架空戦記 旭日旗の元に

葉山宗次郎

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連合軍の戦況

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「さて、この結果はどういうことだね」

 陸軍長官、海軍長官、陸軍参謀総長、海軍作戦部長、米軍の軍政、軍令の最高指揮官達を前にして車椅子の男は尋ねた。

「合衆国国民の代表者として、諸君らが率いる合衆国軍が、このような結果になったことを残念に思う」

 彼らの上司、第32代合衆国大統領フランクリン・ルーズベルトに対して下を向いたままだった。

「ヨーロッパおよび太平洋の各戦線で大作戦を展開した。これが出来るのは我が国だけだ。その力を、世界最高の戦力を私は君たちに与えた。なのに何故失敗したのかね」
「マリアナはサイパンへの上陸に成功し、日本軍を撤退させました」
「日本軍の激しい抵抗を受けて完全占領していないのだろう」

 発言した海軍作戦部長兼合衆国艦隊司令長官のキングを陸軍参謀総長のマーシャルが牽制した。
 米軍はサイパン島に上陸したが、日本軍は地下陣地を作り上げており、抵抗していた。
 日本軍が撤退したといっても航空部隊だけで、陸上の守備兵力は生き残っていた。

「グアムやテニアンへの上陸も進んでいない」

 サイパン島上陸後にグアムとテニアンへ上陸する予定だったが、サイパン島の抵抗が激しいため、アメリカ軍は二島へ回せる兵力が無く上陸できずにいた。

「サイパンは日本軍の北部に追い詰めつつあります。数日の内には制圧出来るでしょう。グアム、テニアンへの上陸も間もなく行えます」
「サイパンだけでも死傷者が多い」
「ヨーロッパ戦線より少ない」

 マーシャルの嫌みにキングは反論した。
 トーチ作戦で北アフリカに上陸した米軍はロンメル率いる装甲軍により大打撃を受けてた。
 上陸したもののドイツの降下猟兵がイタリアのフォルゴーレ空挺師団とイタリア海兵隊P大隊と共に大出血で奪ったマルタ島から出撃するドイツ空軍の攻撃。その援護を受けた船団が潤沢にロンメルの装甲軍を支援し、アメリカ軍を酷い目に遭わせた。
 緒戦では一方的な攻撃を受け、アメリカ軍は壊滅し撤退した。
 その報告にルーズベルトは「我々のボーイスカウトは戦争が出来るのか」と不安を述べた程だ。
 幸い、海軍と空軍が反撃し事なきを得て反撃し北アフリカからドイツ軍を追い出した。だが、マルタ島が陥落しドイツ空軍の拠点となったためアフリカ大陸とシチリア島の間の制空制海権を最後まで取れず、ロンメルのアフリカ装甲軍二〇万は大部分がシチリアへの撤退に成功した。
 その後のシチリア上陸作戦でもドイツ軍を逃し、イタリア戦線での苦戦と死傷者の増加を招いていた。

「確かに死傷者は多い。だが、それは総兵力が多いからだ。死傷率では太平洋の方が多い」

 マーシャルは声を荒げて言った。
 防御を固めた島々に上陸する太平洋戦線は艦砲射撃と航空部隊の支援を受けても上陸地点が限られるため、正面からの突撃を強要され、死傷者が多かった。
 しかも、船で輸送される事が多いため上陸船団が攻撃を受けると、損害が大きくなる傾向があった。

「これ以上、陸軍師団は太平洋戦線へ送れないぞ」

 スティムソン陸軍長官が言った。
 既に人員1000万に及ぶ米陸軍を構築し管理している人物だ。
 彼の目からしても太平洋戦線の死傷者数は多かった。
 島々の戦いには海兵隊だけでなく陸軍兵力と航空隊が必要なため、キングは陸軍に協力しなければならない。
 だが、やられっぱなしではダメだ、強く反論した。

「ノルマンディーの海岸から離れることが出来ないからですか?」

 6月6日に始まったオーバーロード作戦――ノルマンディー上陸作戦は揚陸作戦艦艇4000隻、支援砲撃を行う戦艦などの軍艦を含めれば6000隻が投入され、作戦初日だけで15万の兵力が上陸した。
 しかし、ドイツ軍の反撃により内陸部へ進撃できずにいた。
 ノルマンディーの海岸に作った人工港マルベリーの建設に成功し橋頭堡と防衛線を構築したもののノルマンディー特有のボカージュ――生け垣の多い地形と武装SS第一二師団ヒットラーユーゲントの猛烈な反撃により前進できずにいた。
 上陸一ヶ月後でも海岸線から20キロ以上離れる事が出来ず、ヨーロッパ第二捕虜収容所と敵味方の間で呼ばれる状態だった。
 ちなみに第一は山がちで前進が遅々として進まないイタリア戦線である。

「護衛艦艇が少なく、船団の数が少ない。そのため第八航空軍が十分な爆撃が出来ないからだ」

 マーシャル参謀総長は怒りを込めてキングに言った。

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