)
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数分後、資料を元に事件の概要を説明していく西崎と岩城。
ついていくのもやっとかと思ったら意外についてきている。
顔色も変えずに聞いている。
思っていた以上に存在感がある。
貫禄はないんだろうが、初代の顔つきに似てきている。
親子というのはこういうものなのだろうか。
「現在、8名の死体が発見されており、どれも外傷と内部にも複数の傷があることから警察は同一人物がやったとみて調べております。鑑識の結果では外傷は鋭利な刃物、だいたい20~30センチぐらいの洋出刃ではないかと推測。内部に関しましては全くをもってわからないと」
「皮膚にも目立った痕跡がなく、ほとんど切り付けられた後ばかりが残っていたそうです。えっと・・・倒れていた状態によりますと、上向き状態で発見。発見された時にはかなりの量の血を流していたとか」
話の内容を聞きながら資料にも目を通すシン。
多数の死体の写真を見ても平気な顔をしている。
だが、こっちは違う。
岩城ただ1人が顔色がおかしい。
真っ青になっている。
そんなことを気にしていた西崎は頭を1発平手打ちで叩いて現実に戻らせた。
「痛っ!!」
「本当に大丈夫なんですか?顔色悪そうにしてますけど。それとも今警視庁に行って辞表出しに行きます?」
軽い気持ちで言われたと思ったのか心にグサリと突き刺さった。
子供でも容赦はしなかった。
見てないフリして実はこっそり上目使いで見ていた。ばれないように。
それを知らなかった岩城も恥をかいた。
首をかしげた岩城に大して、西崎は真剣な眼差しでシンを見ていた。
どのような反応を示すのだろうかと期待していた。
一通り読み終えたシンは意見を述べた。
「まず、率直にいって犯人はよっぽどこの世の中を嫌っている人物。あるいは誰でもよかったというような人物が高い。洋出刃なんて流通している所も多数ありますし、手に入れるなんてことはたやすいことでもあります。ただ、問題は内部。外部からやったとしてもそこまでの深い傷にはならないし、多数の傷ってことはバラバラにでもしないことにはできない。鎌形やペティナイフでも難しいでしょうし・・・」
ここまで丁寧に語ってくれるとは大したものだ。
包丁の種類まで詳しい。
本当にこんな子供が魔探偵とは思えなかった。
だが、そこには続きがあった。
「腸裂きでも腹部を狙わないことには無理もある。それに今回のこの資料を見てる限り、内臓や筋肉の一部、さらには脳にまで小さな傷が複数あった。このことから犯行ではできないことが出てきた。見えている範囲でしか傷をつけることができないのなら犯人は薬物使用でも毒薬でもない方法を使ったことになる」
確かに被害者全員の体内からは毒物も薬物反応も出なかった。
ならいったいどんな方法でやったというのだろうか。
「と、いうことは犯人はどんな方法でやったんですか?」
左手を顔に近づけてシンはボソッとこんなことを言った。
「魔道・・・」
「魔道?何だそれは」
魔道というのはいわゆる悪魔の総称とも言われている。
何かを成し遂げたい気持ちが左右して魔道は心を揺さぶり、達成させようとその人物にとりつく。
とりつけば他人には見えることなく傷をつけたり、乗っ取ることもできるらしい。
しかし、他人の思いが強ければ強いほど魔道も暴走しやすくなるのだという。
1つの一種として七つの大罪があげられた。
内側から出てくる大罪が人を狂わせ、殺人行為や犯罪行為をしているのだという。
欲にまみれてしまえばそうなるのと同じで、魔道も大罪と同等になるのだ。
しかし、1つだけデメリットがある。
それは他人には全く見えないこと。
魔探偵には見えるのだが、追い詰めるか出ている状態で発見するかしかできないのだという。
他人にはどうかというと、全く見えない。
死ぬまでは見えないのだという。
「じゃあ、その魔道というのがこれまでの殺人と関連しているというのか?」
「否定はできないだろうね。実際に見てみないことには」
実際に殺害現場を見せれば何かわかるのだろうか。
2人に不安がのしかかってくるが、これはあくまで予想。
本当にそうとは言っていない。仮説の話だ。
「そうか。参考になった。では、ここでひとまずお暇するとしようか、岩城」
資料をかき集めてファイルに閉じた。
岩城はファイルを手に持ち、立ち上がった。
「ありがとうございました。このこと参考にさせてもらいますね」
