魔探偵探偵事務所

カクカラ

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1章4節 幸せの居場所

2-4 (90話)

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シンと西崎の言い争いの対決。
探偵と警察のプライドをかけた勝負。
と、いうよりもこれは果たしてやっていいものなのだろうか。
岩城は2人の言い争いよりも本を気にしていた。
怒りで放り投げるのはあまりにも無神経むしんけいすぎる。
大切にしていた新品の本が少し折れてしまった。
あまりの出来事すぎてショックがでかすぎた。
そんなショックすらも吹き飛ばす人間が1人。
言い争いに興味を示す猪野糸。
目を光らせて2人を見つめていた。

「常識ぐらいは知ってるよ!お前に言われなくってもわかってらぁ!それでも警視の名に泥は塗ってないだろ。知らない知識は知らなくってもいいだろ?その時に応じてやりゃあいい話なんだからさ」
「その時に応じてっていつなんです?それじゃあ間に合わない時だってあるでしょうよ!それが命取りになるんですよ!いずれそうなる時がきますよ。後悔しても知りませんからね?僕に頼らないでくださいよ?」

何だか子供じみた言い争いみたいな結果になっている。
どちらかが謝ればいい話を滅茶苦茶めちゃくちゃにしている。
気の張り合いで言いたい放題言って何になるのだろうか。
息切れになる前に決着をしてほしい。
でも、それを邪魔する人間がいた。
ドーナツを2人に手渡そうとして場を和ませようとする猪野糸だったが、それが裏目に出た。

「頭使うんだしドーナツ食べたら?半分ずつでさ」
「いらねぇよ、嬢ちゃん。こいつと半分ずつするなんて死んでも嫌だね」
「それよりお前は学校に行け。ここにいられるだけでも邪魔なんだよ。迷惑なんだ。わかるか?」

2人の視線が猪野糸に向けられた。
何だかいつものほがらかな空気がこれぽっちも感じられない。
重苦しい雰囲気に黒いオーラのようなものが見える気がした。
それを察知した猪野糸はゆっくりとドーナツを引き離した。
部屋で言い争いを繰り広げられている一方、秘書の伊部は止める気にもならなかった。
下を向いてため息ばかりついている。
こんな感じでやっている言い争いはいつになったら終結しゅうけつするのだろうか。
猪野糸は言い争いをしている2人を気にすることがなかったかのようにゆっくりと席に座ってドーナツを食べていた。
うるさくて食べる気も起きない。
いつまでこの言い争いは続くのか。
永遠に終わらないのではないかと3人は思い始めた。
しかし、岩城はそのことよりも自分のポケットマネーで買った本を折られたことによほどショックを受けていた。
大切にしようとしていたのに、まさかの西崎に放り投げられるとは思ってもみなかった。
その場に座り込んでただただ本を眺めていることしかできなかった。
こうしてる間にもどんどん時間は過ぎていく。
10分、15分。そして30分。
いい加減にしてほしいと思い、岩城は放り投げられた本を回収しに向かった。
四つん這いになって1歩1歩近づいていく。
こんな騒ぎになるんだったら来なければよかった。
そんなことが頭によぎってしまった。
でも、ちゃんとした理由があるからここに来ているのだ。
早く終わらせなければ。
任務を遂行すいこうするように着実ちゃくじつに本の位置まで向かっていく。

(よしっ!回収成功!)

回収に成功し、元の場所に戻るその時だった。
勢いあまって2人の足が少し浮いた。
その勢いが岩城の背中に直撃する。
鈍い感じの感触。

「あっ・・・」
「やっべ・・・」

言い争いに関係のない岩城を誤って足で踏んでしまった。
その衝撃が岩城の背中からビリビリときた。

「いっったーーーーーーーーっ!!!」

部屋全体だけでなく廊下にも響き渡っていた。
その声に伊部も猪野糸も気づき、2人の言い争い現場を見つめた。
倒れた状態で泣きじゃくる岩城。
昨日の視察のせいでなのかまだ治っていなかったみたいだ。
これが言い争いを止めたきっかけに繋がった。
そして、不吉な意味での決着がつく結果があらわれてしまった。
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