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塹壕戦の空
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「畜生め」
前線上空を飛んでいた忠弥は吐き捨てた。
今連合軍は帝国軍への攻撃を仕掛けており、激しい砲撃を行っている。
忠弥達はその上空援護、弾着観測、地上攻撃支援を行っていた。
だが、忠弥はこの攻撃が不満だった。あまりにも無様だからだ。
「休戦などあり得ない!」
聖夜祭休戦のあと、共和国の将軍は叫んだ。
「神聖なる国土を侵略した悪魔共を追い出さぬ限り休戦などあり得ん! 今も国土を占領され抑圧される国民同志がいるのだ! 彼らを救い祖国を解放するために我々は戦っているのだ! そのためにこれまで多くの兵士が国民が、この崇高なる戦いに赴き傷つき死んでいった! 侵略者の撃退、祖国の解放のために彼らはその命を捧げた。我々が行うべき事は彼らの気高き誇りを、我自らの胸に抱き、敵を討つか、後を追って死ぬのみである!」
侵略され国土を占領されているだけに共和国軍の戦意、あるいは狂乱はすさまじいものだ。
聞いている王国と皇国の軍人は、ドン引きするほどに。
だが、もし自らの祖国が侵略されたとあれば、同じ事を言ってしまうかもしれず表だって、嫌悪を出すことは出来無かった。
そして帝国への攻勢に反対する事も出来なかった。
だが、共和国軍攻撃方法は横列隊形で三百メートルを突撃する旧態依然とした白兵戦術だ。
待ち構える帝国軍の機関銃の掃射で全身を撃たれ、砲兵の阻止砲撃で土と一緒にミンチにされているのが上空からでもよく見えてしまう。
生き残った兵士がなおも前進し、敵へ突撃している。
そこへ、敵の砲撃が機関銃の掃射が襲い掛かる。
「畜生……」
忠弥は呟くと、僚機に攻撃の合図を送った。
ただ見ているだけではない。
愚かしく効果の無い攻撃だが、味方を援護しなければならない。
指揮下の航空隊は突撃が行われている地点周辺にある機関銃陣地と砲兵陣地への攻撃を行う。
爆弾を搭載した攻撃機が、帝国軍の放つ砲火を目印に爆弾を落としていく。
同時に無線通信を行い、敵部隊の位置を味方の砲兵隊に連絡し、砲撃観測を行う。
弾着がずれていたら修正するよう連絡し、誘導する。
平地でも意外と遠くを見通せない。
一寸した丘の向こう側、特に裏側の斜面は地上からだと観測しにくい。
だが、上空からなら丸見えだ。
敵の砲兵陣地や物資集積所を見つけ出して砲兵隊に叩いて貰う。
飛行機に積んでいる爆弾は小さく威力が小さいので、味方に近い機関銃陣地を攻撃する時だけ使っている。
「畜生……」
再び罵り声を上げる。現状が不満だ。
勿論、帝国軍へ積極的に攻撃したい。
だが、味方の攻撃があまりにもお粗末だ。
敵の陣地に向かっての横隊一斉突撃。
障害物のない平野を歩兵の集団が突撃していくところへ敵の機関銃と砲兵の一斉射撃。
敵陣の遙か手前で全滅する。
運良く、近づいても敵の塹壕陣地手前に作られた鉄条網に阻まれて結局、機関銃の餌食になる。
「コンクリートの壁に生卵をぶつけているようなものだ」
王国も共和国も同じ戦法の繰り返しだ。
十年前に北方で酷い戦争を行った皇国は要塞攻略戦の経験があり、正攻法、塹壕を敵の塹壕近くまで伸ばして行き、砲兵の支援の元に突撃する方法を行っているので多少はマシだった。
だが、損害が多いのも事実だった。
その時、航空信号所から信号弾が放たれた。
僚機と共に信号所の上空へ向かい、地上に設置されたパネルの組み合わせで、内容を読み取る。
無線機が小さい上にエンジン出力が小さく発電容量が少ないので双発機以外は使い物にならない。
なので戦闘機のような小型機は地上の信号所からパネルを使った通信方法で読み取る。
「敵の観測機発見か」
先日、帝国軍の航空戦力を壊滅させた忠弥だったが、少数でも観測機として使える。
味方の陣地を偵察して、砲撃を誘導される。
「撃墜に向かう」
