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敵艦突入
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「ピケット艦撃破に成功」
「全機突入せよ!」
江草からの報告を聞いた攻撃隊指揮官は攻撃を決断し部下に突入を命じた。
「おうっ」
攻撃隊指揮官の命令に南山は、自らの乗る天山を降下させることで応えた。
先発の零戦改のロケット弾攻撃でピケット艦がいなくなりレーダー網に穴が空いた。
この機会を逃せば雷撃の機会はない。
二年前のミッドウェーと第二次ソロモンでは敵のレーダー網が生き残っている状態で突入し攻撃隊は大きな損害を受けた。
その戦訓を元にレーダーピケット艦を撃破するようになってから、損害を抑えることに成功した。
だからこそ南山は生き残れた。
敵を撃破しなければ生き残れないなら、今をおいて機会はない。
だから、突入した。
自ら率いる第二小隊の天山三機を連れて敵空母に向かってゆく。
「全機、高度を下げるぞ」
十数メートルまで下がっていたが、さらに高度を下げる。
「大鳳の攻撃隊がいます」
「馬鹿が、高度を下げないと拙いぞ」
大鳳隊は海面との接触を恐れて高度を上げたままだ。
そのとき、上空にいるF6Fが見えた。
連中は大鳳の攻撃隊を見つけると銃撃を加えていく。
たちまちのうちに大鳳攻撃隊の二機が食われた。
大鳳攻撃隊はバラバラになって逃げ出し、それを見たF6Fは南山達の方へ向きを変えてきた。
「敵機来ます!」
「冷静な連中だ」
四〇〇機の攻撃隊が来るのだ。
迎撃の戦闘機が多くても一五〇機程度の空母任務群では、効率的に迎撃しないと母艦がやられる。
攻撃を諦めてバラバラに逃げる攻撃隊より、編隊を整え母艦に向かう攻撃隊を撃破するほうが母艦は安全だ。
だから南山は敵機に狙われた。
「旋回機銃を鼻先に撃ってやれ!」
後方から接近してくる敵機に向かって電信員が銃撃を加える。
敵機も銃撃を加えてきたが、命中弾はなく、南山の機体を追い抜いていった。
「敵機が、逃げていきます」
「いや、もう一度来る気だ」
海面すれすれの機体を攻撃するのは難しい。
戦闘機は上空から接近して急降下ですれ違いざまに攻撃するのが、一番楽だし落としやすい。
だが、海面すれすれを飛んでいる機体を攻撃すると、攻撃した後海面に突っ込んでしまう。
だから上から銃撃することは少ない。
「敵機、高度を我々と合わせてきます」
「度胸があるな」
そのため同高度に合わせて後方から接近し至近距離から銃撃するのが次善の手だが、欠点の一つに海面すれすれのため一歩間違うと海面に接触してしまう。
しかし敵のパイロットは持ち前の腕で回避していた。
そして南山の後方に接近してきた。
「魚雷を抱いたままじゃおしまいだ」
「諦めるな!」
諦観する部下に南山は怒鳴った。
「諦めたときが死ぬときだ」
銃撃音が鳴り響いた。
「味方戦闘機です!」
上空から味方戦闘機がF6Fを銃撃してくれた。
上空高く、距離があったため命中しなかったが南山とF6Fの間に着弾する。
F6Fは零戦改に銃撃されたことで、身を守るために上空へ逃れていった。
「敵艦隊に突入する」
邪魔者がいなくなったことで南山は敵空母に向かった。
前方に敵艦が見えてくる。
多数の閃光が見え、周囲に爆煙が上がる。
「対空砲火か」
米軍の対空砲火が強力だということは身をもって知っている。
特に最近は砲弾が自ら電波を出し航空機が近くを通り過ぎただけで爆発する、VT信管という新型信管を使っているそうだ。
数は少なく故障も多いがやっかいだ。
だが、回避手段がないわけではない。
「さらに下げるぞ」
南山は高度をさらに下げた。
VT信管は敵機が一五メートル以内にいると爆破する仕組みだ。
だが海面にも反応してしまうため、低高度を狙って打つと海面に反応して敵機の遙か手前で爆発してしまう。
最近は改良型を投入しているようだが、まだ数は少ないらしい。
そのため海面まで五メートルの位置を飛ぶ南山は安全だった。
一瞬でも操作をミスすると海に突っ込んでしまう位置だが、上昇すれば敵対空砲火の餌食になる。
非常に狭い生存空間を南山は修羅場をくぐり抜けた腕と度胸で正確に飛び続けた。
「二番機、もっと下げろ」
高度が高い二番機に下がるように命じる。
だが怖いのか高度を上げたままだった。そこへ敵の弾が命中し二番機を火だるまにする。
「二番機撃墜されました」
落ちていく二番機を見て後ろのペア二人が呆然とする。
「敵艦に近づくぞ」
南山はそれどころではなかった。
前方に戦艦が見えてきた。
「良い雷撃位置だ」
横腹を見せつけている。今魚雷を放てば確実に命中する。
「だが、戦艦に用はない」
あっさりと言うと少しだけ上昇し戦艦の甲板ギリギリを魚雷を抱いたまま飛び越え通過する。
「輪形陣の中に入る」
先ほどの戦艦の対空砲火が追いかけてくるが無視する。