「あ、そうそう。名前聞いてなかった。あんたたち、名前は?」
「聞かなくてもいい。なんせはきだまりの人間だからな」
そっけない顔で返事をしたシン。
もう来ることはないだろうと思い、部屋を後にした。
しかし、またここに訪れるとはこの時はまだ知らなかった。
魔探偵を後にする西崎と岩城。
詳しいことを上司に報告しなければいけない。
そんなことを思うとなんと言われるのかわからない。
現に今回は子供の探偵が推理してくれた。
紹介してくれた金城清一郎の息子にしてもらったと言ったらなんと言われるのだろうか。
ヒヤヒヤして怖い。
「これ、上司になんて言ったらいいんですかね・・・」
「本当のことを言ってもいいんじゃないか?どうせ聞いてなんてくれないだろうし」
はきだまりの三課にさせた仕事なんて聞いてはくれない。
ただの参考程度にしかならないのだ。
西崎はしれっとした顔で自分の車に乗った。
岩城は西崎の車の助手席のドアの前で立ち止まった。
何を言われるかビクビクしている。
こんなことですなんて言ったらクビになるのだろうかとか土壇場なことを考えていた。
そんなとき、車のエンジンがかかり、助手席のドアの窓が開いた瞬間だった。
「痛っ・・・。って何してる・・・で・・・」
次々の何かが岩城の頭をめがけて投げられる。
投げたのは西崎。しかも、手に持っているのはパチンコ。
玉はゴミ。
それを岩城にめがけて打ち付けていた。
無表情でパチンコをやられてもどうしようもない。
しかも、目が死んでいる。
早く乗れといいたげな感じが伝わってくる。
「わ・・・わかりました。乗りますからパチンコ置いてくださいよ・・・」
そういって助手席に乗り、シートベルトをした。
頭を触ったが、こぶらしきものはできていない。
これは西崎さんの遊びなのだろうか。
聞くと怒られると思ったらしくそのことには触れなかった。
まずなぜパチンコなんて持っているのか不思議で仕方ない。
「それより岩城。魔道のこと、どう思った」
車を発進させてすぐに西崎が聞いてきた。
魔道がいるかどうかなんてわからないが、いてもおかしくないのではと返答をする。
西崎は浮かない顔して運転をしているが、まだ何かが引っかかっていたみたいだ。
そんなことを思いながら警察庁へと戻っていった。
ついていくのもやっとかと思ったら意外についてきている。
顔色も変えずに聞いている。
思っていた以上に存在感がある。
貫禄はないんだろうが、初代の顔つきに似てきている。
親子というのはこういうものなのだろうか。
「現在、8名の死体が発見されており、どれも外傷と内部にも複数の傷があることから警察は同一人物がやったとみて調べております。鑑識の結果では外傷は鋭利な刃物、だいたい20~30センチぐらいの洋出刃ではないかと推測。内部に関しましては全くをもってわからないと」
「皮膚にも目立った痕跡がなく、ほとんど切り付けられた後ばかりが残っていたそうです。えっと・・・倒れていた状態によりますと、上向き状態で発見。発見された時にはかなりの量の血を流していたとか」
話の内容を聞きながら資料にも目を通すシン。
多数の死体の写真を見ても平気な顔をしている。
だが、こっちは違う。
岩城ただ1人が顔色がおかしい。
真っ青になっている。
そんなことを気にしていた西崎は頭を1発平手打ちで叩いて現実に戻らせた。
「痛っ!!」
「本当に大丈夫なんですか?顔色悪そうにしてますけど。それとも今警視庁に行って辞表出しに行きます?」
軽い気持ちで言われたと思ったのか心にグサリと突き刺さった。
子供でも容赦はしなかった。
見てないフリして実はこっそり上目使いで見ていた。ばれないように。
それを知らなかった岩城も恥をかいた。
首をかしげた岩城に大して、西崎は真剣な眼差しでシンを見ていた。
どのような反応を示すのだろうかと期待していた。
一通り読み終えたシンは意見を述べた。
「まず、率直にいって犯人はよっぽどこの世の中を嫌っている人物。あるいは誰でもよかったというような人物が高い。洋出刃なんて流通している所も多数ありますし、手に入れるなんてことはたやすいことでもあります。ただ、問題は内部。外部からやったとしてもそこまでの深い傷にはならないし、多数の傷ってことはバラバラにでもしないことにはできない。鎌形やペティナイフでも難しいでしょうし・・・」
ここまで丁寧に語ってくれるとは大したものだ。
包丁の種類まで詳しい。
本当にこんな子供が魔探偵とは思えなかった。