大量の砲弾を備蓄した弾薬庫に命中弾が当たったら目も当てられない。
それに敵は飛行機も目の敵にしており、最前線に近い前線飛行場も砲撃してくる。
敵機は撃墜しておいた方が良い。
「見つけた」
敵の観測機を発見すると忠弥は弾幕に隠れるように接近し、観測機の後ろに付いた。
観測機が逃げる前に銃撃し、翼をボロボロにする。
揚力を失った観測機は墜落していき味方の陣地に落ちていった。
「撃墜確実」
墜落したのを確認した忠弥は周囲を確認する。
敵機はいない。
だが、観測機を撃墜されたこと、戦闘機がいるので帝国軍が戦闘機隊を呼び寄せている可能性が高い。技量に優れた忠弥だが、複数の敵機に囲まれた状況では厳しい。
「まあ、何とかなるか」
忠弥は機体を前線上空で旋回させた。
暫くすると、三機編隊が二つ、合計六機の戦闘機がやってきた。
「六機か」
忠弥はつまらなそうに呟くと、その六機に向かって突進した。
上下左右に機体を動かして、敵の編隊を動揺させる。
対応しようと敵機は機体を上下させるが、両翼の味方が邪魔してまともに動けない。
一方の編隊は、先頭と左の機体が接触し、左側の機体が落ちてしまった。
その左が欠落した編隊に忠弥は襲い掛かった。
味方の墜落で動揺し、接触でガタついた戦闘機を難なく撃墜した。
残りの、一機も後ろにいた昴が、撃墜していく。
通り過ぎると反転し上空へ向かう。
高度を取って襲い掛かる。
反転に手間取っていた敵編隊に攻撃を仕掛け、先頭の機体を撃墜した。
一機が食らいついてくるが、接近したところで忠弥は急上昇させ失速――ストールターンを決めると下を通り過ぎた敵戦闘機の真後ろへ急接近し機関銃をエンジンに向かって放ち撃墜した。
失速したため減速してしまい、残り一機が忠弥の真後ろの接近してきたが、援護していた昴が援護に入り、撃墜した。
こうして六機の敵機を忠弥は昴と協力して全て撃墜してしまった。
「撃墜機数は三機か。接触で墜落したのはノーカウントかな」
忠弥は呟くと燃料計を確認。残り少ないのを見て、帰還を決意。
機首を反転させ味方の基地へ戻っていった。
前線上空を飛んでいた忠弥は吐き捨てた。
今連合軍は帝国軍への攻撃を仕掛けており、激しい砲撃を行っている。
忠弥達はその上空援護、弾着観測、地上攻撃支援を行っていた。
だが、忠弥はこの攻撃が不満だった。あまりにも無様だからだ。
「休戦などあり得ない!」
聖夜祭休戦のあと、共和国の将軍は叫んだ。
「神聖なる国土を侵略した悪魔共を追い出さぬ限り休戦などあり得ん! 今も国土を占領され抑圧される国民同志がいるのだ! 彼らを救い祖国を解放するために我々は戦っているのだ! そのためにこれまで多くの兵士が国民が、この崇高なる戦いに赴き傷つき死んでいった! 侵略者の撃退、祖国の解放のために彼らはその命を捧げた。我々が行うべき事は彼らの気高き誇りを、我自らの胸に抱き、敵を討つか、後を追って死ぬのみである!」
侵略され国土を占領されているだけに共和国軍の戦意、あるいは狂乱はすさまじいものだ。
聞いている王国と皇国の軍人は、ドン引きするほどに。
だが、もし自らの祖国が侵略されたとあれば、同じ事を言ってしまうかもしれず表だって、嫌悪を出すことは出来無かった。
そして帝国への攻勢に反対する事も出来なかった。
だが、共和国軍攻撃方法は横列隊形で三百メートルを突撃する旧態依然とした白兵戦術だ。
待ち構える帝国軍の機関銃の掃射で全身を撃たれ、砲兵の阻止砲撃で土と一緒にミンチにされているのが上空からでもよく見えてしまう。
生き残った兵士がなおも前進し、敵へ突撃している。
そこへ、敵の砲撃が機関銃の掃射が襲い掛かる。
「畜生……」
忠弥は呟くと、僚機に攻撃の合図を送った。
ただ見ているだけではない。
愚かしく効果の無い攻撃だが、味方を援護しなければならない。
指揮下の航空隊は突撃が行われている地点周辺にある機関銃陣地と砲兵陣地への攻撃を行う。
爆弾を搭載した攻撃機が、帝国軍の放つ砲火を目印に爆弾を落としていく。