南山は目を皿にして獲物を探した。
そして見つけた。
「いたぞ、敵空母! エセックス級大型空母だ!」
「全機突入せよ!」
江草からの報告を聞いた攻撃隊指揮官は攻撃を決断し部下に突入を命じた。
「おうっ」
攻撃隊指揮官の命令に南山は、自らの乗る天山を降下させることで応えた。
先発の零戦改のロケット弾攻撃でピケット艦がいなくなりレーダー網に穴が空いた。
この機会を逃せば雷撃の機会はない。
二年前のミッドウェーと第二次ソロモンでは敵のレーダー網が生き残っている状態で突入し攻撃隊は大きな損害を受けた。
その戦訓を元にレーダーピケット艦を撃破するようになってから、損害を抑えることに成功した。
だからこそ南山は生き残れた。
敵を撃破しなければ生き残れないなら、今をおいて機会はない。
だから、突入した。
自ら率いる第二小隊の天山三機を連れて敵空母に向かってゆく。
「全機、高度を下げるぞ」
十数メートルまで下がっていたが、さらに高度を下げる。
「大鳳の攻撃隊がいます」
「馬鹿が、高度を下げないと拙いぞ」
大鳳隊は海面との接触を恐れて高度を上げたままだ。
そのとき、上空にいるF6Fが見えた。
連中は大鳳の攻撃隊を見つけると銃撃を加えていく。
たちまちのうちに大鳳攻撃隊の二機が食われた。
大鳳攻撃隊はバラバラになって逃げ出し、それを見たF6Fは南山達の方へ向きを変えてきた。
「敵機来ます!」
「冷静な連中だ」
四〇〇機の攻撃隊が来るのだ。
迎撃の戦闘機が多くても一五〇機程度の空母任務群では、効率的に迎撃しないと母艦がやられる。
攻撃を諦めてバラバラに逃げる攻撃隊より、編隊を整え母艦に向かう攻撃隊を撃破するほうが母艦は安全だ。
だから南山は敵機に狙われた。
「旋回機銃を鼻先に撃ってやれ!」
後方から接近してくる敵機に向かって電信員が銃撃を加える。
敵機も銃撃を加えてきたが、命中弾はなく、南山の機体を追い抜いていった。
「敵機が、逃げていきます」
「いや、もう一度来る気だ」
海面すれすれの機体を攻撃するのは難しい。
戦闘機は上空から接近して急降下ですれ違いざまに攻撃するのが、一番楽だし落としやすい。
だが、海面すれすれを飛んでいる機体を攻撃すると、攻撃した後海面に突っ込んでしまう。
だから上から銃撃することは少ない。
「敵機、高度を我々と合わせてきます」
「度胸があるな」
そのため同高度に合わせて後方から接近し至近距離から銃撃するのが次善の手だが、欠点の一つに海面すれすれのため一歩間違うと海面に接触してしまう。
しかし敵のパイロットは持ち前の腕で回避していた。
そして南山の後方に接近してきた。
「魚雷を抱いたままじゃおしまいだ」
「諦めるな!」
諦観する部下に南山は怒鳴った。
「諦めたときが死ぬときだ」
銃撃音が鳴り響いた。
「味方戦闘機です!」
上空から味方戦闘機がF6Fを銃撃してくれた。
上空高く、距離があったため命中しなかったが南山とF6Fの間に着弾する。
F6Fは零戦改に銃撃されたことで、身を守るために上空へ逃れていった。
「敵艦隊に突入する」
邪魔者がいなくなったことで南山は敵空母に向かった。
前方に敵艦が見えてくる。
多数の閃光が見え、周囲に爆煙が上がる。
「対空砲火か」
米軍の対空砲火が強力だということは身をもって知っている。
特に最近は砲弾が自ら電波を出し航空機が近くを通り過ぎただけで爆発する、VT信管という新型信管を使っているそうだ。
数は少なく故障も多いがやっかいだ。
だが、回避手段がないわけではない。
「さらに下げるぞ」
南山は高度をさらに下げた。
VT信管は敵機が一五メートル以内にいると爆破する仕組みだ。
だが海面にも反応してしまうため、低高度を狙って打つと海面に反応して敵機の遙か手前で爆発してしまう。
最近は改良型を投入しているようだが、まだ数は少ないらしい。
そのため海面まで五メートルの位置を飛ぶ南山は安全だった。
一瞬でも操作をミスすると海に突っ込んでしまう位置だが、上昇すれば敵対空砲火の餌食になる。
非常に狭い生存空間を南山は修羅場をくぐり抜けた腕と度胸で正確に飛び続けた。
「二番機、もっと下げろ」
高度が高い二番機に下がるように命じる。
だが怖いのか高度を上げたままだった。そこへ敵の弾が命中し二番機を火だるまにする。
「二番機撃墜されました」
落ちていく二番機を見て後ろのペア二人が呆然とする。
「敵艦に近づくぞ」
南山はそれどころではなかった。
前方に戦艦が見えてきた。
「良い雷撃位置だ」
横腹を見せつけている。今魚雷を放てば確実に命中する。
「だが、戦艦に用はない」
あっさりと言うと少しだけ上昇し戦艦の甲板ギリギリを魚雷を抱いたまま飛び越え通過する。
「輪形陣の中に入る」
先ほどの戦艦の対空砲火が追いかけてくるが無視する。
南山は目を皿にして獲物を探した。
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