だが、そこには続きがあった。
「腸裂きでも腹部を狙わないことには無理もある。それに今回のこの資料を見てる限り、内臓や筋肉の一部、さらには脳にまで小さな傷が複数あった。このことから犯行ではできないことが出てきた。見えている範囲でしか傷をつけることができないのなら犯人は薬物使用でも毒薬でもない方法を使ったことになる」
確かに被害者全員の体内からは毒物も薬物反応も出なかった。
ならいったいどんな方法でやったというのだろうか。
「と、いうことは犯人はどんな方法でやったんですか?」
左手を顔に近づけてシンはボソッとこんなことを言った。
「魔道・・・」
「魔道?何だそれは」
魔道というのはいわゆる悪魔の総称とも言われている。
何かを成し遂げたい気持ちが左右して魔道は心を揺さぶり、達成させようとその人物にとりつく。
とりつけば他人には見えることなく傷をつけたり、乗っ取ることもできるらしい。
しかし、他人の思いが強ければ強いほど魔道も暴走しやすくなるのだという。
1つの一種として七つの大罪があげられた。
内側から出てくる大罪が人を狂わせ、殺人行為や犯罪行為をしているのだという。
欲にまみれてしまえばそうなるのと同じで、魔道も大罪と同等になるのだ。
しかし、1つだけデメリットがある。
それは他人には全く見えないこと。
魔探偵には見えるのだが、追い詰めるか出ている状態で発見するかしかできないのだという。
他人にはどうかというと、全く見えない。
死ぬまでは見えないのだという。
「じゃあ、その魔道というのがこれまでの殺人と関連しているというのか?」
「否定はできないだろうね。実際に見てみないことには」
実際に殺害現場を見せれば何かわかるのだろうか。
2人に不安がのしかかってくるが、これはあくまで予想。
本当にそうとは言っていない。仮説の話だ。
「そうか。参考になった。では、ここでひとまずお暇するとしようか、岩城」
資料をかき集めてファイルに閉じた。
岩城はファイルを手に持ち、立ち上がった。
「ありがとうございました。このこと参考にさせてもらいますね」
「あ、そうそう。名前聞いてなかった。あんたたち、名前は?」
「聞かなくてもいい。なんせはきだまりの人間だからな」
そっけない顔で返事をしたシン。
もう来ることはないだろうと思い、部屋を後にした。
しかし、またここに訪れるとはこの時はまだ知らなかった。
魔探偵を後にする西崎と岩城。
詳しいことを上司に報告しなければいけない。
そんなことを思うとなんと言われるのかわからない。
現に今回は子供の探偵が推理してくれた。
紹介してくれた金城清一郎の息子にしてもらったと言ったらなんと言われるのだろうか。
ヒヤヒヤして怖い。
「これ、上司になんて言ったらいいんですかね・・・」
「本当のことを言ってもいいんじゃないか?どうせ聞いてなんてくれないだろうし」
はきだまりの三課にさせた仕事なんて聞いてはくれない。
ただの参考程度にしかならないのだ。
西崎はしれっとした顔で自分の車に乗った。
岩城は西崎の車の助手席のドアの前で立ち止まった。
何を言われるかビクビクしている。
こんなことですなんて言ったらクビになるのだろうかとか土壇場なことを考えていた。
そんなとき、車のエンジンがかかり、助手席のドアの窓が開いた瞬間だった。
「痛っ・・・。って何してる・・・で・・・」
次々の何かが岩城の頭をめがけて投げられる。
投げたのは西崎。しかも、手に持っているのはパチンコ。
玉はゴミ。
それを岩城にめがけて打ち付けていた。
無表情でパチンコをやられてもどうしようもない。
しかも、目が死んでいる。
早く乗れといいたげな感じが伝わってくる。
「わ・・・わかりました。乗りますからパチンコ置いてくださいよ・・・」
そういって助手席に乗り、シートベルトをした。
頭を触ったが、こぶらしきものはできていない。
これは西崎さんの遊びなのだろうか。
聞くと怒られると思ったらしくそのことには触れなかった。
まずなぜパチンコなんて持っているのか不思議で仕方ない。
「それより岩城。魔道のこと、どう思った」
車を発進させてすぐに西崎が聞いてきた。
魔道がいるかどうかなんてわからないが、いてもおかしくないのではと返答をする。
西崎は浮かない顔して運転をしているが、まだ何かが引っかかっていたみたいだ。
そんなことを思いながら警察庁へと戻っていった。
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