同時に無線通信を行い、敵部隊の位置を味方の砲兵隊に連絡し、砲撃観測を行う。
弾着がずれていたら修正するよう連絡し、誘導する。
平地でも意外と遠くを見通せない。
一寸した丘の向こう側、特に裏側の斜面は地上からだと観測しにくい。
だが、上空からなら丸見えだ。
敵の砲兵陣地や物資集積所を見つけ出して砲兵隊に叩いて貰う。
飛行機に積んでいる爆弾は小さく威力が小さいので、味方に近い機関銃陣地を攻撃する時だけ使っている。
「畜生……」
再び罵り声を上げる。現状が不満だ。
勿論、帝国軍へ積極的に攻撃したい。
だが、味方の攻撃があまりにもお粗末だ。
敵の陣地に向かっての横隊一斉突撃。
障害物のない平野を歩兵の集団が突撃していくところへ敵の機関銃と砲兵の一斉射撃。
敵陣の遙か手前で全滅する。
運良く、近づいても敵の塹壕陣地手前に作られた鉄条網に阻まれて結局、機関銃の餌食になる。
「コンクリートの壁に生卵をぶつけているようなものだ」
王国も共和国も同じ戦法の繰り返しだ。
十年前に北方で酷い戦争を行った皇国は要塞攻略戦の経験があり、正攻法、塹壕を敵の塹壕近くまで伸ばして行き、砲兵の支援の元に突撃する方法を行っているので多少はマシだった。
だが、損害が多いのも事実だった。
その時、航空信号所から信号弾が放たれた。
僚機と共に信号所の上空へ向かい、地上に設置されたパネルの組み合わせで、内容を読み取る。
無線機が小さい上にエンジン出力が小さく発電容量が少ないので双発機以外は使い物にならない。
なので戦闘機のような小型機は地上の信号所からパネルを使った通信方法で読み取る。
「敵の観測機発見か」
先日、帝国軍の航空戦力を壊滅させた忠弥だったが、少数でも観測機として使える。
味方の陣地を偵察して、砲撃を誘導される。
「撃墜に向かう」
大量の砲弾を備蓄した弾薬庫に命中弾が当たったら目も当てられない。
それに敵は飛行機も目の敵にしており、最前線に近い前線飛行場も砲撃してくる。
敵機は撃墜しておいた方が良い。
「見つけた」
敵の観測機を発見すると忠弥は弾幕に隠れるように接近し、観測機の後ろに付いた。
観測機が逃げる前に銃撃し、翼をボロボロにする。
揚力を失った観測機は墜落していき味方の陣地に落ちていった。
「撃墜確実」
墜落したのを確認した忠弥は周囲を確認する。
敵機はいない。
だが、観測機を撃墜されたこと、戦闘機がいるので帝国軍が戦闘機隊を呼び寄せている可能性が高い。技量に優れた忠弥だが、複数の敵機に囲まれた状況では厳しい。
「まあ、何とかなるか」
忠弥は機体を前線上空で旋回させた。
暫くすると、三機編隊が二つ、合計六機の戦闘機がやってきた。
「六機か」
忠弥はつまらなそうに呟くと、その六機に向かって突進した。
上下左右に機体を動かして、敵の編隊を動揺させる。
対応しようと敵機は機体を上下させるが、両翼の味方が邪魔してまともに動けない。
一方の編隊は、先頭と左の機体が接触し、左側の機体が落ちてしまった。
その左が欠落した編隊に忠弥は襲い掛かった。
味方の墜落で動揺し、接触でガタついた戦闘機を難なく撃墜した。
残りの、一機も後ろにいた昴が、撃墜していく。
通り過ぎると反転し上空へ向かう。
高度を取って襲い掛かる。
反転に手間取っていた敵編隊に攻撃を仕掛け、先頭の機体を撃墜した。
一機が食らいついてくるが、接近したところで忠弥は急上昇させ失速――ストールターンを決めると下を通り過ぎた敵戦闘機の真後ろへ急接近し機関銃をエンジンに向かって放ち撃墜した。
失速したため減速してしまい、残り一機が忠弥の真後ろの接近してきたが、援護していた昴が援護に入り、撃墜した。
こうして六機の敵機を忠弥は昴と協力して全て撃墜してしまった。
「撃墜機数は三機か。接触で墜落したのはノーカウントかな」
忠弥は呟くと燃料計を確認。残り少ないのを見て、帰還を決意。
機首を反転させ味方の基地へ戻っていった。
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